【不安解消】専業主婦でも親権をもつことは可能 | 理由や注意点を解説
- 専業主婦ですが親権者になれますか?
- 収入がない場合は難しいでしょうか?
- 今から気をつけることはありますか?
この記事ではこのような疑問、お悩みにお応えします。
専業主婦だからといって親権をもつことは難しいと思っていませんか?その考えの根幹には、おそらく「子供を育てていくにはお金がかかるけど、専業主婦で収入がないから親権者として適任ではない」という考えがあるものと思います。
しかし、後述するように、親権者を決めるにあたって経済力は絶対的な基準ではなく、専業主婦の方でも親権をもつことは十分可能といえます。
今回は、専業主婦の方でも親権をもっている実態やもちやすい理由、親権をもつために今からやっておくべきことについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
親権とは?
まず、親権とは何か簡単に確認しておきましょう。
親権とは、親が未成年者(18歳未満)の子どもに対して監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理する権利義務のことをいい、身上監護権と財産管理権に分かれます。
親権を得るのは母親の方が多い
専業主婦は親権をもつことが難しいのか。この不安を解消するため、次の表をご覧ください。
この表では、2020年から過去5年間、離婚した夫婦のうち、すべての子供(1人~3人)の親権を得た父親と母親の人数を記載しています。この表からもわかるとおり、離婚した夫婦のうち、約8割5分の割合で、母親が親権をもっていることがわかります。
年度 | 総数 | 父が全児の親権者 | 母が全児の親権者 | その他 |
2016 | 125,983 | 15,035 | 106,347 | 4,601 |
2017 | 123,418 | 14,558 | 104,440 | 4,420 |
2018 | 120,497 | 14,330 | 101,862 | 4,305 |
2019 | 118,664 | 14,156 | 100,242 | 4266 |
2020 | 111,335 | 13,126 | 94,291 | 3,918 |
【引用:2020年 厚生労働省 人口動態統計 「親権を行う子をもつ夫妻(夫―妻)別にみた年次離婚件数及び百分率」】
また、次の表は、令和3年(2021年)度中の離婚調停で合意された父親、母親の親権者の数です。これからも母親が親権を得ているケースが多いことがわかります。
総数 | 父が親権者 | 母が親権者 | 定めなし |
19,915 | 1,795(66) | 18,678(37) | 62 |
【引用:令和3年司法統計(家事事件編)「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権 者の定め」をすべき件数―親権者別―全家庭裁判所】
( )は母又は父の監護者の数
専業主婦(母親)が親権を得やすい理由
では、なぜ専業主婦(母親)の方が親権をもつことができているのでしょうか?
今の監護状況、監護実績、監護の継続性があるから
まず、今現在に父親よりも子育てしていて、これまでの子育ての実績も父親より豊富で、離婚後も子供に愛情をもって子育てしていけると考えられるからです。
子供はこれまで主に子育てを担ってきた親の方との情緒的な結びつきが強く、精神的にも依存する傾向があり、子供の成長のためには、その親に親権を渡した方がよいと考えられます。
母子優先の原則が働くから
母性優先の原則とは、子供の福祉の観点から、原則として、子供の親権は母親にもたせるべきとの考えです。
特に、子供が0歳~5歳前後の頃は、一般的に、子供は父親よりも母親と過ごす時間が多く、父親よりも母親の方が子育てに深く関与している傾向にありますから、この年代の子供の親権は母親が得やすいといえます。
経済力は重要?
経済力は、どちらの親が親権をもつか考える上で一つの指標にはなりえますが、絶対的な基準ではありません。夫より経済力が劣っていても親権をもつことはできます。
前述のとおり、親権を決める上で重要視すべきは監護状況や監護実績、監護の継続性です。いくら経済力があっても、これらがないと子供のためにならず、親権をもつことは難しいでしょう。
また、経済力は、今から就職・転職、キャリアップすることでいくらでも身に付けていくことができます。離婚後は養育費や児童手当、児童扶養手当などのお金をしっかり受け取る体制を整えておけば、経済力についてそれほど気にする必要はないでしょう。
専業主婦が親権を獲得するためにやるべきこと
このように、親権では専業主婦が有利とはいえ、必ず親権を獲得できるという補償はありません。そこで、ここでは、専業主婦の方が親権対策としてやっておくべきことについてご紹介していきたいと思います。
証拠を集めておく
一つ目に、以下のような、これまでの監護実績を証明できる証拠を集めておくことです。
- 日記
- 母子手帳
- 保育園・幼稚園の連絡帳
- 子供と一緒に写った動画、写真 など
離婚や親権などの離婚条件に合意できない場合は、離婚調停で話し合うことになります。離婚調停では、調停委員からこれまでの監護実績を証明できる資料の提出を求められるかもしれませんので、そのときに備えて集めておくべきです。
経済力をつける
二つ目に、相手に離婚を切り出す前に、ある程度の経済力をつけておくことです。
前述のとおり、経済力は親権を決める上での絶対的な指標ではありませんが、数ある指標の中の一つであることは間違いありません。
現実に経済力がなければ子育てしていくことは難しいですから、親権を得るためというよりも、ご自分と子供の生活のためにも、就職やキャリアップなどして自力で生活していける力をつけておきましょう。
子育ての環境を整える
三つ目に、子育ての環境を整えておくことです。
離婚後は、あなたが一家の大黒柱として子育てしていかなければいけません。離婚前とは別の意味で体力的、精神的にしんどくなる場面が出てくるかもしれません。
そうしたときに、周りに気兼ねなく相談、頼れる人(親、友人など)や場所(保育園、幼稚園の預かり保育、小学校の学童クラブなど)があると安心です。
離婚後の生活環境も、親権を考える上での重要な指標の一つです。離婚後も生活の基本となる住まいをどうするかも考えなければなりません。
子供と一緒に暮らす
四つ目に、離婚するまで子供と離れて暮らさないことです。
前述のとおり、親権を決める上では今の子育ての状況が重要視されます。いくらこれまでの監護実績が豊富だったとしても、離婚前に子供と離れて暮らし、相手に監護実績を積まれると、相手に親権をもっていかれる可能性があります。
もし、離婚前に別居するにしても、子供と一緒に別居するようにしてください。なお、夫に無断で別居することは未成年者略取罪という犯罪に問われかねませんし、今後の話し合いがこじれることは必須です。別居するのであれば、双方の合意の上で、別居するようにしましょう。
専業主婦でも親権を獲得できないことがある
最後に、一つだけ注意していただきたいことがあります。それは、以下のような親権者としての適格性を疑われるような行動をしないことです。
- 児童虐待(身体的・心理的・性的虐待、ネグレクト)
- 不貞、不倫・浮気
- お金の浪費
こうした親権者としての適格性を疑われるような行為があると、相手に調停等でそれを指摘されてしまい、いくら専業主婦であっても親権を得ることが難しくなってしまいますので注意が必要です。
まとめ
専業主婦だから親権をもつことはできないのではないか、親権をもってはいけないのではないかという心配は不要です。なぜなら、あなたは専業主婦(母親)という時点で、すでに相手よりも有利な立場にあるからです。
もっとも、専業主婦だからといって親権が補償されているわけではありません。離婚を切り出す前に自力で稼いでいける経済力をつける、親権者としての適格性を疑われるような行為をしないなど、必要なことはきっちり行っておきましょう。
投稿者プロフィール

- 離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。
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