• 専業主婦ですが親権者になれますか?
  • 無職の場合は親権をもつことは難しいでしょうか?
  • 今から気をつけることはありますか?

この記事ではこのような疑問、お悩みにお応えします。

あなたは今、「子育てにはお金がかかる」→「お金がない専業主婦は子育てできない」→「親権をもつことはできない(子どもと一緒に生活することはできない)」と考えてはいませんか?

しかし、後述するように、親権を決めるにあたって経済力は絶対的な考慮要素ではなく、専業主婦や無職の方であっても親権をもつことは十分可能です。

今回は、専業主婦(母親)でも親権をもっている実態やもちやすい理由、親権をもつために今からやっておくべきことについて詳しく解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
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専業主婦・無職でも親権をもてる

冒頭でも述べたように、今現在、専業主婦や無職の方であっても親権をもつことは可能です。次の表をご覧ください。

この表に書かれてある数字は、2020年から過去5年間、離婚した夫婦のうち、すべての子ども(1人~3人)の親権を得た父親と母親の数です。この表からもわかるとおり、離婚した夫婦のうちの約85%の夫婦では、母親が親権をもっていることがわかります。

年度総数父が全児の親権者母が全児の親権者その他
2016125,98315,035106,3474,601
2017123,41814,558104,4404,420
2018120,49714,330101,8624,305
2019118,66414,156100,2424266
2020111,33513,12694,2913,918

【引用:2020年 厚生労働省 人口動態統計 「親権を行う子をもつ夫妻(夫―妻)別にみた年次離婚件数及び百分率」

また、次の表は、令和3年(2021年)度中の離婚調停で合意された父親、母親の親権者の数です。この表からも多くの母親が親権を得ていることがわかります。

総数父が親権者母が親権者定めなし
19,9151,795(66)18,678(37)62

【引用:令和3年司法統計(家事事件編)「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をすべき件数―親権者別―全家庭裁判所

( )は母又は父の監護者の数

もちろん、すべての母親が専業主婦・無職とは限りませんが、父親よりも母親が親権をもつことが多いということはいえそうです。

専業主婦(母親)が親権をもてる理由

では、なぜ専業主婦(母親)の方が親権をもつ傾向になるのでしょうか?それは、仮に親権でもめて調停や裁判まで手続きが進んだ場合、次の事情が重要視されるためです。

監護状況・実績、監護の継続性があるから

まず、専業主婦の方は今現在相手よりも子育てしていて、これまでの子育ての実績も相手より豊富で、離婚した後も継続して子育てしていけると判断されるからです。

現に子育てしている状況があり、子育ての実績も豊富ということは、子育ての方法・ノウハウ、子育てに対する意欲をもちあわせていて、離婚した後も安心して子育てを任せることができます。

また、子どもからの信頼も厚く、子どもが困ったときはいつでも気軽に相談できます。子どもとの精神的な結びつきも強いことから、離婚を機に子どもと離れて暮らすことは子どもに悪影響を及ぼす可能性があります。

母性優先の原則が働くから

次に、母性優先の原則が働くからです。

母性優先の原則とは、原則として、母性のある親に親権をもたせるべきとの考えです。特に、子どもが乳幼児(0~2歳前後)の場合は母親が有利といえます。3歳を超えた後も、母親の方が子どもとの触れ合いが多い場合は、母親が親権をもつことが多いでしょう。

もっとも、かつては「母子」優先の原則と言われていたものが、今では「母性」優先の原則と言われるようになった点に注意が必要です。これは父親でも母性を発揮でき、父親に親権をもたせた方がよい場合もあると考えられているためです。

親権で経済力は重要?

経済力は親権でもめたときの一つの考慮要素にはなりえますが、絶対的な要素ではありません

親権でもめた場合に最も重要視されるのは前述した「監護状況や監護実績、監護の継続性」です。いくら経済力があっても、これらが相手よりも劣っていると親権をもつことは難しいでしょう。

今現在相手より経済力がなくても、今から就職や転職、資格取得することなどでいくらでも身につけていくことができます。自力で稼いでいくことが理想ですが、足りない分は養育費のほか児童手当、児童扶養手当などの公的なお金で補うこともできます。

専業主婦が親権を得るためにやるべきこと

このように、専業主婦や無職の方でも親権をもてるとはいえ、必ずしも親権をもてるという補償はありません。そこで、ここでは、専業主婦や無職の方が確実に親権をもつためにやっておいた方がいいことについて解説したいと思います。

証拠を集めておく

まず、次のような、これまでの監護実績を証明できる証拠を集めておくことです。

□ 日記
□ 母子手帳
□ 保育園、幼稚園、学校の連絡帳
□ 子どもと一緒に写った写真、動画 など

もし、相手と親権でもめた場合でもこれらの証拠を集めて有利な立場にあることを主張できれば、相手が折れてあなたが親権をもつことに合意してくれるかもしれません。仮に、調停まで進んだ場合でも、証拠に基づいた説得力のある主張が可能です。

経済力をつける

次に、相手に離婚を切り出す前に、経済力をつけておくことです。

先ほど述べたとおり、経済力は親権でもめたときの絶対的な考慮要素ではありませんが、数ある考慮要素の中の一つであることは間違いありません。経済力がないことに加えて他にマイナスの要素があれば、相手に親権が渡ってしまう可能性もないとはいえません。

また、現実に経済力がなければ子育てしていくこと、離婚した後自力で生活していくことが難しいですから、あなたや子どもの生活を守るという意味でも就職や転職、資格取得するなどして自力で生活していける力をつけておきましょう。

子育ての環境を整える

次に、子育ての環境を整えておくことです。

離婚した後は、あなたが一家の大黒柱として子育てしていかなければいけません。離婚する前とは別の意味で体力的、精神的にしんどくなる場面が出てくるでしょう。

そうしたときに、周りに気兼ねなく相談、頼れる人(親、友人など)や場所(保育園、幼稚園の預かり保育、小学校の学童クラブなど)があると安心です。

離婚した後の生活環境も親権でもめたときの考慮要素の一つです。離婚を決断したら経済力を身につけていくと同時に、離婚した後の住まいも考えておく必要があります。

子どもと一緒に暮らす

次に、離婚するまで子どもと離れて暮らさないことです。

親権でもめたときは今の子育ての状況が重要視されます。いくらこれまでの監護実績が豊富だったとしても、離婚する前に子どもと離れて暮らし相手に監護実績を積まれると、相手に親権が渡ってしまう可能性があります。

もし、離婚する前に別居するにしても、子どもと一緒に別居するようにしてください。もっとも、子どもを連れて相手に無断で別居することは未成年者略取罪という罪に問われかねませんし、別居した後の関係がこじれることは必須です。DVを受けているなどの例外を除き、別居するのであれば双方合意の上で、別居するようにしましょう。

専業主婦でも親権をもてない場合

専業主婦であっても

  • 子どもと離れて暮らしている
  • 子ども(※1)が父親と暮らすことを希望している
  • 親権者として不適格な事情がある(※2)

場合は親権を得ることが難しくなってしまいますので注意が必要です。

※1 個人差はありますが、子どもが10歳を超えると子どもの意思が尊重され、15歳を超えると子どもの意思が優先される傾向です。子どもが0歳~小学校低・中学年までの間は母子優先の原則が働きます。
※2 児童虐待(身体的虐待、精神的虐待、ネグレクト、性的虐待)、不倫、浪費、不健康・精神障害 など

まとめ

今回のまとめです。

  • 専業主婦・無職の方でも親権をもてる
  • 親権を決める上で経済力は絶対的な基準ではない
  • 相手に離婚を切り出す前に対策をとっておく
  • 専業主婦でも親権をもてないケースに注意する