離婚の調停調書と公正証書 | 違いやどちらを作った方がいいかを解説
- 調停調書と公正証書との違いは?
- どちらを作った方がいい?
この記事ではこのような疑問や悩みにお応えします。
調停調書とは調停が成立した際に裁判所が作る公文書です。調停調書も公正証書も離婚する際に作ることができる書面であるため、違いなどがわからず、どちらを作るべきか迷う方もおられると思います。
そこで、今回は、調停調書と公正証書との違いを解説した上で、調停調書と公正証書のどちらを作るべきか、その判断基準をお示ししたいと思います。
目次
調停調書と公正証書との違い
それでは、さっそく、調停調書と公正証書の違いからみていきましょう。
書面を作成する人
まず、書面を作る人が違います。
調停調書は調停を担当した家庭裁判所の裁判所書記官が作成します。
一方、公正証書は公証役場に勤める公証人が作成します。
作成手続き
次に、作成手続きが違います。
調停調書は調停という手続を通じて作成されます。調停には調停委員などの第三者が関与します。
一方、公正証書は、原則として、夫婦だけで手続きを進めます。
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作成後の手続き
次に、作成後の手続きが違います。
調停の場合、原則として調停成立時と同時に離婚が成立しますが、役所に離婚届を提出する必要があります。その際に必要となる調停調書謄本は家庭裁判所に申請して取り寄せる必要があります。
一方、公正証書の場合は、公証役場で公正証書にサインした後、公証役場で公正証書の正本(原本の写し)を受け取ります。その後、役所に離婚届を提出し、受理された段階で離婚が成立します。公正証書の提出は不要です。
作成までの期間
次に、作成までの期間が違います。
調停調書は調停成立後に作成されますが、調停を申立ててから調停成立までに数か月はかかります。調停成立後は2、3日前後~1週間で調停調書ができあがります。
一方、公正証書は公証人の繁忙などにより異なりますが、公証人に作成を依頼してから原案作成まで、通常、1週間前後~2週間前後かかります。
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作成費用
次に、作成費用が違います。
調停調書を作成するのに費用はかかりませんが、前述した謄本を取り寄せる場合は、謄本1通につき150円の費用(収入印紙代)がかかります。
一方、公正証書は作成費用が発生します。費用は自費で負担する必要がありますが、一定の条件を満たす場合は役所から補助を受けることができます。
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同意の有無
次に、同意の有無です。
調停調書の場合に作成に対する同意は不要です(ただし、調停事項への同意は必要です)。調停が成立すれば、同意の有無に関係なく作成されます。
一方、公正証書を作成するには相手の同意が必要です。また、公正証書を強制執行が可能となる書面にする場合も相手の同意が必要です。
時効・除斥期間
次に、時効・除斥期間が違います。
調停調書は判決と同一の効力を有しますから、調停調書に盛り込んだ権利の時効(除斥)期間は10年となります(民法169条1項)。ただし、弁済期が到来していない権利については、この規定は適用されません(同条2項)。
一方、公正証書に盛り込んだ権利の時効(除斥)期間は、慰謝料は3年、財産分与は2年、養育費は5年です。
強制執行が可能な範囲
次に、強制力が及ぶ範囲が違います。
調停調書の場合、養育費や慰謝料などの金銭的な合意事項のみならず、面会交流などの非金銭的な合意事項に対しても強制執行(※)が可能です。
一方、公正証書の場合、強制執行が可能となるのは金銭的な合意事項に限られます。
※面会交流については間接強制のみ可能です。間接強制とは、面会交流に応じない場合に金銭の支払を義務付ける裁判所の命令のことで、この命令により義務者に心理的圧迫をあたえ、間接的に面会交流を実現しようとするものです。
その他の効力
最後に、その他の効力です。
調停調書を作っておくと、前述した強制執行のほか履行勧告という手段が使えます。履行勧告とは、裁判所から相手に「(養育費などの)お金をきちんと払いなさい」と言ってもらえる制度です。お金を強制的に払わせる強制力はありませんが、裁判所という公的機関からの勧告ですから一定の効果は期待できます。
一方、公正証書を作ったとしても裁判所に履行勧告してもらうことはできません。
参照:履行勧告
調停調書or公正証書?どっちを作るべき?
最後に、調停調書と公正証書のどちらを作るべきかですが、まずは夫婦で話し合いができるかどうかを基準としましょう。
公正証書を作るには、夫婦で離婚する意思を確認した上で、養育費などの離婚の条件について話し合わなければいけません。この話し合いができない以上は公正証書を作ることはできないからです。公証人が夫婦の間をとりもって話をまとめてくれるわけでもありません。
一方、前述のとおり、調停では調停委員という第三者が夫婦の間に入って話をまとめてくれます。相手と話し合いができない場合は調停を申立て、調停調書を作るために調停成立を目指すべきです。また、調停調書による時効や強制力の範囲にメリットを感じるも調停を検討すべきでしょう。
まとめ
調停調書と公正証書は似ている部分もありますが、作成の手続きや作成までの期間、強制力の及ぶ範囲などで大きな違いがあることがおわかりいただけたかと思います。相手と話し合いができる場合は公正証書の作成を目指し、できない場合は調停調書の作成を目指しましょう。
投稿者プロフィール

- 離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。
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