- 養育費を内容証明で請求する方法を知りたい
この記事ではこのような悩みにお応えします。
相手に口頭やLINE・メールで養育費を請求しても効果がない場合に検討したい方法が、養育費の請求書面を作り、それを内容証明で相手に送る方法です。
ただ、養育費の請求書面を作ること、内容証明を使って郵便物を送るという経験が初めてで、どうやればいいかわからないという方がほとんどではないでしょうか?
そこで、今回は、内容証明や養育費の請求書面を内容証明で送るメリット・デメリットを解説した上で、養育費請求書の書き方や内容証明郵便の送り方などについて詳しく解説していきたいと思います。
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目次
内容証明とは
内容証明とは、いつ、どんな内容の書面を、誰から誰に送ったのかを郵便局が証明してくれる郵便制度です。内容証明という書面があるわけではなく、内容証明は「速達」などと同じように、相手に書面を送るための郵便手段の一つということになります。
郵便局に差し出した謄本(請求書面の原本の写し)は5年間保管され、差出人(内容証明を送る人)は5年間は差し出した謄本を見たり、再度証明を受けることができます。
養育費を内容証明で請求するメリット
では、養育費の請求書面を内容証明で送ることにはどんなメリットがあるのでしょうか?
相手と接触しなくていい
まず、相手と接触しなくていいことです。相手と直接会って話したり、電話やLINE・メールでやり取りして養育費を請求するには抵抗がある、という方にとってはメリットといえます。
相手に心理的な圧力をかけることができる
次に、相手に心理的な圧力をかけることができることです。内容証明による請求書面を使うことで、LINEとは異なるインパクトを相手に与えることができ、養育費の支払いを強くうながすことができます。
相手に請求の意思を確実に伝えることができる
次に、相手に養育費を請求するという意思を明確に伝えることができることです。内容証明を使えば、相手が請求書面を受け取ったことを郵便局が証明してくれますので、相手が「そんな請求された覚えはない」という言い訳ができなくなります。なお、仮に相手が開封せずに書面の内容を見なくても、書面の内容は相手に伝わったものとして扱われます。
養育費を内容証明で請求するデメリット
一方、養育費の請求書面を内容証明で送ることには次のデメリットがあります。
書面の内容に強制力がない
まず、公正証書などと異なり、内容証明の請求書面には強制力がないことです。つまり、相手に請求を無視されたとしても、相手が内容証明の書面を受け取ったことを理由に相手の財産を差し押さえたりすることはできません。
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払わない気持ちを固めさせてしまう
次に、相手の反感を買う可能性があることです。相手としたら、書面で養育費を請求されることは気持ちのいいものではなく、送ったことによって相手がもともともっていた養育費を払わないという気持ちをさらに固めさせてしまうおそれがあります。
財産を使われる・隠される、行方をくらまされる
次に、相手に財産を使われたり、隠されたり、あるいは行方をくらまされたりする可能性があることです。公正証書などの債務名義がある場合、養育費を払わなければ、あなたから強制執行の手続きをとられる可能性があることは相手もわかっています。相手に内容証明を送ることで強制執行の現実味を感じさせ、相手を上記の行動へとうながしてしまう可能性があります。

未払いの期間、これまでの経緯・相手の対応、相手の性格、離婚前の相手との関係性などによっては、いきなり強制執行を申し立てることも検討しなければいけません。
養育費請求書の書き方【サンプルあり】
養育費の請求書面を内容証明で送るメリット・デメリットを踏まえた上で「内容証明で送る!」と決めた場合は、まずは請求書面を作る必要があります。ここからは養育費の請求書面の書き方について、サンプルをお見せしながら解説していきたいと思います。
※この記事では、パソコンで請求書面をつくり、郵便局の窓口で内容証明郵便を送るケースを前提に解説しています。オンライン(e内容証明)で内容証明郵便を送る場合は、あらかじめ指定されたファイル・ひな形を使う必要があります。E内容証明の詳細は「e内容証明(電子内容証明)」、「e内容証明(電子内容証明)操作説明書・文書ファイル雛形」でご確認ください。
①標題
標題は相手が一目で内容の予測がつくものにします。「催告書」、「通知書」なども可能ですが、養育費支払請求書が一番わかりやすくていいのではないかと思います。
②日付
日付は書面をつくった日とします。
③相手の住所・郵便番号、氏名
相手の住所・郵便番号、氏名を書きます。
④あなたの住所・郵便番号、氏名
あなたの住所・郵便番号、氏名を書きます。書きたくない場合の対処法はあとで解説します。
⑤~⑦本文
⑤・・合意内容を書きます。養育費を請求する子供と毎月の金額をはっきりさせておくことがポイントです。離婚のときに離婚協議書、公正証書などの書面をつくっている場合は、書面を参照しながら書くとよいでしょう。
⑥・・養育費の未払い期間、未払い金の合計金を書きます。
⑦・・未払い金の支払い方法を書きます。支払い期限を定め、一括で支払わせるのが基本です。「法的手段を~」を書くかどうかは、これまでの経緯や予想される相手の対応などをみてケースバイケースで判断します。
請求書面の書き方Q&A
ここからは請求書面の作成でよくある疑問にお答えします。
手書きで書いてもいいですか?
手書きで書いてもいいです。手書きで書く場合は内容証明用の3枚複写の用紙を使うと便利です。ただ、自由に訂正できることを考えると、パソコンをお持ちの場合はパソコンでつくることをおすすめします。
差出人の住所は書かなければいけませんか?
原本(上のサンプル)に書く必要はありませんが、謄本(あとで解説します)や封筒には書かなければいけません。どうしても住所を書きたくない場合は次の方法で対応することが考えられます。
- 行政書士などの専門家に作成を依頼し、事務所名を差出人の住所にしてもらう
- 実家や勤務先等の住所を差出人の住所とし、「気付」を付記する
相手からの書面を自宅以外の場所で受け取る方法はありますか?
相手に住所を知られたくない場合、相手からの書面をどのように受け取ればいいのか迷うと思います。もし、実家を差出人の住所としている場合には、実家を相手からの書面の送付先に指定してもよいと思います。
その他の方法としては、郵便局留めで送ってもらう方法があります。ただし、郵便局から郵便物が届いたという連絡はなく、郵便物が郵便局に到着した日の翌日から起算して10日間を過ぎると相手に郵便物が返送されます。
もし、相手に郵便局留めで送って欲しい場合は、請求書面を送る際に「郵便局留めで送って欲しいこと」と「送り先の郵便局の住所・郵便局名」を伝えた上で、「郵便物の追跡(お問い合わせ)番号」を教えて欲しいことも伝えておく必要があります。
相手の住所の調べ方
先ほどの養育費の請求書面を見ておわかりいただけるように、請求書面を相手に送る場合は相手の住所を把握しておく必要があります。今現在、相手の住所を把握していない場合は、以下の関連記事で解説している方法で相手の住所を調べることができないか検討していただければと思います。
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養育費の内容証明の送り方
ここからは、養育費の請求書面(原本)を作った後、相手に送るまでの流れについて解説していきます。
必要なものを準備する
まず、郵便局に行く前に次のものを準備します。
①原本1部
②謄本2部
③お金
①原本1部
原本は相手に送る養育費の請求書面です。「養育費請求書の書き方【サンプルあり】」で解説した方法で作った請求書面を相手に送ります。
②謄本2部
次に、謄本(原本の写し)を2部用意します。1部はあなた用、もう1部は郵便局用です。内容は原本と同じですが、縦書きの場合、横書きの場合で文字数・行数制限があります。謄本の枚数が2枚以上にわたるときはページとページの間に契印を押す必要があります。
参考:内容証明の謄本の作成方法等を教えてください | 郵便局
③お金
次に、お金を準備します。
1枚 | 440円 | |
内容証明の加算料金 | 2枚 | 700円 |
3枚 | 960円 | |
定型25gまで | 84円 | |
郵便料金 | 定型外(規格内)50gまで | 120円 |
定型外(規格内)100gまで | 140円 | |
一般書留の加算料金 | 損害要償額が10万円まで | 435円 |
速達250gまで | 260円 | |
その他の加算料金 | 配達証明(差し出しの際) | 320円 |
配達証明(差出後) | 440円 |
たとえば、「定型外(規格内)100gまでの請求書面を、差し出し時に配達証明付きの内容証明(2枚)」で送る場合の料金は
(内容証明2枚)+(郵便料金)+(一般書留)+ (配達証明(差し出し時))
700円 + 140円 + 435円 + 320円 =1,595円
となります。
※内容証明で送る場合は必ず「一般書留」をつける必要があります。「配達証明」は郵便局が郵便物を配達したことを証明してくれるオプションサービスです。配達証明をつけるかどうかは任意ですが、必ずつけて送ってください。
郵便局で請求書面を送る
必要なものを準備できたら郵便局で請求書面を送る手続きをします。なお、郵便局によって内容証明の手続きに対応できる郵便局、対応できない郵便局がありますので、あらかじめ対応できる郵便局かどうか確認しておくと安心です。
また、内容証明の手続きを完了するには郵便認証司のチェックが必要ですが、郵便局によっては郵便認証司がいる時間帯、いない時間帯があります。1回の手続きで済ませるには、郵便認証司がいる時間帯もあわせて確認しておくとよいでしょう。
郵便局に行く際は次のものをもっていきます。
□ 養育費の請求書面3部(原本1部、謄本2部)
□ 封筒
※ 受取人の住所・氏名は請求書面に書いたとおりに書く
※ 封筒に住所を書きたくない場合の対応方法は「自分(差出人)の住所は書かなければいけませんか?」で解説しています
※ 切手は貼らず(郵便局で貼り付けます)、封はしないまま郵便局にもっていきます
□ 印鑑
□ お金
郵便局についたら「郵便物」の窓口で、係に「内容証明で送りたい」こと伝えると手続きをとってくれます。係員が謄本が決まりどおりにつくってあるかをチェックし、問題がなければ郵便認証司の認証を受けます。
認証を受けた後、原本を封筒に入れてその場で封をして係員に渡します。謄本の1部はあなたに渡され、もう1部は郵便局が保管(保管期間5年)します。お金を払い、係員から「謄本」と「書留・特定記録郵便物等受領証(お客様控)」を受け取れば手続き完了です。
配達されたことを確認する
配達証明をつけて送った場合、手続きを終えた後、数日して自宅に「郵便物等配達証明書」が送られてきます。証明書には請求書面を配達した日などが書かれてありますので確認しましょう。「郵便物等配達証明書」は相手が内容証明郵便を受け取ったことを証明する証拠として使うことができますの、なくさずにもっておきましょう。
内容証明を送った後の対応
養育費の請求正面を内容証明で送った後の対応は相手の反応により異なります。
相手から減額請求されたとき
まず、相手から養育費の減額を請求されたときは減額の理由を聞き、応じることができる場合は話し合い(または調停)でいくら減額するのか話し合います。話し合いで合意できたら公正証書を作ります。
相手の反応がないとき
一方、相手の反応がないときは次の対応をすることが考えられます。
履行勧告・履行命令
離婚時に調停以降の手続きで養育費の取り決めをしているときは、家庭裁判所に対して履行勧告・履行命令を申し立てることも検討します。
履行勧告は裁判所から相手に「取り決めどおりに養育費を払いなさい」と言ってもらえる制度です。電話で申し立てることができ、手数料はかかりません。
一方、履行命令は裁判所が相手に期限を決めて養育費の支払いを命じ、正当な理由なく支払いに応じない場合には10万円の制裁金を科す制度です。書面で申し立てる必要があり、1回の申立てにつき500円の手数料がかかります。
なお、履行勧告にも履行命令にも強制力はありません。裁判所に勧告、命令をしてもらったことをきっかけに相手に財産を使われたり、隠されたりするおそれがある場合は、いきなり強制執行の手続きをとることも考えられます。
強制執行
強制執行認諾文言入りの公正証書(※)を作っている、調停以降お手続きで養育費の取り決めをしているときは、相手の財産を差し押さえる手続き、すなわち、強制執行の手続きをとることができます。強制執行については以下の関連記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
※もし養育費を決められたとおりに払わなかった場合には、財産を差し押さえる手続きをとられてもかまわない、という相手の承諾(認諾)文言が盛り込まれた公正証書。

デメリットのところでも述べたように、状況によっては、内容証明や履行勧告・履行命令を経ずにいきなり強制執行を申し立てることも検討しなければいけません。