養育費とは?気になる相場などの離婚の必須知識【総まとめ】

  • 養育費とは何ですか?
  • いつからいつまで請求できますか?
  • 養育費の相場はどれくらいですか?
  • 養育費の決め方がわかりません
  • 再婚したら養育費を受け取ることができませんか?
  • 離婚した後に養育費の金額は変更されますか?
  • 未払いを防止するにはどうすればいいですか?
  • 養育費を請求しないことはできますか?
  • 離婚後でも請求できますか?
  • 養育費に税金がかかるって本当ですか?
  • 胎児の養育費はどうなりますか?

この記事では、このような疑問、悩みにお答えします。

養育費は離婚後の大事な収入源の一つ、という方も多いと思います。月々の額は大きくないにしても、継続して受け取ることができれば、数年後、数十年後は数百万単位の金額となります。

離婚を思い立ったら相手に離婚を切り出す前にお金の準備を始めるべきですが、その際には養育費をいくら受け取ることができるのか、相手にきちんと払ってもらうにはあらかじめどんなことをやっておくべきか知っておく必要があります。

この記事では、離婚するにあたって必要な養育費に関連する知識をすべて盛り込んであります。「関連記事」とあわせてお読みいただくことで、養育費で必要な知識をすべて身につけることができますので、ぜひ何度も繰り返しながらお読みいただければと思います。

目次

養育費とは?

養育費とは親の子どもに対する扶養義務に基づき負担しなければならない費用です。平たくいえば、子育てに必要な費用のことです。

扶養とは、子どもなど経済的、精神的に自力では生活できない人(被扶養者)を援助することをいいます。扶養義務は被扶養者を扶養する義務のことで、養育費を負担することも扶養義務の一つです。

養育費と扶養義務との関係

この扶養義務は「生活保持義務」と「生活扶助義務」にわかれます。

生活保持義務とは、自分の生活レベルと同程度の生活レベルを被扶養者にも維持しなければならない義務のことです。自分がステーキを食べているなら、子どもにもステーキを食べさせなさい、というのが生活保持義務です。

一方、生活扶助義務とは、扶養義務者が社会的地位、収入等に相応した生活をした上で、なお余力がある範囲で援助する義務のことです。ステーキをべきれずに余った分を子どもに食べさせればいい、というのが生活扶助義務です。

生活扶助義務よりも生活保持義務の方が厳しいことがおわかりいただけると思いますが、このうち養育費の扶養義務は生活保持義務と考えられています。のちほどご紹介する養育費算定表はこの生活保持義務の考え方に基づいて作成されています。

離婚と扶養義務との関係

婚姻関係が継続している間は、双方の親は子どもに対して扶養義務を負いますが、離婚した後はどうでしょうか?この点、離婚した後も双方親は子どもに対して扶養義務を負い続けます

そのため、養育費の支払義務を負う人(※)(以下「義務者」といいます。一方、養育費を受け取る権利がある人を「権利者」といいます。)は、離婚した後も養育費の支払義務を負い続けるのです。

離婚したから、子どもと離れて暮らすことになったから、離婚した後新しいパートナーを見つけたから、新しい家庭を築いたからといって、親の子どもに対する扶養義務(養育費の支払義務)がなくなるわけではありません。

※年収の多い少ないにかかわらず、子どもと離れて暮らす親(非監護親)が養育費の支払義務を負います。

養育費の平均相場

養育費の金額を決めるにあたって気になるのが、「他の人が毎月どれくらいの金額を受け取っているのか?」ということではないでしょうか?

この点、厚生労働省が公表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によりますと、平成28年(2016年)の養育費の平均月額は母子世帯が43,707円父子世帯が32,550円という結果でした。子どもの数別にみると、

子供の数母子世帯父子世帯
1人38,207円29,375円
2人48,090円32,222円
3人57,739円42,000円
4人68,000円-

という結果で、子どもが増えたからといって必ずしも倍額を受け取っているわけではないことがわかります。また、あくまで平均の額ですから、平均以下の額しか受け取れない場合もあることに注意が必要です。

養育費の相場の調べ方

養育費の相場を知るには、家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表(以下「養育費算定表」といいます。)」を参考にすることが一般的です。

養育費算定表は、

①養育費・子1人表(子0~14歳)
②養育費・子1人表(子15歳以上)
③養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
④養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)
⑤養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)
⑥養育費・子3人表(第1子、第2子及び第3子0~14歳)
⑦養育費・子3人表(第1子15歳以上、第2子及び第3子0~14歳)
⑧養育費・子3人表(第1子及び第2子15歳以上、第3子0~14歳)
⑨養育費・子3人表(第1子、第2子及び第3子15歳以上)

の9種類があり、それぞれ権利者と義務者の年収、子どもの数、年齢に応じて、月々に受け取ることができる相場(目安)の金額が一目でわかるようになっていますので、まずはあなたの状況に合った養育費算定表を選びましょう。

具体例を使って解説

それでは、ここからは、次のケースを使って、養育費算定表の見方を解説していきます。

夫:会社員、年収715万円
妻:会社員、年収192万円
子:長女15歳、長男10歳


まず、今回のケースでは、「➃養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)」の養育費算定表を使います。

養育費算定表の縦軸が義務者、横軸が権利者の年収です。年収は給与所得者(会社員、パート、アルバイトなど)の年収と自営業者(個人事業主、フリーランスなど)の年収にわかれています。

給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」が年収にあたります。副業などで給与以外の収入がある場合はそれも加算します。一方、自営業者の場合、確定申告書の「課税される金額」に基礎控除や青色申告控除、専従者給与などの実際に支出されていない費用を加算した額が年収にあたります。

養育費算定表を選んだら、次の順で養育費の相場を調べます。

【手順①】
まず、義務者は会社員ですので縦軸の「給与」の箇所を見ます。上にいくと「700」と「725」がありますが、当てはまる数値がない場合は近い数値を選びます。715に近い数値は「725」ですので、義務者の年収は「725」を基準とします。
【手順②】
権利者の方も手順①と同様に見ると「200」が基準となります。
【手順③】
最後に義務者の年収から横に、権利者の年収から縦に線を伸ばします。今回のケースでは「725」から横に伸ばし、「200」から縦に伸ばし、交差した箇所が養育費の相場です。今回のケースでは「10~12万円」が養育費の相場となります。

なお、子どもが2人以上で15歳以上と0~14歳の子供が混在する場合は、

15歳以上の子ども1人の養育費の相場
=子ども全員分の養育費の相場×90÷(55+90)

0~14歳の子ども1人の養育費の相場
=子ども全員分の養育費の相場×55÷(55+90)

の計算式で1人あたりの養育費の額を算出することができます。

今回のケースで、仮に、子ども全員分の養育費を10万円にした場合、長女の養育費の相場は「10×90÷(55+90)」で6万円、長男の養育費の相場は4万円となります。

養育費算定表はあくまで目安

本来、養育費の金額を決めるにあたっては、収入はもちろん、税金、保険料など様々なことを考慮しなければならず計算が複雑です。養育費算定表はこの複雑な計算をしなくても済むよう、誰でも一目で養育費の金額がわかるように便宜的に作られたもので、あくまで子どもの養育にかかる一般的な費用の額を示しているにすぎません。そのため、養育費の金額を決めるにあたっては養育費算定表にとらわれすぎることなく、個々のケースに応じた適切な金額を決めなければなりません。

【年収、子の数別】養育費の相場

ここからは、権利者の年収と子どもの数別の養育費の相場をみていきましょう。なお、子どもの年齢は14歳以下の場合と15歳以上の場合にわけられています。

権利者の年収「0円」、子1人の場合

まず、子どもが14歳以下の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円4~6万円4~6万円
年収500万円6~8万円8~10万円

年収が300万円の場合は義務者が会社員でも自営業でも同じですが、年収が500万円の場合は自営業者の方が高くなることがわかります。

次に、子どもが15歳以上の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円4~6万円6~8万円
年収500万円8~10万円10~12万円

子どもが15歳以上になると、食費や教育費などにお金がかかってきますから、養育費の相場は高額となる傾向です。

権利者の年収「0円」、子2人の場合

まず、子どもが2人とも14歳以下の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円4~6万円6~8万円
年収500万円8~10万円10~12万円

14歳以下の子どもが1人の場合と比べると、義務者が会社員で年収が300万円の場合を除き、2万円ほど相場が高くなっていることがわかります。

次に、子どもが2人とも15歳以上の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円6~8万円8~10万円
年収500万円10~12万円14~16万円

14歳以下の子どもが1人の場合と比べると、2万円~4万円ほど相場が高くなっていることがわかります。

権利者の年収「200万円」、子1人の場合

続いて、権利者(会社員)の年収が200万円で、子どもが1人の場合と2人の場合をみていきましょう。まず、14歳以下の子どもが1人の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円2~4万円2~4万円
年収500万円4~6万円6~8万円

権利者に年収がある分、年収が「0円」の場合と比べて養育費の相場は2万円ほど低くなっています。

次に、子どもが15歳以上の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円2~4万円4~6万円
年収500万円6~8万円7~9万円

子どもが14歳以下の場合と比べて、義務者が会社員で年収300万円の場合を除き、2万円ほど相場が高くなっていることがわかります。

権利者の年収「200万円」、子2人の場合

次に、子どもが2人とも14歳以下の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円2~4万円4~6万円
年収500万円6~8万円8~10万円

14歳以下の子どもが1人の場合と比べると、義務者が会社員で年収が300万円の場合を除き、2万円ほど相場が高くなっていることがわかります。一方、権利者の年収が「0円」の場合と比べると、2万円ほど相場が安くなっていることがわかります。

次に、子どもが2人とも15歳以上の場合の養育費の相場は次のとおりです。

義務者の年収義務者が会社員義務者が自営業
年収300万円2~4万円5~7万円
年収500万円6~8万円10~12万円

15歳以上の子どもが1人の場合と比べると、義務者が会社員の場合を除き、2万円ほど相場が高くなっていることがわかります。一方、権利者の年収が「0円」の場合と比べると、2万円~4万円ほど相場が安くなっていることがわかります。

養育費の決め方

養育費については金額だけに目が行きがちですが、金額以外にも、定額で受け取っていくのか段階的に増額していくのか、いつからいつまで請求するのか、といったことについて考えておく必要があります。子どもが複数いる場合は、子どもごとに考えておきます。

手順としては、まずは話し合いからスタートです。養育費を分割で請求することで話がまとまったら公正証書を作成します。一方、そもそも夫婦で話し合いができない、話し合っても話がまとまらないという場合は調停を申し立てます。

養育費に関するQ&A

最後に、養育費に関するよくある疑問にお答えします。

養育費には何が含まれますか?

養育費には「食費」、「日用品費」、「医療費」、「水道光熱費」、「住居費」、「小遣い」、「娯楽費」、「教育費(塾代、教材費など)」、「交通費」などが含まれます。養育費に含まれないものを請求したい場合は、別途、話し合いが必要です。

養育費は誰が誰に払うのですか?

離婚した後、子どもと離れて暮らす親(非監護者)が子ども暮らす親(監護者)に対して支払います。年収の多い少ないは関係ありません。非監護者よりも監護者の年収が多くても、非監護者は監護者に対して養育費の支払義務を負います。

養育費はいつまで請求できますか?

子どものが「未成熟子」の間は請求できます。未成熟子とは、経済的に自ら独立して自己の生活費を獲得すべき時期の前段階にあって、いまだ社会的に独立人として期待されない年齢にある子をいうとされています。具体的な請求期間は話し合いで決めることができます。

養育費を一括請求することはできますか?

はい、できます。ただし、まとまったお金が必要となるためそもそも相手が合意してくれない、受け取る総額が分割よりも少なくなる、税金がかかる可能性があるなどのデメリットに注意が必要です。

養育費算定表の金額では足らない感じますがなぜですか?

養育費はあくまであなたと相手とが年収等に応じて分担する費用です。算定表の金額にはあなた(監護親)が負担すべき金額が含まれていませんので少なく感じるかもしれませんが、二人の金額をあわせると子どもにかかる費用を賄える金額になるはずです。

再婚したら養育費を払ってもらえませんか?

権利者、義務者が再婚したというだけでは、義務者の養育費の支払義務は免除されません。権利者の再婚相手と子どもとが養子縁組した場合は免除される可能性がありますし、再婚相手にそれなりの収入がある場合は養育費を減額される可能性があります。

養育費を増額できますか?減額されますか?

まず、養育費を変更(増額・減額)することについて、当事者間で合意できれば変更できます。また、合意できなくても、事情の変更があったと認められる場合は調停等により変更される可能性があります。

養育費の未払いへの対策はありますか?

離婚前は、養育費を一括で受け取る、公正証書などの書面を作る、調停で離婚することなどが考えられます。離婚後(未払いになる前)は、連絡を絶やさない、面会交流に応じることなどが考えられます。

養育費に連帯保証人をつけることはできますか?

はい、つけることは可能です。連帯保証人をつけることで、未払いのリスクを抑えることができます。ただし、法律上の効力を生じさせるには法律上の条件をクリアしなければいけません。

養育費と婚姻費用とはどう違いますか?

婚姻費用は婚姻関係が継続中、つまり、離婚前に夫婦で分担すべき費用(生活費)です。収入が少ない方、子どもと別居する方が他方に請求できます。一方、養育費は離婚後に請求することがほとんどです。

養育費を請求しない旨の合意は可能ですか?

法的には有効ですが、養育費は子どものためのものですので、親の都合だけで放棄するのは避けましょう。なお、親であっても子どもの親に対する扶養料の請求権は放棄できないため、子どもから親に対して扶養料を支払うよう請求される可能性はあります。

養育費を請求しない代わりに面会交流を認めないことはできますか?

面会交流も子どものためという側面もありますので、養育費と交換条件とすることは子どもにとって好ましいことではありません。DVや虐待を受けているなど一定の例外を除いて、実施する方向で話を進めましょう。

慰謝料や財産分与に合意するので養育費は免除して欲しいと言われています

慰謝料や財産分与と養育費とは関係ありません。相手が慰謝料や財産分与に合意するからといって、相手の養育費の支払義務が免除されるわけではありませんので、養育費もきちんと請求してください。

離婚した後でも養育費を請求することはできますか?

離婚した後も養育費を請求することは可能です。もっとも、離婚前に養育費を放棄していた場合や過去の養育費を払わせることは難しいのが現状です。請求を思い立った時点ではやめに請求することが大切です。

養育費を受け取ると税金がかかるって本当ですか?

所得税はかかりません。一方、贈与税も原則としてかかりませんが、一定の場合にはかかる可能性がありますので注意が必要です。

妊娠中ですが胎児の養育費は請求できますか?

胎児の養育費は請求できませんが、出産後は、離婚から出産までの期間によって請求できる場合と請求できない場合(請求する場合は認知が必要な場合)があります。

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。