協議離婚とは?進め方、成立要件、成立までの流れを丁寧に解説します
- 協議離婚って何ですか?
- どんな場合に成立しますか?
- 調停離婚との違いは何ですか?
- メリット、デメリットは何ですか?
- どのように進めたらいいですか?
この記事では、こんな疑問、悩みにお応えします。
離婚を思い立ったとき、多くの方がまずは協議による離婚を選択されることと思います。しかし、協議離婚とは何で、どのように進めていったらいいのかわからにという方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、協議離婚とは何か、離婚までどのように進めていったらいいのかなど、協議離婚にまつわる疑問、悩みについて、離婚行政書士が直接解説いたします。
目次
協議離婚とは
協議離婚とは、裁判所を介さずに、夫婦の話し合いだけで離婚を成立させる離婚方法の一つです。
離婚の方法には協議離婚のほかに
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判(和解、認諾、判決)離婚
がありますが、唯一協議離婚だけが裁判所を利用しない離婚方法です。
夫婦だけで手続きを進めることができるためか、日本の離婚全体の約9割が協議離婚による離婚です。
協議離婚の成立要件
協議離婚を成立させるには、次の要件を満たしていることが必要です。
①役所に離婚届を提出する時点で夫婦それぞれに離婚意思があること
②親権者について合意していること
③役所に離婚届を提出し受理されること
以下、詳しく解説します。
①役所に離婚届を提出する時点で夫婦それぞれに離婚意思があること
まず、「役所に離婚届を提出する時点」で離婚意思がなければいけません。つまり、過去に、離婚に合意していたとしても、役所に離婚届を提出する時点で離婚意思を欠く場合は、協議離婚は無効です。
次に、「夫婦それぞれに離婚意思があること」が必要です。一方の離婚意思を欠く場合は、協議離婚は無効です。また、詐欺や強迫による協議離婚は取り消すことができます。
②親権者について合意していること
次に、子供がいる場合は、役所に離婚届を提出する前に子供の親権者を決めておかなければ離婚届は受理されず、協議離婚は成立しません。
なお、養育費や面会交流など、その他の離婚条件については離婚後でも取り決めることはできますが、できる限り、離婚前に取り決めておいた方が安心です。
③役所に離婚届を提出し受理されること
次に、協議離婚を成立させるには、役所に離婚届を提出し受理されることが必要です。協議離婚独自の要件で、他の離婚方法では役所への離婚届は離婚の成立要件ではありません。
また、単に提出しただけでは足りず、内容に不備がないかのチェックを経た上で受理されることが必要です。不備を訂正しなければ協議離婚は成立しません。
協議離婚と調停離婚との共通点・違い
協議離婚できない場合は次のステップとして調停離婚を目指すことになります。基本的に、調停の手続きを飛ばして、いきなり審判や裁判の手続きに進むことはできません。
調停でも話し合いで離婚の合意や離婚条件の取り決めをするという点では協議離婚と共通していますが、調停には
- 裁判所や法律のルールを守る必要がある
- 調停委員が夫婦の間に入って話をまとめてくれる
- 調停申し立てから成立まで一定期間が必要
- 強制力のある書面が必ず作成される
- 調停成立と同時に離婚が成立する(離婚届の提出は離婚の成立要件ではない)
など、協議離婚とは異なる特徴があります。
協議離婚のメリット
協議離婚には次のメリットがあります。
- 手間がかからない
- 費用がかからない
- 話し合いから離婚まで短期間で済ませることができる
- 離婚理由を問われない
- 離婚条件を自由に決めることができる
手間がかからない
まず、手間と時間がかからないことです。
協議離婚は、夫婦がお互いに離婚することに合意し、子供がいる場合は親権者を取り決め、役所に離婚届を提出し受理されることで成立させることができます。
親権でもめない場合、親権以外に取り決めることがない場合は、夫婦それぞれが離婚届にサインさえすれば離婚を成立させることができます。
話し合いはいつでも、どこでも、どんな方法でも行うことができます。調停や裁判のように場所や日時が制限されるわけではありません。
協議離婚するにあたって離婚協議書または離婚公正証書を作っておくことをおすすめしますが、必ず作らなければならないわけではありません。作らない場合は作る手間を省けます。
費用がかからない
次に、費用がかからないことです。
調停、裁判を起こす際は、手数料や郵便切手代など必ずかかる費用があります。一人で手続きを進めることが難しく、弁護士に依頼した場合は弁護士費用を負担する必要もあります。
一方で、協議離婚で必ずかかる費用はありません。自分たちで話し合いができ、離婚協議書を作る場合も自分たちで作ることができるのであれば、費用はかかりません。
もっとも、離婚公正証書を作る場合は費用がかかります。作成の代理を行政書士などに依頼する場合は、行政書士への費用もかかります。自分たちで話し合いができず、弁護士に依頼する場合は弁護士費用を負担する必要があります。
話し合いから離婚まで短期間で済む
次に、話し合いから離婚まで短期間で済む可能性があることです。
前述のとおり、協議離婚の場合、話し合いの時間や場所、方法は自由ですし、親権をはじめ、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料などの離婚条件について、夫婦できちんと向き合って話し合い合意できるのであれば、さほど時間をかけずに離婚することができます。
ただし、相手に話し合いを切り出す前の離婚準備にはしっかりと時間をかけるべきです。準備不足のまま話し合いを切り出すとかえって手間と時間がかかり、なかなか離婚までたどり着けなかったり、話し合い不十分のまま離婚してしまう可能性があります。
離婚理由を問われない
次に、離婚理由を問われないことです。
離婚裁判を起こすには、法律で定められた離婚理由が存在することを指摘し、裁判では証拠によって証明する必要があります。また、調停では法律上の離婚理由は必要ないことになっていますが、離婚に合意できない場合は離婚理由について聴かれます。仮に、身勝手な離婚理由だと不利な条件で離婚しなければならない場合もあります。
一方、協議離婚ではこれといった離婚理由は問われません。「これといった理由はないけど離婚したい」、「相手との生活が嫌になった」など、どんな理由であれ、お互いが離婚に合意できれば離婚できます。
離婚条件を自由に決めることができる
最後に、夫婦で合意できれば離婚条件を自由に決めることができることです。
たとえば、養育費の金額を設定するにあたって、調停、裁判では養育費算定表で示された金額に落ち着くことが多いと言われています。慰謝料についても相場と言われている「50万円~300万円」の範囲内でおさまることが多いでしょう。
一方、協議離婚の場合は、算定表や相場は金額を決めるにあたって目安にはするものの、夫婦で合意できる以上は、算定表や相場の金額にとらわれる必要はなく、自由に設定することができます。
協議離婚のデメリット
一方、協議離婚には次のデメリットがあります。
- 相手と話し合わなければならない
- 話し合い不十分のまま離婚してしまう
- 相手が合意しなければ離婚できない
相手と話し合わなければならない
まず、相手と話し合わなければならないことです。
これから離婚という場合、夫婦関係が悪化していることがほとんどだと思います。そうした中での話し合いは精神的に大きな負担を伴いますし、冷静に話し合うことができず話がまとまらない可能性もあります。また、相手によってはそもそも話し合いに応じてくれない可能性もあります。
話し合い不十分のまま離婚してしまう
次に、話し合い不十分のまま離婚してしまう可能性があることです。
夫婦で話し合うといっても何について話し合い、何をどう決めなければならないのかわからない、という方も多いでしょう。知識が曖昧なまま話し合いをしても、内容十分な話し合いを行ったとは言い難く、離婚後にトラブルとなるケースも散見されます。
相手が合意しなければ離婚できない
最後に、相手が離婚に合意しなければ離婚できないことです。
協議離婚では、離婚届提出時にお互いに離婚に合意できていることが離婚の成立要件の一つです。一方の離婚意思が欠く場合はもちろん、かつて離婚に合意した場合でも離婚届提出時に離婚意思を欠く場合は、離婚は無効です。
なお、相手が離婚に合意しないからといって、離婚届の相手の署名欄に勝手にサインして役所に提出すると罪に問われる可能性がありますので絶対にやめましょう。
協議離婚のデメリットを回避するには?
このように協議離婚にはいくつかのデメリットがありますが、このデメリットを軽減するためにいくつかとれる対策もあります。
離婚準備を入念に行う
まず、相手に離婚を切り出す前に離婚準備を入念に行うことです。
法律上は離婚前に親権だけを取り決めればよいことになっていますが、親権以外にも取り決めるべきことがある場合は離婚前に話し合い合意しておくことが望ましいです。
もっとも、取り決めるべきことは多岐にわたり、すぐに決断できるような簡単な内容のものではありません。まずは、離婚を思い立った段階で離婚準備を進め、あなた自身の主張、意見を固めておくことが話し合いをスムーズにすすめるための第一歩となります。
切り出し方、タイミング、場所を工夫する
次に、話し合いの切り出し方、タイミングを工夫することです。
離婚協議を目指すなら、相手がきちんと話し合いに向き合ってくれなければいけません。相手が不快の念を示したり、反抗したくなりそうな切り出し方、タイミングは避けましょう。話し合いの場所はカフェなどの第三者の目が届くような場所にすると、話し合いを冷静にすすめることができるかもしれません。
第三者を間に入れる
次に、第三者を間に入れることです。
第三者を間に入れることで精神的な負担が緩和され、話し合いに向けて前向きな気持ちになることは間違いないでしょう。
ただし、誰を間に入れるかは慎重に検討した方がいいでしょう。不適切な人を間に入れるとかえって話がこじれ、協議離婚することが難しくなってしまう可能性があります。一番の適任は弁護士ですが高額な費用がかかることがネックです。
譲歩できるところは譲歩する
次に、譲歩できるところは譲歩することです。
たとえば、当初の養育費の金額を相場より高めに設定する代わりに、学資金・入学一時金等の特別な出費は請求しない、面会交流を認めるが直接の面会は認めず、当分の間、間接交流のみ認める、などです。
話し合いではお互いに譲れない部分も出てくるかと思いますし、譲るべきでない点は譲るべきではありませんが、あまりに固執しすぎると協議離婚を成立させることが難しくなってしまいます。
相手と主張が対立する場合は、どこか譲れる部分がないか探し、あればそれを相手に提案し妥協点を探っていくことも場合によっては必要となってきます。
協議離婚までの流れ
それでは、ここからは、離婚を思い立った時点から協議離婚を成立させるまでの流れを一挙に解説していきたいと思います。
①離婚準備を進める【6カ月~1年?】
↓
②相手に離婚を切り出す
↓
③話し合いをする 【数か月~1年?】→別居or調停?
↓
④書面を作成する
↓
⑤役所に離婚届を提出する
①離婚準備を進める
まず、離婚を思い立ったら離婚準備を進めましょう。
協議離婚するといっても、ただ単に離婚に合意し、離婚届にサインして役所に提出すればいいわけではありません。
相手が離婚に合意しない可能性もありますから、なぜ離婚したいと思っているのか、あらかじめあなた自身の意見を固めておく必要があります。
また、離婚した後安心した生活を送るためには、お金や子供の生活、離婚後の生活のことなどについて、離婚する前から準備を進めておく必要があります。
離婚後は新しい生活に慣れることが精一杯で、様々なことに気を回す余裕などありません。ある程度余裕のある離婚前に準備しておくことをおすすめします(ただし、DVを受けているなど、直ちに避難する必要がある場合は、身の安全を確保することが最優先です)。
離婚準備の期間は人によりますが、多くの方がある程度の期間を必要とするはずです。まずは、離婚準備で必要なことをリストアップし、離婚準備が終わるまでにどれくらいの期間が必要か計算してみましょう。
②相手に離婚を切り出す
離婚準備が終盤に差しかかってきたら、相手に離婚を切り出すタイミングなどを考える必要があります。
この段階までくるとゴール(離婚成立日)が薄っすらと見えてきますので、まずはいつ離婚したいのかゴールを設定しましょう。
ただし、離婚を切り出したとしてもすぐに離婚できるわけではありません。話し合い(③)や書面作成(④)が思い通りに進まず予想外に時間がかかってしまうことも想定されます。
③や④にかかる期間は相手対応しだいというところは否めず、あなたがコントロールすることができませんので、期間に余裕をもって切り出した方がよいでしょう。
離婚を切り出すタイミングのほかにも、切り出し方、切り出す場所、話し合いの間に入ってもらう人など、様々検討しなければならないことがありますので注意が必要です。
③話し合いをする
相手に離婚を切り出した後は話し合いをします。
まずは、離婚したいこと、離婚意思が固いことを相手にはっきりと伝えましょう。相手が離婚合意しない限り先に進めませんが、すぐに返答がない場合は結論を急がず、しばらく様子をみましょう。相手が離婚に合意しないか、なかなか返事をくれない場合は別居か調停を申し立てることを検討しましょう。
一方、離婚に合意する場合は離婚条件について話し合います。前述のとおり、協議離婚は親権についてだけ合意すれば離婚できますが、できる限り親権以外の離婚条件についても話し合って取り決めていた方が安心です。
離婚条件での話し合いではお互いの利害が衝突することは避けられませんが、なるべく多くの選択肢をもち、お互いに譲歩し合いながら合意点を見つけ出していくことが話し合いをスムーズに進めるためのコツです。
どうしても折り合いがつかない場合は別居や調停を申し立てることを検討しましょう。
④書面を作成する
話し合いで離婚と離婚条件について合意できたら合意内容を書面にまとめます。
協議離婚するにあたって必ず書面を作らなければならないわけではありませんが、作っておけば離婚後に言った・言わないのトラブルに発展することを防ぐことができるでしょう。
合意内容をまとめる書面は、基本的には
- 離婚協議書(合意書)
- 離婚公正証書
のいずれかです。
離婚公正証書は、相手が公正証書の条項に強制執行認諾文言(※)を盛り込むことに合意すれば、強制力が付与されます。したがって、養育費などの金銭を分割で払っていく旨の合意をした場合は離婚公正証書を作っておいた方がよいでしょう。
※「もし、養育費などの金銭の支払を怠ったときは、自分の給与などの財産に対して差押えの手続きをとられてもかまわない」という強制執行を承諾する旨の文言。相手が合意することで、裁判の手続きを経なくても強制執行の手続きをとることが可能になります。
⑤役所に離婚届を提出する
書面を作った後は、役所に離婚届を提出します。
離婚届の提出者は夫婦のどちらでもかまいませんが、離婚によって効力が発生する合意をしている場合は、それによって利益を受ける方が提出した方がよいでしょう(離婚公正証書を作る場合は、離婚届の提出者についても条項に盛り込みます)。
離婚届には証人2名のサインが必要ですが、証人は夫婦以外の18歳以上の成年であれば誰でもなることができます。夫婦それぞれから一人ずつ出す必要はなく、夫婦の一方が二人の証人にサインをお願いしても問題はありません。
離婚協議に応じない、進まない場合の対処法
相手が離婚協議に応じない、離婚協議が思い通りに進まないのには何かしらの原因があります。原因ごとに対応が異なりますから、まずは原因が何なのか考えてみる必要があります。
どう対応しても埒が明かない場合(明きそうにない場合)は
- 別居する
- 離婚調停を申し立てる
- 弁護士に交渉を依頼する
ことなどで対応する必要があります。
協議離婚で困った場合に頼れる専門家
協議離婚は夫婦だけで進めることが可能ですが、困ったときは専門家に相談、依頼してみるのも一つの方法です。
弁護士
まず、多くの方が離婚の専門家として思い浮かぶのが弁護士ではないでしょうか?
弁護士には、負担が大きい相手との話し合いから書面の作成まで、すべてを任せることができます。また、法律のプロ中のプロであるため、難しい法律問題に直面している場合は、弁護士に依頼すべきでしょう。
もっとも、最大のネックは多額の費用がかかることです。法テラスの制度を利用することができれば少しは負担軽減につながりますが、所得制限等があり、誰でも利用できるわけではありません。
弁護士に依頼する前に、多額の費用を負担してまで得られるリターンがあるかどうかはしっかり検討しておく必要がありそうです。
行政書士
次に、行政書士に相談、依頼することも考えられます。
法律上、行政書士は弁護士のように依頼者の代わりに相手と話し合うことはできませんが、依頼者の代わりに離婚協議書を作ったり、依頼者の代わりに離婚公正証書の作成手続きをとることは可能です。
相手との話し合いはご自分で行っていただく必要があるため、行政書士に依頼できるのはあくまで相手との話し合いができることが前提となります。
一方で、話し合いができるのであれば行政書士に相談、依頼することを検討してみてもよいでしょう。行政書士からアドバイスを受けながら離婚協議書等の書面を作っていくことができます。
まとめ
協議離婚は、裁判所を介さずに、夫婦の話し合いで離婚する離婚方法の一つです。他の離婚方法との違いは、裁判所を介さずに離婚できるという点です。そのためか、日本の離婚全体の約9割がこの協議離婚による離婚です。
ただ、協議離婚が多数派だからといって、あなたも協議離婚を選択した方がいいというわけではありません。人それぞれによって事情が異なりますし、協議離婚にもデメリットがあります。
離婚で後悔しないためにも、協議離婚のメリット・デメリットをよく把握し、もし協議離婚を選択する場合は、協議離婚のデメリットによる影響を受けないようしっかり対策をとる必要があります。
投稿者プロフィール

- 離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。
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