• 離婚した後でも慰謝料を請求できますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

とにかくはやく離婚したかった、離婚前は不倫されていたとは知らなかったなど、様々な事情から離婚後に慰謝料請求できないかお悩みの方も多いと思います。

そこで、今回は、離婚後に慰謝料請求することはできるのか、どんな条件ならば慰謝料請求できるのか、どのような手順で請求すればいいのか解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
離婚や夫婦関係でお悩みの方は一人で悩まず相談してみませんか?弊所の無料相談は時間制限、回数制限を設けていません。時間や回数を気にすることなく気軽に相談できます。ご相談ご希望の方は、「お問い合わせ」または「LINEで無料相談」よりお申し付けください。全国どこにお住いの方でも対応いたします。
プロフィールはこちら

離婚後でも慰謝料請求できる

まず、結論を申し上げると、あとで解説する条件を満たす限り、離婚後でも離婚慰謝料を請求することは可能です。

離婚慰謝料はもともと、相手の不貞などの有責行為によって離婚することになって被った精神的苦痛を賠償するためのお金です。離婚成立によって請求権が発生している以上は、離婚成立後も請求することができます。

離婚後に慰謝料請求するための条件

離婚後に離婚慰謝料を請求するには次の条件をクリアする必要があります。

①相手の不貞などの有責行為が原因で離婚した
②有責行為時に婚姻関係が破綻していなかった
③時効が完成していない、援用されていない
④離婚時に取り交わした書面に清算条項を設けていない

以下、詳しく解説します。

①相手の不貞などの有責行為が原因で離婚した

まず、相手の不貞などの有責行為が原因で離婚したことが必要です。

有責行為は不貞のほかにも、悪意の遺棄、DV・モラハラなどがあります。また、相手が慰謝料請求を拒否したときのことを考えて、有責行為を証明する証拠を集めておくことも必要です。一方、性格の不一致など、どちらに非があるか断定できない理由で離婚した場合、慰謝料請求は難しくなります。

②有責行為時に婚姻関係が破綻していなかった

次に、相手が有責行為を行った当時、婚姻関係が破綻していなかったことが必要です。

仮に、相手が有責行為をしていても、その当時すでに婚姻関係が破綻していた場合、精神的苦痛は生じない→慰謝料を請求できないということになってしまいます。なお、婚姻関係が破綻していたことは、婚姻関係が破綻していることを証明することによって慰謝料の支払義務を免れる相手に証明責任があります。

③時効が完成していない、援用されていない

次に、時効が完成していないこと、あるいは完成していても援用されていないことが必要です。

離婚慰謝料の時効期間は離婚成立日から3年です。3年が経過し、相手が時効を援用すると相手に慰謝料を請求する権利が消滅してしまいます。一方、時効が完成しても相手が払うことに合意した場合や相手がまだ援用の手続きをとっていない場合は請求することができます。

離婚原因慰謝料の時効は有責行為を知ったときから3年

なお、離婚慰謝料(離婚自体慰謝料)に似た慰謝料として離婚原因慰謝料(不貞慰謝料、不倫慰謝料などとも呼ばれます)があります。

離婚原因慰謝料の時効期間は、あなたが「有責行為を知ったとき」から3年ですので、たとえば、相手が婚姻中に不貞していたことを離婚後に知ったという場合は、離婚慰謝料の時効が完成していても、離婚原因慰謝料の時効は完成しておらず、請求できる可能性があります。

④離婚時に取り交わした書面に清算条項を設けていない

次に、離婚のときに離婚協議書や公正証書などの書面を作ったものの、その中に清算条項を設けていないことが必要です。仮に清算条項を設けていた場合、基本的に離婚後の相手に対する請求(養育費の請求は除く)は遮断されてしまいます。

もっとも、相手があなたに不貞はしていないなどと嘘をついて清算条項を設けた協議書にサインさせたなど、離婚協議書にサインする前提事実について、あなたに重大な誤解が生じていたといえる場合には、清算条項を無効にして慰謝料を請求できることがあります。

離婚後に慰謝料請求する手順

離婚後に慰謝料請求する手順は次のとおりです。

①証拠を集める

②条件をクリアするか確認する

③請求内容を考える

④相手に話し合いを切り出す → 裁判or調停?

⑤書面を作成する

指定した方法で慰謝料を受け取る

①証拠を集める

まず、先ほども述べたとおり、相手の有責行為を証明する証拠を集めることが先決です。

証拠がなくても請求自体はできますが、証拠がなければ相手から請求を拒否された場合に反論できず、相手に慰謝料を払わせることが難しくなります。

証拠は相手と同居しているときに集めきることが理想です。離婚した後にはじめて集めるとなると集めることができる証拠は限られてきます。今現在手元に証拠がないときは、弁護士や探偵(不貞、不倫専門)などの専門家にはやめに相談した方がよいでしょう。

②条件をクリアするか確認する

次に、先ほど述べた条件をクリアするかどうかを確認しましょう

離婚慰謝料は離婚したからといって必ず請求できるお金ではありません。不貞、悪意の遺棄、DV・モラハラなど、相手から有責行為を受け、かつ、それを証明できるほどの証拠を集めておく必要があります。

その他、有責行為当時、すでに婚姻関係は破綻していなかったか、現時点で時効は完成していないか、離婚のときに相手に金銭の請求はしないと約束していないかなどを入念に確認しておくことが必要です。

③請求内容を考える

慰謝料請求する条件を確認できたら、相手に請求したい内容を考えます

具体的な内容は一括で請求するか分割で請求するかで異なります。一括で請求する場合は

・請求金額
・支払期限
・支払方法(口座振り込みか手渡しか)
・振込手数料の負担者(口座振り込みの場合)

を考えます。一方、分割で請求する場合は

・請求金額(総額)
・支払いの始期・終期
・毎月の支払期限
・毎月の支払い額
・支払方法
・振込手数料の負担者
・期限の利益喪失条項
・遅延損害金の利率

を考えておきます。余裕があれば、⑤で作る書面の原案を作っておき、話し合いのときにたたき台にしながら話し合いを進めていくとよいでしょう。なお、慰謝料は一括払いが原則です。

④相手に話し合いを切り出す

①~③を終え、相手との話し合いの準備が整ったら、相手に話し合いを切り出します

相手が話し合いに応じてくれそうな場合は口頭(電話を含む)、あるいはLINE・メールで切り出してもよいでしょう。一方、話し合いができない、話し合いに応じてくれそうにないという場合は請求書面を内容証明で相手の住所宛に送ります。

その後、相手が話し合いに応じない、話がまとまらないという場合は調停を申し立てることもできますが、調停も結局は話し合いで決着させる手続きですので、通常は裁判を提起することが多いかと思います。

⑤書面を作成する

相手との話し合いの末、話がまとまったら口約束だけで終わらせず、あとで言った・言わないのトラブルになるのを防ぐためにも書面を作ります。分割払いに合意したときは、未払いのリスクに備えて公正証書を作っておきましょう。

まとめ

今回のまとめです。

  • 慰謝料請求の条件をクリアするのであれば、離婚後でも慰謝料請求は可能
  • ただし、相手に慰謝料を払わせるには証拠が必要
  • 話し合いで話がまとまれば合意書面を作り、話がまとまらない場合は裁判を提起する