親権とは?離婚するなら知っておきたい全知識をまとめて解説します
- 親権ってどんな権利ですか?
- 親権と監護権の違いは何ですか?
- 親権ってどうやって決めればいいですか?
- 親権者を変更することはできますか?
- 相手から親権を奪うことはできますか?
この記事ではこのような疑問、お悩みにお応えします。
今の日本の法制度上、離婚後は、夫婦どちらかが子供の親権をもつ単独親権制です。また、数ある離婚条件の中で、親権は唯一、離婚前に決めなければならないとされているため、親権をめぐって言い争いとなり、離婚までに時間がかかってしまうケースも多くみられます。
今回は、この親権にかかわる必要な知識を一挙に解説していきたいと思います。関連記事とあわせてお読みいただければ、親権についての必要な知識を身につけることができますので、ぜひじっくり読んでいただけると幸いです。
目次
親権とは
親権とは、親が未成年者(18歳未満の子)に対して実際に子育てや教育を行ったり、子供の財産を管理する権利義務です。
親権と聞くと「親が子どもをしつける権利(後述する「懲戒権」)」をイメージされる方も多いと思います。
しかし、法律には、親権は子どもに対する「権利」と同時に「義務」であって、子どもの利益を守るために行使されなければならないと明記されていることに注意が必要です。
(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条
親権を行う者は、子の利益のための子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
親権は「身上監護権」と「財産管理権」から成る
親権は身上監護権と財産管理権から構成されます。
身上監護権
身上監護権は子どもの身の回りの世話をし教育する権利義務です。身上監護権は
- 監護教育権:子供と一緒に住み、子供を見守り教育していく権利義務
- 居所指定権:子供をどこに住ませ、生活させるかを決める権利
- 懲戒権:必要な範囲で教育したり、しつける権利
- 職業許可権:子供が職業に就く際に許可する権利
の4つから構成されます。
財産管理権
一方、財産管理権は子供の財産を管理したり、親が子供の代理人となる権利義務です。財産管理権は、
- 包括的な財産管理権:子供名義の口座を開設する、お祝い金やお年玉を貯金する など
- 法律行為に関する同意権:子供が不用品を売却する、賃貸アパートを借りる際などに同意する など
- 身分行為の代理権:進学、結婚、改姓の際に子供に代わって手続きする など
の3つから構成されます。
親権と監護権との違い
監護権は前述した身上監護権のことで、親権の一部です。法律上は、親権から監護権を分離して、一方の親が親権を、一方の親が監護権をもつことが認められています。
親権と監護権を分けた場合は、監護権をもつ親が子どもの世話や教育をし、親権をもつ親は面会交流を通じて子どもとの交流を図っていくことになります。
親権者を決めなければ離婚できない!?
親権とほかの離婚条件との決定的な違いは、離婚前に必ず親権者を決めなければならないことです。養育費や慰謝料などについては、離婚後に決めることもできないわけではありません。
協議で離婚する場合は夫婦で話し合い、夫婦のどちらか一方を親権者に決め、離婚届にその旨を記載する必要があります。親権者の欄を空欄にしたまま提出したのでは、役所が離婚届を受理せず協議離婚は成立しません。
親権の決め方
前述のとおり、まずは、夫婦で話し合ってどちらを親権者とするかを決めます。親権者の決め方としては
【パターン①】全ての子どもの親権を一方の親がもつ
【パターン②】子どもごとに親権をわける
【パターン③】親権と監護権を分ける
がありますが、【パターン①】の方法で取り決めることがほとんどで、稀に【パターン②】か【パターン③】の方法で決める場合があります。
話し合いで決めることができない場合は、調停、調停で決めることができなかった場合は審判または裁判で決めることになります。調停以降の手続きでは、
- 監護状況、監護実績、監護の継続性
- 離婚後の生活環境
- 周囲のサポート体制
- 心身の健康状態
- 経済力
- 子供の意向
などを総合的に勘案して、どちらの親に親権をもたせることが子供の健全な成長のためにはよいのか、という観点から親権者を決めます。
親権をもたない親と子供との関係
話し合いや調停などの結果、親権をもたないことになった親(以下「非監護親」といいます。)と子供との関係は離婚後も継続します。
離婚したからといって、法的な親子関係が途切れるわけではありません。離婚後も法的な親子関係が継続する限り、非監護親には以下の権利・義務が発生します。
面会交流ができる
まず、権利は、子供との面会交流ができることです。親権をもつ親は、原則、面会交流を拒むことはできません。
面会交流を実施することに合意できた場合は、まずは、細かいルールなどについて今決めるのか、面会交流の都度話し合っていくのか決める必要があります。
養育費の払う必要がある
一方、義務は、養育費を支払うことです。養育費は親の子供に対する扶養義務に基づいて負担するものですから、法的な親子関係が続く以上は離婚後も負担し(払い)続ける必要があります。収入の多寡にかかわらず、非監護親が負担します。
親権者は変更できる
離婚時に一度決めた親権に関する取り決めは、その後変更することができます。もっとも、親の都合で常に変更できるとなると、子供を混乱させ、子供の成長にいい影響を及ぼしません。
そのため、親権者の変更は親の合意だけで行うことはできないことになっています。親権者を変更するには必ず家庭裁判所に対して親権者変更の調停(または審判)を申し立てる必要があり、かつ、裁判所が親権者を変更することが子供のためになると判断したときに限って親権者を変更できるルールになっています。
親権を喪失・停止する制度もある
親権者の変更の制度のほかに、親権者の親権を喪失・停止させる制度も設けられています。親権の喪失とは親権者から親権を奪うこと、親権の停止とは一定期間、親権者から親権を奪うことです。
親権を喪失させる場合も停止させる場合も、親権者に虐待や悪意の遺棄など、親権者としてふさわしくない事情があったことが必要です。また、手続としては、親権者の変更と同様に、家庭裁判所に対して審判を申し立てる必要があります。
親権に関するQ&A
最後に、親権でよくある疑問・質問にお答えします。
専業主婦でも親権をもてますか?
話し合いで合意できればもてます。
過去の統計をみると、母親が親権をもつケースが圧倒的に多いことがわかります。
また、経済力は親権者を決める一つの指標ではありますが、絶対的な指標ではありません。これまでの監護実績や子供の意向、就労可能性、周囲のサポート体制なども加味されますし、これから就職するなどして経済力をカバーすることは十分可能です。
父親でも親権をもつことはできますか?
まず、話し合いで合意できれば可能です。
相手と争いとなって調停以降に手続きが進むと難しくなりますが、それでもまったく不可能というわけではありません。監護実績を積んでおく、離婚後の生活環境を整えるなど、あらかじめ対策をとっておくことが必要です。
相手の不倫で離婚しますが、親権をもてますか?
相手が不倫したからといって、必ず親権をもてるわけではありません。
離婚原因と親権とは、基本的には切り離して考える必要があります。相手が不倫・浮気したとしても、子供から見ればよき父、よき母である可能性があり、離婚によって関係を切り離すのは子供の成長にマイナスとなる可能性もあるからです。
母性優先の原則とは何ですか?
母性優先の原則とは、子供、特に乳幼児(0歳~5歳前後)については、母性によるきめ細かな子育てが不可欠であることから、特段の事情がない限り、母性が認められる方に親権を与えるべきとする考え方です。
一般的に乳幼児の子育ては母親が担うことが多く、離婚後も母親に子育てを担当させることが適当との考えから、乳幼児の親権は母親が取得することが多いのが実情です。
もっとも、母親に虐待などの親権者としての資格を疑わせる事情がある場合や母親よりも父親の方が子育てを担っており、子供と父親との精神的・情緒的な結びつきが強いと認められる場合などは父親が親権を取得することもあります。
かつては「母子」優先の原則の考えが一般的でしたが、父親でも母親のような役割を果たすことは十分可能であることから、今では「母性」優先の原則の考えが一般的となっています。
親権をもったら子供の苗字、戸籍はどうなりますか?
親権をもったからといって子供の苗字が変わるわけではありません。手続きをしなければ、お子さんは今の苗字を名乗り続けることになります。
また、お子さんの戸籍が元配偶者を筆頭者とする戸籍に入っているのであれば、お子さんの戸籍も元配偶者の戸籍に入ったままとなります。
お子さんの戸籍をあなたの戸籍に入れるには、まずは苗字を変更する必要があります。お子さんの苗字を変更するには、家庭裁判所に対して「氏の変更許可」の申し立てをし、許可を得てから役所で入籍届を行えば、お子さんの戸籍をあなたの戸籍に入れることができます。
投稿者プロフィール

- 離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。
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