【離婚前の別居】メリット・デメリット、やること【総まとめ】
離婚前の別居を検討中ですが、
- 離婚前に別居すべきケースってどんなケースですか?
- 離婚前別居のメリット・デメリットは?
- 別居にむけてやるべきことは何ですか?
- 別居の話し合いの進め方を知りたい
- 別居後にやるべきことは何ですか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
相手との同居が嫌で別居を選択される方も多いと思いますが、別居のメリット、デメリットを把握し、相手に別居を切り出す前にやるべきことをきちんとやっておかないと別居したことに後悔してしまうかもしれません。
そこで、今回は、離婚前に別居すべきケースや離婚前の別居のメリット・デメリット、別居に向けてやるべきことを解説するとともに、別居の話し合いの進め方や別居後にやるべきことについても解説したいと思います。
目次
離婚前に別居を検討すべきケース
離婚前に特に別居を検討すべきケースは次のケースです。
DV、モラハラ、虐待を受けている場合
まず、あなたがDV、モラハラを、子供が虐待を受けている場合は、あなたや子供の生命・身体を守るためにも直ちに別居すべきです。
相手が離婚に合意しない場合
次に、あなたに離婚意思がある一方で、相手が離婚に合意ない場合です。別居期間が長くなればなるほど(目安は5年)離婚しやすくなります。
冷静になりたい
次に、とにかく冷静になりたいという場合です。いったん相手と離れて暮らすことで気持ちを落ち着けることができ、今後についてじっくり考えることができます。
離婚前に別居するメリット・デメリット
離婚前に別居するメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット
- DV、モラハラ、虐待から身を守ることができる
- 離婚意思を相手に明確に伝えることができる
- 別居が法律上の離婚理由になる
- 冷静になれる
- 同居のストレスから解放される
- 離婚後の生活を疑似体験できる
- 離婚か修復か、じっくり考えることができる
- 関係修復につなげることができる
デメリット
- お金がかかる
- 別居するにも労力と時間がかかる
- 婚姻費用等をめぐって争いとなる可能性がある
- 修復が難しくなる可能性がある
- 相手から離婚を切り出される可能性がある
- 証拠を集めることが難しくなる
- 生活のリズムがくずれる
- 子供に悪影響を及ぼす可能性がある
離婚前の別居に向けてやるべきこと
以上の別居のメリット、デメリットを踏まえてもなお、別居の意思が高い場合は別居に向けた準備を始めましょう。なお、準備が整う前に相手に別居を切り出してはいけません。準備を整える前に切り出すと、財産や証拠を隠されたりする可能性があります。
別居後の収入・支出を計算する
まずは、別居後の収入・支出を洗い出し、別居しても経済的に困らないかどうかチェックしてみましょう。家計収支表(←クリック)を作りましたのでよろしければダウンロードしてご活用ください。
支出が収入を上回るようであれば支出を減らすか、就職、転職するなどして収入をあげる努力をしていく必要があります。なお、離婚前でも児童手当の受給者を変更できる場合があります。変更できる場合は忘れずに手続をとっておきましょう。
別居後の住まい、家賃、住宅ローンの支払いを考える
次に、別居後の住まいを考えましょう。あなたや相手の希望、子供のことなどを総合的に踏まえた上で、今の家で生活するのか、出て行くのか判断する必要があります。
今の家を出ていく場合は、仕事や子供のこと、離婚後の収支を細かくチェックして、生活していけるかどうかを確認しておく必要があります。また、引っ越し費用、新生活のための費用(※原則自己負担)がどの程度必要かも把握しておきましょう。
その他、家賃や住宅ローン、税金などの支払いにも注意が必要です。名義や契約関係によっては、今の家で生活する、出て行くにかかわらず、別居後も負担しなければならない場合があります。
貯金する
次に、別居にかかる費用や別居後の当面の生活費を賄えるだけの生活費を貯めておくことです。
前述のとおり、今の家から出ていく場合は引っ越し費用などの多額の初期費用がかかります。別居後は、相手に婚姻費用を請求できる権利はありますが、相手が払ってくれる補償はありませんし、生活費をすべてカバーできるだけの金額を受け取れるわけでもありません。
別居後の生活を不安なく過ごすには、ある程度の貯金があった方が安心です。
就職、転職する
次に、無職の方は就職、今の仕事に満足できない、不安、収入をもっとあげたい方は転職を視野に入れて動きましょう。
別居後の収入・支出の計算のところでも述べたように、「収入<支出」の場合は別居後の生活に困る可能性があります。とはいえ、別居してから就職、転職活動をはじめても、すぐに実現できるとは限りません。子供がいる場合は、子育てしながらの活度は大変です。
就職、転職先によっては資格取得、スキルアップが求められるところもあるでしょう。別居の意思を固めた段階ではやめに動き出すことが大切です。
養育環境について検討する
次に、子供がいる場合は、別居後の子供の養育環境について検討しましょう。
養育環境が急に変わることは子供にとって大きなストレスです。子供が保育園・幼稚園、学校に通っている、子供が地域の生活に馴染めているという場合は特に、今の家で生活するのか出て行くのかというところから検討する必要があります。
今の家を出ていく場合は、別居後の住まいをどこにするかで転園、転校が必要かどうか異なってくるでしょう。転園、転校が必要な場合は、いつできるのか、した方がいいのか、どんな手続きが必要なのか、仕事との両立は可能なのかどうかもはやめに確認しておく必要があります。
子供にもよく説明する
次に、別居の準備がある程度進んできた段階で、子供に別居のことを説明することです。
どこまで詳しく説明するかは子供の年齢、理解度によっても異なりますが、子供が乳児以外の場合は、ある程度の説明は必要でしょう。
ある日、突然、相手と一緒に暮らすことができなくなった、今と異なる場所で生活することになった、という雰囲気は子供ながらに感じているはずです。
子供にとって相手は親であることに変わりありませんから、別居することになってもあなたや相手の子供に対する愛情は変わるわけではないことを伝えることが必要です。
また、別居後は子供が精神的に不安定になりやすいですから、子供の体調や心に変化がないか常に気を配っておくことが必要です。
面会交流について検討する
次に、別居後も子供と一緒に暮らす場合は面会交流のルールを実施するか否か、実施するとしてどのようなルールのもとで実施するのかを検討しておく必要があります。
DVや虐待など、面会交流を拒否できる理由がない場合は、実施する方向で検討を進めます。面会交流の方法には、子供と直接会って交流を図る直接面会と電話やメール交換など、直接会わない方法で交流を図る間接交流があります。負担を感じる場合は間接交流からはじめたり、第三者を間に入れることも検討します。
相手との話し合いで実施の有無や面会交流のルールについて折り合いがつかない場合は調停で話し合うことも可能です。
婚姻費用(生活費)を検討する
次に、別居後の婚姻費用(生活費)をいくら請求するのかです。
夫婦は婚姻生活で生じる費用(婚姻費用)を分担する義務を負っており、別居後も離婚するまではこの義務を負い続けます。婚姻費用は収入が低い方が高い方に請求するのが基本です。請求する期間は同居再開時、あるいは離婚成立時までです。
まずは、家庭裁判所が公表している算定表でいくらぐらい請求できるのか相場観を養い、別居後の収支とも照らし合わせながらご自分の希望額を固めておきましょう。
別居期間を考える
次に、どのくらいの期間別居するのか、別居期間を考えておきましょう。
修復するにせよ、離婚するにせよ、あまりダラダラと別居するのは今後のためにも、夫婦の経済のためにもよくありません。どこかで期限を設け、どちらの道を選択するのかはっきりさせる必要があります。
別居が修復、冷却期間をもうける意味合いが強い場合は短期間にとどめた方がよいでしょう。一方、はじめから離婚しか頭にないという場合はあえて期間を設けないという選択肢もあります。
なお、離婚に必要な別居の期間は通常「3年~5年」、不貞などをした有責配偶者が離婚を希望する場合に必要な期間は「8年~10年」とも言われています。ただ、お互いが合意できるのであれば、これより短い期間で離婚することもできます。
荷物をリストアップする
次に、今の家から出ていく場合は、漏れがないように持っていく荷物をリストアップしておく必要があります。
持ち出せるものは、婚姻前からもっていたもの、婚姻後でも個人的に使っていたもの、つまり、あなたの特有財産と呼べるものです。
【別居時に持ち出してよいもの】
□ 当面の生活費
□ 身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証)
□ 自分名義の通帳、実印、キャッシュカード
□ その他の生活必需品(衣類、衛生品、化粧品、常備薬など)
□ 貴重品
□ 子供のために必要なもの(学用品、制服、おむつなどの育児用品)
□ 思い出の品、記念品
□ 以下で紹介する証拠
なお、離婚の財産分与は別居時点の夫婦の共有財産を対象とします。別居する場合は、離婚するときのことを考えて、写真やコピーをとるなどして、別居時点の共有財産を明らかにしておく必要があります。
※別居時に夫名義の口座から預貯金を引き出した場合は?
別居時に生活費の足しにしようと夫名義の口座から預貯金を引き出す方もおられると思います。夫名義の口座の預貯金も、婚姻後に夫婦の協力で築いたと認められる限り共有財産ですが、妻が引き出した分は婚姻費用ではなく、財産分与において清算されるのが基本です。たとえば、別居時の財産分与対象額が100万円で分与割合が2分の1の場合、夫は50万円、妻も50万円取得します。ただ、妻が別居時に夫名義の口座から20万円の預貯金を引き出していた場合は、夫が20万円の半額を本来の分与額(50万円)にプラスした60万円、妻が40万円を取得し、夫が妻に20万円の支払いを請求できます。妻の引き出しを理由に夫が婚姻費用の支払いを拒否したり、減額を主張することはできません。
証拠を集めておく
次に、証拠を集めておくことです。
証拠は裁判だけでなく、話し合いをスムーズに進めていくためにも必ず必要です。
もっとも、証拠と一言でいっても離婚理由や条件によって集めるべき証拠は異なります。どんな理由で離婚する予定か、離婚の際にどんなことを話し合うのかあらかじめ把握しておきましょう。
別居してから、相手に別居を切り出してからでは証拠を集めることは難しいです。別居する前、相手に別居を切り出す前に証拠を集めておくことが大切です。
別居合意書の原案を作成する
最後に、別居合意書の原案を作成しておきましょう(ただし、作らない方がいいケースもあります)。
別居合意書の作成は任意ですが、後で言った・言わないのトラブルとなることを避けるには、作っておくことをおすすめします。また、別居合意書の作成は、相手との話し合いが終わった後にとりかかるのではなく、話し合いの前にある程度の原案を作っておきます。
作成過程で相手と何を話し合えばよいのか頭を整理することができますし、あらかじめ作っておけば原案をたたき台にして話し合いを進めることができ、話し合いをスムーズに進めることができます。
別居の話し合いの進め方
原案を作成したら、相手に別居を切り出します。
話し合い
まずは、夫婦で話し合います。話し合うべき項目は、原案に記載した項目が基本です。原案の段階では、あなたの希望しか盛り込んでいませんので、相手の意見にもよく耳を傾け、譲歩できる点は譲歩して、適宜修正していくことが話し合いで合意するコツです。別居合意書に強制力をもたせたい場合は公正証書にすることも検討しましょう。
調停
婚姻費用、面会交流について話がまとまらない場合は調停で話し合うことも検討しましょう。調停では調停委員という第三者が間に入ってくれますので、夫婦同士で話し合いを行うよりかは負担・ストレスが減りますし、話がまとまる可能性があります。話がまとまった場合は強制力のある調停調書が作成されます。
参照:婚姻費用の分担請求調停 | 面会交流調停
別居後にやること
ここからは別居した後にやることについて解説していきます。
転出届・転入届、転居届
まず、今の家から出ていく場合は転出・転入、転居届が必要です。
- 転出届:現在の市区町村とは異なる市区町村に引っ越す場合に行う届出
- 転入届:転出後、引っ越し先の役所宛に行う届出
- 転居届:現在の市区町村と同一市区町村内に引っ越す場合に必要な届出
それぞれ引っ越した日から14日以内に行う必要があります。
住民票の異動と閲覧制限
次に、住民票を異動させるかどうかの検討が必要です。
短期間の別居とする場合は異動の必要はありませんが、離婚を前提とした別居などの場合は異動が必要です。相手に異動先の住所を知られたくない場合は、異動先の役所で住民票の閲覧制限の措置をかける手続きをとりましょう。
児童手当の受給者変更
次に、児童手当の受給者を変更することです。
次のいずれかの方法で受給者を変更しましょう。
- 住民票は異動させず、現在の受給者(子供と離れて暮らす親)がサインした「受給事由消滅届」を役所に提出し、新しい受給者(子供と一緒に暮らす親)が別居先の住所の役所で受給の認定請求する
- 住民票を異動させ、離婚手続中であることを明らかにできる書類を役所に提出する
児童扶養手当の受給認定申請
次に、児童扶養手当の受給認定の申請です。
児童扶養手当はひとり親家庭に向けた給付金ですから離婚前は受給できないのが基本ですが、
- 親から1年以上遺棄されている児童(※)
- 親がDVの保護命令を受けている児童
は受給対象となります。
※児童扶養手当は子供が18歳になる年度の3月31日まで受給できます。「遺棄」とは、配偶者が生活費を振り込まない、などが典型です。
婚姻費用の調停を申し立てる
次に、婚姻費用の調停を申し立てることです。
別居前に調停を申し立てなかった場合は別居後でも可能です。基本的には、調停を申し立てた日以降の婚姻費用しか請求できませんので、調停を思い立ったらはやめに申し立てましょう。
面会交流を実施する
次に、別居前に面会交流について合意している場合は、合意内容に従って面会交流を実施することです。
別居前に取り決めることができなかった場合は話し合うか、面会交流調停を申し立てて調停で話し合うことができます。
離婚前の別居の注意点
最後に、離婚前に別居する際の注意点について解説します。
勝手に別居しない
まず、DVを受けているなどの例外的な場合を除き、相手に無断で別居しないことです。
夫婦である以上は同居義務を負っています。相手に無断で別居すると相手の反感を買うばかりか、慰謝料請求される可能性もあります。また、同居義務違反(悪意の遺棄)は法律上の離婚理由でもあります。
子供と離れて暮らさない
次に、離婚を視野に別居する場合は子供と離れて暮らさないことです。
親権者を決めるにあたっては、現在の監護状況やこれまでの監護実績などが重要視されます。子供と離れて暮らすと相手に監護状況を作られ、監護実績を積まれて親権を獲得する上では不利になります。
子供を連れ去らない
最後に、子供を連れ去らないことです。
子供を連れて相手に無断で別居すると相手に連れ去りだと主張される可能性があります。前述のとおり、別居はお互いの合意のもとで行うのが基本です。
また、別居後も注意が必要です。子供を待ち伏せして連れ去るなどの行為は未成年者略取罪などの罪に問われる可能性もあります。離婚後の親権争いの際も不利となる可能性があります。
何より連れ去りは子供にとって悪影響でしかありません。絶対にやめましょう。
まとめ
離婚前の別居にはメリットのほかデメリットもあります。まずは、それぞれを踏まえた上で、はたして別居という選択肢が間違っていないのか検討してみましょう。
別居の意思が固い場合は、相手に別居を切り出す前に別居の準備を進めます。そして、別居後の準備が終わった段階で相手に別居を切り出します。
あらかじめ別居合意書の原案を作っておき話し合いに臨むと話し合いがスムーズです。話し合いができない、話がまとまらない場合は婚姻費用と面会交流については調停で話し合うこともできます。
投稿者プロフィール

- 離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。
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