親権と監護権との違い | 離婚時に分けることはできますか?

  • 親権と監護権の違いは何ですか?
  • 親権と監護権を分けることはできますか?

この記事では、このような疑問、悩みにお応えします。

親権という言葉を聞いたことがある方はほとんどだと思いますが、監護権という言葉は聞きなれない方も多いのではないでしょうか?

そこで、今回は、親権や監護権の意味、両者の違いについて解説した上で、離婚時に親権と監護権を分けることができるのかどうか、分けるメリット・デメリットは何なのか、などについて詳しく解説していきたいと思います。

親権は身上監護権と財産管理権から成る

親権とは、親が未成年者(18歳未満)の子どもに対して監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理する権利義務のことで、身上管理権と財産管理権から構成されます。

そして、身上管理権は、子どもの身の回りの世話をし教育する権利義務です。財産管理権は、子ども名義の財産を管理したり、親が子どもの代理人となる権利義務です。財産管理権は包括的な財産管理権、法律行為に関する同意権、身分行為の代理権から構成されます。

監護権は身上監護権のこと

一方、監護権は前述した身上監護権のことです。身上管理権は監護・教育権、居所指定権、懲戒権、職業許可権から構成されます。

・ 監護教育権:子どもと一緒に住み、子どもを見守り教育していく権利義務

・ 居所指定権:子どもをどこに住ませて生活させるかを決める権利義務

・ 懲戒権:必要な範囲で教育したり、しつける権利義務

・ 職業許可権:子どもが職業に就く際に許可する権利義務

親権と監護権は分けることができる

離婚時には必ず子どもの親権をもつ者を決めなければなりませんが、法律上、親権と監護権とを分けることも認められています(民法766条3項参照)。

実務上は、一方の親に親権(身上監護権と財産管理権の双方)を帰属させることがほとんどですが、稀に一方の親に身上監護権を除いた親権を、他方の親に身上監護権を帰属させることがあります。

どんなときに分ける?

親権と監護権を分けるのは、どちらが子どもの親権者をどちらにするかについて夫婦で合意できない場合です。

離婚時には必ず子どもの親権者を決めなければならず、決めない場合は離婚できません。

もっとも、離婚には合意できているのに、親権についてだけ合意できないがために、調停→裁判と手続きを踏まなければならないのは、夫婦はもとより、子どもたちにとっても大きな不利益です。

そこで、このような事態を回避するため方法として、親権と監護権を分けるという選択をすることがあります。

親権と監護権を分けるメリット

では、親権と監護権を分けることにどのようなメリットがあるのでしょうか。監護権を取得する親(監護親)と監護権を除いた親権のみを取得する親(非監護親・親権者)に分けてみていきましょう。

監護親のメリット

まず、監護親のメリットは、早期に離婚の話し合いを決着させ、離婚を成立させることができることです。

前述のとおり、親権者を決めなければ離婚できませんから、親権をめぐって相手と争う場合、離婚までに時間がかかってしまう可能性があります。

もっとも、監護権を除いた親権を相手に譲ることで相手が譲歩する可能性があります。特に、相手が親権を獲得することが難しい状況下では、親権をめぐって争うことは相手にとっても得策ではなく、譲歩する可能性が大きいといえるでしょう。

非監護親のメリット

一方、非監護親のメリットは、親権者という権利を取得したという安心感を得られることです。

親権と監護権とを分けない場合は、すべて親権は相手にもっていかれる可能性があり、「相手に子供を奪われるのではないか」という漠然とした不安や怒りの感情をもってしまうものです。

しかし、少なくとも親権を得ることで、自分も子供とつながっているという安心感を得ることができます。

親権と監護権を分けるデメリット【監護親】

次に、監護親からみた親権と監護権を分けるデメリットをみていきましょう。

子供の姓の変更手続きができない

まず、子供の姓の変更手続きができないことです。

離婚にあたって子供の戸籍を相手の戸籍から外すためには、家庭裁判所に申し立てをして子供の姓を変更する許可を得る必要があります。

しかし、子供が15歳未満の場合、この申し立ては監護者ではなく親権者がすることになっています。つまり、親権者が子供の姓を変更することについて同意しなければ、子供の姓を変更できず、子供の戸籍は相手の戸籍に入ったままとなります。

戸籍に監護者であることが記録されない

次に、相手の戸籍に監護者であることが記録されないことです。

前述のとおり、親権者が子供の姓を変更することについて同意しなければ、子供の戸籍は相手の戸籍に入ったままです。

そして、相手の戸籍には監護者の氏名などは記録されません。つまり、あなたが子供の監護者であることを公的に証明する手段がないということです。

そのため、後述するように、離婚協議書などの書面を作って、あなたが子供の監護者であることを証明できる証拠を残しておく必要があります。

養子縁組で親権者の承諾が必要となることも

次に、再婚相手と15歳未満の子供とが養子縁組する場合は、親権者の承諾が必要となります。

つまり、養子縁組する際に作成する養子縁組届には、親権者のサインが必要となります。

離婚後、新しいパートナーを見つけ、そのパートナーが子供との養子縁組を希望し、監護者もそれを望んでいたとしても、相手の親権者が承諾しない限り、養子縁組することができません。

親権と監護権を分けるデメリット【非監護親・親権者】

非監護親からみた親権と監護権を分けるデメリットは、当然には面会交流が実施できるわけではないことです。

監護親と面会交流の実施や実施方法について話がまとまらない場合は、調停で解決を図ることになりますが、調停は1か月や2か月で終わるものではありません。親権を取得しても、子供と会えるまでには時間がかかる可能性があります。

親権と監護権を分ける場合の離婚協議書の書き方

親権と監護権を分ける場合は、離婚協議書に次のような条項を盛り込んでおくことをおすすめします。

前述のとおり、監護者であることを公的に証明する手段がないため、いざ監護者であることを証明する必要が出てきた場合は離婚協議書が役に立ちます。

なお、他に養育費などの金銭の取り決めをした場合は公正証書の作成をおすすめしますが、取り決めをしていない場合は特段作成する必要はありません。

第〇条(親権・監護権)

1 甲乙間の、長女●●●●(平成●●年●月●日生)及び長男●●●●(令和●年●月●日生)の親権者を、父である甲と定める。
2 甲乙間の、長女●●●●(平成●●年●月●日生)及び長男●●●●(令和●年●月●日生)の監護権者を、母である乙と定め、今後、同人のもとで監護養育する。

親権、監護権でもめる場合は調停を

親権と監護権を分けるにしても、どちらが親権を取得し、どちらが監護権を取得するかで話がまとまらない場合は、子の監護者の指定調停を申し立てましょう。

調停では話し合いによる合意形成により、どちらかが親権者、どちらかが監護者と指定されます。一方、話がまとまらず調停が不成立となった場合は、自動的に審判という手続に移行し、最終的には裁判官の判断で親権者、監護権者が決まります。

参照:子の監護者の指定調停 | 裁判所

まとめ

監護権は親権の身上監護権と財産管理権のうち身上管理権のことを指します。離婚時は通常、一方の親に親権(身上監護権と財産管理権)を渡しますが、親権をめぐって争うような場合は、一方の親に監護権(身上監護権)のみを渡す方法をとることもできます。

もっとも、親権と監護権を分ける方法にはデメリットがあります。離婚を急ぐあまり、安易に親権と監護権を分けることだけは避けましょう。

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。