離婚後に養育費を請求できる?過去の分は払ってもらえる?

  • 離婚後に養育費を請求することはできますか?
  • 離婚前に養育費を放棄していた場合は請求できますか?
  • 過去の養育費を払ってもらうことはできますか?
  • 養育費は時効にかかりますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

子どもがいて離婚する場合は、できる限り、離婚前に養育費などの離婚条件について取り決めておくことが理想です。

しかし、あえて離婚を先行させ、離婚後に養育費について話し合うことにした方、あるいは養育費は請求しないことにしていたものの、離婚後に請求する必要が出てきた方など、様々な事情を抱えている方も多いと思います。

そこで、今回は、離婚後に養育費を請求できるのか、離婚前に養育費を放棄していたときでも請求できるのか、過去の養育費は請求できるのか、といったことについて解説していきたいと思います。

離婚後も養育費の請求は可能?

結論から申し上げると、離婚後も養育費を請求することは可能です。養育費は親の子どもに対する扶養義務を根拠に親が負担しなければならない費用で、この扶養義務は離婚した後も免除されるわけではないからです。

離婚前に養育費に関する具体的な取り決めをしていない場合は、子どもが一人の大人として自立して生活してけるまでの間は、離婚から何年経過していようが養育費を請求することができます。

離婚前に養育費を放棄していたら?

では、離婚前に「養育費はいらない」といって請求を放棄していたものの、離婚後に養育費を請求することはできるのでしょうか?

この点、まず、相手が養育費を払うことに合意するのであれば払ってもらうことは可能です。一方、相手が合意しない場合はまずは調停を申し立てて調停で話し合うことになりますが、調停では、養育費を請求しない合意をしたときの状況と離婚後の状況とを照らし合わせて夫婦双方が予測できなかった「事情の変化」があったと認められれば請求が認められる可能性があります。

たとえば、

  • 養育費を請求しない合意をしていたところ、離婚のとき無職だった父親がその後就職した(大阪家庭裁判所審判平成元年9月21日)
  • 離婚のときは自分の収入だけでできると思い養育費を請求していなかったところ、離婚後に会社の倒産によって失業した

といったケースです。

なお、親が子どもの養育費に含まれる子どもの扶養料を放棄することはできませんから、離婚前に養育費を放棄していたとしても、子どもの扶養料分のお金は相手に請求することができます。

離婚後に養育費を請求する手順

離婚後に養育費を請求する手順は離婚前と同じです。

①請求内容を考える
→請求内容:金額、請求期間、毎月の支払期限、支払方法 など

②話し合い

③公正証書の作成

➃調停の申立て 

過去の養育費を払わせることはできる?

離婚後に養育費を請求する場合、たとえば次のように、将来ではなく過去の養育費を払ってもらえないか疑問に思われる方もいます。

【令和4年2月1日】・・離婚(養育費請求なし)

【令和5年2月1日】・・養育費請求

Q 令和4年2月1日~令和5年2月1日までの1年分の養育費は請求できる?

離婚時に養育費の取り決めあり

まず、離婚のときに離婚協議書や公正証書、調停調書などに養育費の取り決めを盛り込んでいる場合は過去の養育費を請求することは可能です。

離婚時に養育費の取り決めなし

離婚のときに取り決めをしていなかった場合は、相手が過去の養育費を払うことに合意すれば払ってもらうことは可能です。金額などについて話し合い、公正証書を作っておきましょう。

一方、相手が合意しない場合は調停を申し立てて調停で話し合っていくことになりますが、裁判所は相手に過去の養育費を払わせることには消極的です。

「養育費を受け取らなくても生活できてきたという事実があること」、「請求期間によっては、莫大な金額となり、相手にとって過大な負担になりうること」などが理由です。

相手の合意が得られない場合は、請求した時点以降の養育費の支払いしか認められない可能性が高いため、養育費が必要と感じたときははやめに調停を申し立てることが大切です。

離婚後の養育費と時効

「養育費の時効は5年」などと見たり聞いたりしたことがある方もおられるかもしれませんが、養育費に時効が関係するのはあくまで、離婚のときに養育費の取り決めをしていた場合です。

離婚のときに養育費の取り決めをしていなかった場合は養育費は時効にはかかりませんので、冒頭で述べたように、子どもが一人前の大人になるまでは養育費を請求することができます。

もっとも、先ほど述べたとおり、過去の養育費は相手が支払いに合意しない限り払わせることが難しいですので、養育費が必要と感じた時点ではやめに調停を申し立てることが大切です。

まとめ

今回のまとめです。

  • 離婚後でも養育費を請求することはできる
  • まずは話し合い、話し合いが難しいときは調停で請求する
  • 相手が合意すれば過去の養育費を払ってもらえるが、調停で払わせることは難しい
  • 離婚前に養育費の取り決めをしていなかった場合は時効は気にしなくていい

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。