協議離婚と調停離婚 | 8つの違いやそれぞれの手続きを詳しく解説
- 協議離婚とは?調停離婚とは?
- 協議離婚と調停離婚との違いは?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
離婚するためには、相手との話し合いは避けて通れない道です。しかし、話し合いをどのような方法で行うのか、すなわち、相手と直接向き合って行うのか、裁判所を通して行うのか、迷う方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、協議離婚や調停離婚の概要を解説した上で、それぞれの違いやメリット、デメリット、離婚までの手続きの流れについて解説していきたいと思います。
目次
協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦同士で離婚と離婚の条件について話し合って離婚する方法です。
協議離婚では最低限、次の3つの条件がそろっていれば離婚を成立させることができます。
- 離婚の合意
- 離婚条件のうち親権に関する合意
- 離婚届の提出・受理
離婚方法には協議離婚のほかにも、大きくわけて調停離婚、審判離婚、裁判離婚がありますが、このうち協議離婚がもっとも手間と時間をかけずに離婚できる方法です。そのためか、日本の離婚全体の約9割が協議による離婚です。
調停離婚とは
調停離婚とは、裁判所での話し合いを通じて離婚する方法です。
あくまで話し合いを通じて合意点を探っていくという点は協議離婚と同じですが、後述するように、裁判所や法律のルールを守る必要があること、調停委員という専門家が夫婦の間に入って話をまとめてくれる点が協議離婚と大きくことなります。離婚全体の約1割前後が調停や裁判による離婚です。
協議離婚と調停離婚と8つの違い
では、協議離婚と調停離婚とではどこが、どう違うのかみていきましょう。
裁判所や法律のルールを守る必要があるか
まず、協議離婚の場合は手続きの進め方を定めたルールはないのに対して、調停離婚の場合は裁判所や法律(家事審判法など)のルールを守って手続きを進めていく必要があります。
協議離婚の場合は、いつ、どこで、どんな方法で、どのような内容を話し合うかは夫婦の自由です。一方、調停離婚の場合は、裁判所から調停に出席する日時を指定され、話し合いは原則として裁判所で行われますから、裁判所に出頭しなければいけません。
間に第三者が入るか否か
次に、協議離婚の場合は間に第三者が入りませんが、調停離婚の場合は調停委員という専門家が間に入ることです。
協議離婚の場合、弁護士に依頼すれば、弁護士が依頼者の代わりに相手と話し合いをしてくれます。ただ、その場合、弁護士費用がかかります。一方、調停離婚の場合は依頼しなくても夫婦の間に調停委員が入ります。調停申し立ての費用はかかりますが、調停委員に報酬を払う必要はありません。ただ、調停委員は弁護士のように一方の味方になってくれるわけではなく、あくまで公平・中立な立場から話をまとめる役割を担っています。
離婚までのスピード
次に、離婚までのスピードです。
協議離婚では離婚と離婚条件について話し合って合意し、離婚届を提出・受理されれば離婚成立です。話し合いがスムーズにいけば数週間から1か月ほどで離婚を成立させることも可能です。一方、調停離婚の場合、調停の審理期間は「2か月から1年以内」が平均ですが、長いときは1年以上かかることもあり、調停申し立てから離婚成立まで時間がかかってしまう可能性があります。
書面作成の有無
次に、書面の作成と効力です。
協議離婚の場合、離婚協議書、離婚公正証書を作るかどうかは夫婦の自由です。作ってもいいですし、作らなくても離婚はできます。離婚公正証書を作る場合や公正証書の中に後述する「強制執行認諾文言」を含める場合にも相手の同意が必要です。一方、調停離婚の場合、調停が成立したら必ず調停証書という書面が作成されます。
書面の強制力の有無
次に、書面の強制力の有無です。
離婚協議書には強制力はありません。離婚公正証書は、公正証書の中に「強制執行認諾文言」を盛り込むと強制力が付与されます。ただし、公正証書の強制力が及ぶのは、養育費や慰謝料などの金銭に対してだけです。面会交流には強制力は及びません。一方、調停調書には当然に強制力がつきます。また、面会交流に対しても強制力が及ぶことがあります。
時効期間
次に、時効期間です。
協議離婚で各取り決めをした場合の時効期間、調停離婚で各取り決めをした場合の時効期間は次のとおりです。
【協議離婚での時効期間】
・財産分与→離婚成立時から2年
・慰謝料 →離婚成立時から3年
・養育費 →未払時の翌日から5年
【調停離婚での時効期間】
・すべて調停成立日の翌日から10年
離婚届を提出する意味合い
次に、離婚届を提出する意味合いです。
協議離婚の場合、役所への離婚届の提出(受理)は離婚成立の要件です。役所に離婚届を提出し、受理されなければ離婚は成立しません。一方、調停離婚の場合、調停が成立した段階で離婚が成立します。離婚届の提出・受理は離婚の成立要件ではありません。ただし、役所への報告的な意味合いで調停成立日から10日以内に離婚届を提出しなければなりません。
なお、協議離婚の場合、離婚届に夫婦それぞれのサインが必要ですが、調停離婚の場合、提出者のみのサインだけで受理してもらえます。
戸籍の記載方法
次に、戸籍の記載方法です。
協議離婚の場合、単に「【離婚日】令和○年○月○日」とだけ記載されます。一方、調停離婚の場合は、「【離婚の調停成立日】令和○年○月○日」と記載されます。こうした記載を避けたい場合は、調停で「協議離婚し、(夫婦のいずれかが)離婚届を提出する」旨の合意をし、離婚届を提出して形式上は協議離婚(実質上は調停離婚)を成立させる方法をとることが考えられます。
協議離婚、調停離婚のメリット・デメリット
協議離婚の最大のメリットは手間や時間、費用をかけずに離婚できる点です。ただし、これは夫婦で冷静に話し合いができることが前提です。そもそも話し合いができないという場合もあるでしょうし、話し合いができる状態でも何をどう話し合い、どう取り決めたらいいのかわからず、話し合いが不十分のまま離婚してしまう可能性があります。
一方、調停離婚の最大のメリットは調停委員という第三者が夫婦の間に入って話をまとめてくれる点です。顔を合わせないよう配慮もしてくれますので、話し合いがスムーズに進む可能性があります。ただ、裁判所や法律のルールを守って手続きを進めていく必要があります。また、調停離婚が成立するのは、あくまで相手が協力的な場合のみです。調停に出席しなかったり、調停条項に合意しない場合は、調停は成立しません。
協議離婚までの流れ
協議離婚までの流れは次のとおりです。
①離婚準備をする
↓
②相手に離婚を切り出す
↓
③離婚に合意する→離婚調停?
↓
④離婚条件について話し合う→離婚調停?
↓
⑤離婚協議書、離婚公正証書を作成する
↓
⑥離婚届を提出する
まず、離婚を思い立ったら、離婚で後悔しないためにも、相手に離婚を切り出す(②)前にしっかりとした離婚準備を行う(①)ことが大切です。
相手に離婚を切り出した後は離婚に合意できるかどうか確認しあい(③、合意できる場合は親権や養育費、財産分与などの離婚条件について話し合います(④)。
一方、離婚について合意できない、離婚条件について話がまとまらないという場合は離婚調停を申し立てることを検討します。
離婚と離婚条件について合意できたら、離婚協議書か離婚公正証書に合意内容をまとめます(⑤)。養育費などの金銭の合意をした場合は離婚公正証書を作っておくことをおすすめします。
書面を作った後、夫婦のどちらかが離婚届を提出します(⑥)。離婚届が受理されれば離婚が成立します。
調停離婚までの流れ
離婚調停は、夫婦の話し合いを経ずにいきなり申し立てることも可能ですが、話し合いをせずにいきなり申し立てると、相手に対決姿勢を示すこととなり、相手が話し合いに応じないか話し合いにならず、調停離婚すら成立させることができないことも想定されます。
したがって、まずは、夫婦の話し合いを試みて、それでも難しい場合に離婚調停を申し立てることが通常です。申し立てから離婚届提出までの流れは次のとおりです。
①離婚調停を申し立てる
↓
②期日(裁判所に出頭する日時)に出頭する
↓
③調停成立or不成立
↓
④離婚届を提出する
まず、相手の住所地を管轄する家庭裁判所または夫婦で合意した家庭裁判所に離婚調停を申し立てます(①)。離婚調停を申し立てるには申立書のほかに次の書類も必要です。書類によっては写しなど複数準備する必要があります。また、手数料と郵便切手代も必要です(詳細は申立先の家庭裁判所にお尋ねください)。
【離婚調停申立時に必要な書類】
□ 申立書
□ 事情説明書
□ お子さんについての事情説明書
□ 連絡先等の届出書
□ 進行に関する回答書
□ 夫婦の戸籍謄本(申立時より3か月以内に発行されたもの)
□ 年金分割のための情報通知書
【申立時に必要な費用】
□ 手数料(収入印紙代)1200円
□ 郵便切手代
申し立てが受理された場合、期日の調整を経て、初回の期日が指定された書類などが自宅に送られてきます。2回目以降の期日は、調停期日時に調整・指定されます。指定された期日に出頭して手続きを進めます(②)。
通常、数回の調停期日を経て、調停委員から調停条項案が提示されます。ここで、夫婦それぞれが条項案に合意する場合は調停が成立します。一方で、どちらか一方が合意しない場合は調停不成立です(③)。
調停が成立した場合はその日に離婚が成立します。ただし、裁判所から調停調書謄本という書類を取り寄せた上で、調停成立日から10日以内に、役所に離婚届を提出する必要があります。
まとめ
協議離婚は夫婦同士で話し合いをして離婚する方法、調停離婚は調停委員を間に挟んで話し合いの上で離婚する方法です。協議離婚、調停離婚にそれぞれにメリット・デメリットがありますので、よく踏まえた上でどちらの方法で離婚するのか決める必要があります。
投稿者プロフィール

- 離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。
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