• どうして離婚の証拠が必要なんですか?
  • どんな証拠を集める必要がありますか?
  • 注意点はありますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

証拠と聞くと「裁判で必要だけど話し合いでは必要ないのでは?」などと思われる方もいるかもしれません。しかし、結論からいうと、証拠は裁判に限らずどんな方法で離婚するにしても必要です。

今回は、なぜあらかじめ離婚の証拠を集めておく必要があるのか解説した上で、具体的にどんな証拠を集めておく必要があるのか、どんな点に注意して集めればいいのか、詳しく解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
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離婚の証拠を集める理由

それでは、さっそく、なぜあらかじめ離婚の証拠を集めておく必要があるのかについて解説します。

話し合いで自分の要求を通すため

まず、離婚の証拠は話し合いで自分の要求を通すために必要だからです。

たとえば、あなたは相手の不貞を理由に離婚慰謝料を請求したいと考えているとします。この場合、あなたが相手の不貞を証明しなければいけませんが、不貞の証拠を集めておかなければ相手の不貞を証明することができません。

不貞の証拠なしに慰謝料を請求することもできなくはありませんが、相手に「不貞などしてない。」、「食事に行っただけだ。」などと反論されると、それ以上相手の不貞を追及できず請求を諦めざるをえないでしょう。

一方で、証拠を集めておけば、証拠が証明する事実(不貞等)を相手に認めさせることができ、相手に反論する隙を与えることなく、話し合いで慰謝料等の離婚条件に関する話をまとめることができます。

話し合いで合意できれば、調停や裁判に比べて手間や時間もかけずに離婚できるというメリットもあります。

調停や裁判で必要となるため

次に、離婚の証拠は調停や裁判で必要だからです。

話し合いで話がまとまらない場合は離婚調停、離婚調停でもまとまらない場合は裁判で決着を図るしかありません。ただ、調停であなたの要求を通すには主に調停委員を、裁判では裁判官をいかに納得させるかが鍵になります。

ところが、調停委員も裁判官もあなたの事情をまったく知らない赤の他人です。その赤の他人に「過去に不貞の被害にあった」という事実をわかってもらうには証拠が必要となります。

もちろん、証拠がなくても不貞の事実を主張することはできますが、残念ながら調停委員や裁判官は、あなたが「嘘をついているのではないか?」という疑いの目で話を聞いています。そうした調停委員や裁判官を納得させるには過去の客観的な事実を証明する証拠を用いるしかありません。

証拠を集めておけば、「仮に調停や裁判まで進んでも勝てる」という自信を持って話し合いに臨むことができます。話し合いでは相手に「このまま調停(裁判)に進んでも負けるよ」といってプレッシャーをかけることができ、精神的にも優位に話し合いを進めることができます。

離婚の証拠一覧

それでは、ここからは、あらかじめ集めておくべき離婚の証拠を一挙にご紹介していきます。離婚の証拠には「裁判上の離婚理由」に関する証拠と「離婚条件」に関する証拠があります。はじめに「裁判上の離婚理由」に関する証拠からご紹介していきます。

【裁判上の離婚理由】に関する証拠

主な裁判上の離婚理由は次のとおりです。

  • 不貞
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 性格の不一致
  • DV、モラハラなど

裁判で離婚するには、離婚を請求する側が裁判で裁判上の離婚理由があることを証拠によって証明する必要があります。また、裁判上の離婚理由は同時に離婚慰謝料の請求事由になることがありますので、あらかじめ集めておくべきといえます。

不貞(不倫・浮気)

□ 写真・動画
□ 誓約書、示談書
□ 自白
□ 自白が録音された音声データ
□ 探偵の調査報告書
□ ドラレコの音声
□ メール・LINE
□ スケジュール帳、日記
□ GPSの位置情報
□ カーナビの履歴
□ SNS     
など

悪意の遺棄

・同居義務違反に関する証拠 
□ 別居したことがわかる住民票
□ 別居の経緯を記した日記、メモ
 など

・協力義務違反に関する証拠
□ 家事放棄、育児放棄がわかる写真、動画 など

・扶助義務違反に関する証拠
□ 源泉徴収票
□ 給与明細書
□ 預金通帳
□ クレカの利用明細

□ 消費者金融からの請求書
□ ぜいたく品の写真
□ 生活費が入っていない通帳のコピー
 など

3年以上の生死不明

□ 相手と最後に交わしたメール、手紙、通話履歴
□ 親族、知人の陳述書
□ 警察が発行する捜索願受理証明書
 など

性格の不一致

□ ケンカした際の録音データ
□ ケンカした直後のメモ・日記
□ 相手とやり取りしたメール、手紙
□ 第三者の証言
□ DVなどその他の離婚理由に関する証拠
 など

DV、モラハラ

□ 診断書
□ 被害の様子等を記録した写真、動画
□ 警察等の相談先に相談した際の対応記録
□ 目撃者(子どもなど)の証言
 など

借金

□ 借金して購入したと思われるし好品、ぜいたく品の写真
□ 消費者金融からの請求書の写し

□ クレジットカード明細書の写し など

【離婚条件】に関する証拠

続いて「離婚条件」に関する証拠です。離婚の話し合いにおいて、次の離婚条件について話し合うことを予定している場合は、離婚条件ごとの証拠も集めておく必要があります。

  • 親権
  • 養育費
  • 財産分与
  • 婚姻費用
  • 年金分割

親権

□ 母子手帳
□ 保育園・幼稚園、習い事の連絡帳

□ 通知表
□ 子どもとの触れ合いがわかる写真、動画
□ 日記、メモ

□ 家の間取り図
□ 収入がわかる書類(給与明細書、源泉徴収票)
 など

養育費

源泉徴収票
引用元:国税庁

・年収を証明するための証拠
(会社員の場合)
□ 源泉徴収票
※源泉徴収票がない場合は次のいずれか
□ 給与が振り込まれる通帳のコピー
□ 給与明細書 
□ 課税証明書
 
(自営業者の場合)
□ 確定申告書

※確定申告書がない場合は・・・
□ 課税証明書 

源泉徴収票は年末調整が行われた後(12月中)に会社が発行します。すでに発行されている場合は相手がもっている可能性があります。相手がなくしてしまった場合は、相手が会社の担当者に申請することで再発行してくれます。

相手の年収がわからない、相手が源泉徴収票などの資料を見せてくれないなどの事情から、養育費の金額を決めることができないときは調停を申し立てて、裁判所を通して源泉徴収票などの資料の開示を求めていくことを検討します。

財産分与

・預金に関する証拠
□ 通帳のコピー
※通帳のコピーがない場合は次のいずれか
□ 所得証明書
□ 残高証明書
 

・各種保険に関する証拠
□ 保険証券
□ 解約返戻金証明書
 など

・不動産に関する証拠
□ 売買契約書
□ 登記事項証明書(不動産登記簿)
□ 固定資産税の納税通知書
□ 固定資産評価証明書
□ 金銭消費貸借契約書
□ 住宅ローンの償還予定表
 など

婚姻費用

・過去に婚姻費用を請求したことを証明する証拠
□ 別居時に取り交わした合意書
□ 調停、審判調書
  など

年金分割

□ 基礎年金番号がわかるもの(年金証書、基礎年金番号通知書
□ 年金情報通知書 

離婚の証拠は自分で集める?

ここまでご紹介してきた証拠は、ご自分で集める必要があります。というよりも、離婚の証拠は、相手と同居している、相手の側にいるあなたでしか集めることができない、といっても過言ではありません。

まずは、離婚理由は何なのか、どんな離婚条件について相手と話し合う必要があるのか明確にした上で、それぞれに応じた証拠を集めていきましょう。なお、不貞(不倫・浮気)に関する証拠集めは、探偵に依頼することもできます。

離婚の証拠を集める際の注意点

離婚の証拠を集める際の注意点は次のとおりです。

  • バレない、感づかれない
  • 必要な場合はコピーをとる
  • 集めきるまで別居しない
  • 集めきるまで離婚を切り出さない

バレない、感づかれない

まず、離婚の証拠を集めていることにバレない、感づかれないことです。

相手に離婚の証拠を集めていることがバレたり、薄々気づかれたりすると、相手に証拠隠滅され、証拠を集めることが難しくなってしまいます。また、集める証拠によっては刑事罰の対象となったり、相手のプライバシーを侵害し、損害賠償を請求される可能性もあります。

証拠の集め方はもちろん、普段の相手に対する言動、離婚の証拠を集めるタイミング、離婚の証拠を扱った後の証拠の置き場所、向き・位置、証拠の保管方法などについて細心の注意を払う必要があります。

必要な場合はコピーをとる

次に、相手名義の預金通帳など、自分で持ち続けることが難しい証拠はコピーを取っておきましょう。直ちにコピーすることが難しい場合は、スマホで該当箇所を写メしておきましょう。

コピーを取る際は、誰の、何の証拠がわかるようにコピーを取ることが必要です。証拠の全部をコピーすることが難しい場合は、最低限、必要な箇所のみをコピーしておきましょう。たとえば、相手名義の預金通帳であれば、別居または離婚時の直近の箇所をコピーしておけば大丈夫です。

集めきるまで別居しない

次に、離婚の証拠を集めきるまでは別居しないことです(ただし、DVや虐待を受けており、生命、身体に重大な危害が及ぶおそれが大きい場合は除きます)。

離婚の証拠の中には、相手名義の預金通帳やスマホの中の写真や動画など、相手と同居しているからこそ集めることができる証拠があります。別居してしまうとこうした証拠を集めることができませんので、離婚の証拠を集めきるまで別居しない、集めきってから別居することが大切です。

集めきるまで離婚を切り出さない

最後に、同居している場合は、離婚の証拠を集めきるまで離婚を切り出さないことです。

離婚の証拠を集めきる前に離婚を切り出すと、先ほど述べたとおり、離婚の証拠を隠滅されてしまうおそれがあります。また、離婚の証拠のみならず、預金などの財産を使い込まれたり、隠されたりする可能性があります。

相手に離婚を切り出すのは、離婚の証拠集めるなどの離婚の準備を整えてからにしましょう(ただし、ただし、DVや虐待を受けており、生命、身体に重大な危害が及ぶおそれが大きい場合は除きます)。

まとめ

今回のまとめです。

  • どんな方法で離婚するにせよ離婚の証拠は必要
  • 相手に別居や離婚を切り出す前に集めましょう
  • 証拠を集める際はバレないよう細心の注意を!
  • 不貞の証拠集めは探偵に依頼することもできます