養育費の未払い | 払わない場合に備えての離婚前後の対策を解説

  • 養育費が未払いにならないか心配です
  • 未払いを防ぐために心がけておくことはありますか?
  • 未払いとなった場合はどうしたらいいですか?


この記事ではこのような疑問、お悩みにお応えします。

少し古いデータになりますが、厚生労働省が公表している「平成28年全国ひとり親世帯等調査 | 母子世帯の母の養育費の受給状況(表17-(3)-1)」によりますと、現在も養育費を受けていると回答した母子世帯は平成23年で全体の19.7%、平成28年で全体の24.3%と低い水準にとどまっていることがわかります。

年度現在も養育費を受けている養育費を受けたことがある養育費を受けたことがない
平成23年19.7%15.8%60.7%
平成28年24.3%15.5%56%

しかし、「養育費を受けたことがない」、「養育費を受けたことがある(けど今は受けていない)」となってしまった原因は明らかではありません。もしかしたら、事前の対策をとっておけばこの2つの回答の%は低くなる一方で、「現在も養育費を受けている」の回答の%はもっとあがっていたかもしれません。

そこで、今回は、養育費が未払いとなる可能性をなくすため、養育費の未払いに対する不安をなくすために、離婚する前と離婚した後にわけ、それぞれの段階でとれる対策について解説していきたいと思います。離婚前の方は①~③を、離婚後の方は②~③をお読みいただけるとよろしいかと思います。

養育費の未払いに対する対策①~離婚前

それでは、離婚前にとれる対策から解説していきます。

養育費を一括で受け取る

まず、養育費を一括で払うよう請求し受け取ることが考えられます。

養育費を一括で受け取ることで、離婚後養育費の未払いを心配する必要がなくなります。面会交流を実施しなければ、離婚を機に相手との関係を断つことができるのもメリットです。

もっとも、まとまったお金が必要となるため、そもそも相手が合意してくれない可能性が高いです。増額請求も難しく、分割で受け取る場合と比べて総額が低くなる可能性もあります。

公正証書を作る

次に、公正証書を作ることです。

この公正証書を作っておけば、万が一、養育費が未払いとなった場合に、公正証書を使って相手の財産を差し押さえる手続き(強制執行)をとることができます。

また、相手も養育費の未払いが続けば、強制執行の手続きがとられる可能性があることはわかっていますから、それを避けるために養育費をきちんと払おうという気持ちになり、結果として、養育費の未払いを防ぐことにつながります。

連絡の取り方について話し合っておく

次に、離婚後の連絡の取り方について話し合っておくことです。

養育費を分割で受け取っていく場合や面会交流を実施する場合は、離婚後も相手と連絡をとっていく必要があります。そのため、どのような手段・方法、頻度、タイミングで連絡を取り合っていくのか話し合い、合意内容を書面に残しておくことが大切です。

あとで述べるとおり、離婚した後、相手と定期的に連絡を取り合うことは養育費の未払い防止にもつながります。お互いにストレスにならないよう、離婚前に連絡の取り方についてきちんとルールを作っておきましょう。

連帯保証人をつける

次に、連帯保証人をつけることです。

お金の貸し借りなどのときと同じく、養育費でも連帯保証人をつけることができます。養育費を請求する側にとってはもちろん、相手にとっても減額交渉できたり、そのほかの離婚条件で譲歩を得ることができるといったメリットがあります。

もっとも、有効な契約を成立させるには法律で要求された条件をクリアしておく必要があります。相手や候補者となる相手を脅したりして無理やりが契約を成立させることはできません。

調停で離婚する

次に、離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))を申し立てて調停で離婚することです。

調停が成立すれば、調停調書という書面が作成されます。調停調書にも強制力がありますから、養育費の未払いが続けば強制執行の手続きをとることができますし、養育費の未払いの防止にもつながります。

また、公正証書との大きな違いは裁判所に履行勧告を出してもらえることです。履行勧告とは、裁判所から相手に「養育費をきちんと払いなさい」と言ってもらえる制度です。手続きは強制執行よりも簡単です。

養育費の未払いに対する対策②~離婚後

次に、離婚した後、養育費が未払いとなる前にとれる対策ついて解説します。

連絡を絶やさない

まず、相手との連絡を絶やさないことです。

相手との連絡を絶やすと相手のあなたや子どもに対する無関心につながり、それがやがては養育費の未払いにもつながりかねません。話すネタがないという場合は、子どもの写真や動画を送るなどして子どもの成長の様子を定期的に伝えるのも方法の一つです。相手の子どもに対する関心が薄れず、養育費の未払い防止につながります。

面会交流を実施する

次に、可能な限り、面会交流を実施することです。

面会交流を実施している親子ほど、養育費がきちんと支払われているとも言われています。面会交流を実施することで、相手の親としての自覚、子どもに対する愛情が持続するからかもしれません。どれだけ相手に親としての自覚や相手の子どもに対する関心や愛情を継続させることができるが養育費の未払いを防ぐためのポイントといえそうです。

養育費の減額請求に応じる

最後に、相手の養育費の減額請求に応じることです。

相手から養育費の減額請求を受けたとき、頑なに拒否してしまうと養育費の未払いにつながってしまうおそれがあります。そうなっては元も子もありません。相手の減額請求に応じるべきでないときは応じるべきではありませんが、減額もやむを得ないケースでは素直に応じた方が結果的に養育費の未払いにつながりやすくなります。

養育費の未払いに対する対策③~離婚後

次に、離婚した後、養育費が未払いとなってしまったときにとれる対策について解説していきます。

電話、メールで催促する

まず、相手の電話番号やLINEアカウント、メールアドレスを知っている場合は、電話やLINE・メールで養育費の支払いを催促してみましょう。意思表示しなければ相手が「払わなくてもいいや」という気持ちになり、ずるずると未払いが続いてしまう可能性があります。

未払いが初めての場合や数か月程度しか続いていない場合はいきなり法的措置をとる必要ありません。単なる払い忘れの可能性もあり、連絡を入れればすぐに払ってくれることもありますので、感情的にならず冷静に対応することが大切です。

請求書面を内容証明で送る

電話やLINE・メールでの催促に応じない場合は、請求書面を内容証明で送ってみましょう。内容証明は、いつ、どんな書面が、誰から誰に送達されたのかを郵便局が証明してくれる制度です。

内容証明で送ると「そんな書面見たことがない」という言い逃れができなくなります。また、普段見慣れない郵便を送ることで相手に心理的なプレッシャーをかけ、養育費の支払いに応じてもらいやすくなります。専門家の名義で書面を作成するとより効果的です。

調停を申し立てる

内容証明を送っても進展がなく離婚前に調停以降の手続きを踏んでいない方は、家庭裁判所に養育費請求調停を申立てましょう。調停では、調停委員が当事者の間に入って話をまとめてくれます。

調停が成立した場合は調停調書が作成されます。調停調書にも公正証書と同様の強制力があります。一方、調停が成立しない場合は自動的に審判に移行し、最終的には裁判官が養育費の支払義務などについて判断をくだします。

履行勧告・履行命令を申し立てる

一方、離婚前に調停以降の手続きで離婚した方は、家庭裁判所に対して履行勧告、履行命令を申し立てることができます。いずれも強制力はありませんが、相手に心理的なプレッシャーをかけ、養育費の支払いを促す効果を期待できます。

履行勧告とは家庭裁判所が相手に養育費を払うよう勧告するものです。履行命令とは、家庭裁判所が相手に期限までに養育費を支払うよう命じ、正当な理由なく命令に従わない場合は「10万円以下の過料」を科す命令です。

参照:履行勧告

相手の財産を差し押さえる手続きを取る

公正証書を作成している、調停以降の手続きで養育費の取り決めをしている場合は、相手の給与等の財産を差し押さえる手続きをとることができます。また、相手の財産を差し押さえる手続きをとる前提として、相手に今ある財産の開示を求めたり、第三者(市区町村、年金事務所)に相手の勤務先に関する情報の開示を求めることもできます。

養育費の未払いに関するQ&A

最後に、養育費の未払いでよくある疑問にお答えします。

養育費には時効がありますか?

はい、あります。離婚前に離婚協議書や公正証書を作っている場合は、月々の弁済期の翌日から5年が時効期間です。一方、調停で離婚した場合は、調停成立日の翌日から10年が時効期間です。

国による養育費の立て替え制度はありますか?

国による立て替え制度はありませんが、兵庫県明石市など替え制度を運用している自治体はあります。また、公正証書の作成費用を補助等の支援を実施している自治体もあります。

参照:こどもの養育費立替支援事業-明石市

まとめ

今回のまとめです。

  • 養育費の未払いを防ぐには事前の対策が重要
  • できれば離婚前、離婚後未払いになる前に対策をとっておきましょう

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。