親権の決め方 | 話がまとまらないときの判断基準や対処法を解説

  • 親権はどうやって決めたらいいですか?
  • 迷ったときの判断基準はありますか?
  • お互いに親権を譲らないときはどうすればいいですか?

この記事はこのような疑問、悩みにお応えします。

親権は数ある離婚条件の中でも、配偶者ともめやすい離婚条件の一つです。ただ、現在の法制度上、夫婦のどちらが親権を取得するか話がまとまらなければ、離婚することはできません。

そのため、親権をどうやって決めればよいか、どのような判断基準をもって決めればよいか、話がまとまらない場合はどうすればよいのか、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

今回は、こうした親権の決め方について解説していきたいと思います。

親権とは

親権とは、親が未成年者(18歳未満)の子どもに対して監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理する権利義務のことです。親権は身上監護権(監護権)と財産管理権に分かれます。

親権の決め方

親権は、①話し合い(協議)➡②調停➡③審判or裁判の手順で決めます。

①話し合い(協議)

まずは、夫婦でどちらが親権をもつか話し合って決めます

現在の法制度上、婚姻中は共同親権ですが、離婚後は単独親権です。一人の子供につき、親権者を一人決めなければいけません。

もっとも、子供が複数いる場合、どちらかの親に子供全員の親権を取得させることが通常ですが、たとえば、子供が2人いる場合、一人の子供の親権者を夫に、もう一人の子供の親権者を妻とすることも可能です。

配偶者と親権でもめた場合は、後述する判断基準を参考にしながらもう一度話し合ってみましょう。

親権について合意できたら、養育費や面会交流、財産分与のことなど他の離婚条件についても話し合い、話がまとまったら公正証書を作成します。

②調停

話し合いで親権者を決めることができない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))を申し立てることができます。

調停では、調停委員という第三者が夫婦の間に入り、夫婦の双方から話を聴いて話をまとめていきます。

調停では、これまであなたが子育てに関わってきたこと、子供があなたと暮らすことを望んでいることを、いかに調停委員に理解させることができるかが親権を獲得するためのポイントです。

調停では親権以外にも合意できなかった事項(婚姻費用、養育費、財産分与など)があれば、話し合うことができます。

親権などについて合意できた場合は調停が成立し、調停調書という書面が作成されます。調停調書は公正証書と同様に強制力があります。

③審判or裁判

一方、相手が調停に出席しない場合、出席はするものの親権などについて合意できない場合などは調停不成立です。調停不成立となった場合は、次の2つのケースで対応がわかれます。

離婚合意できなかった場合

まず、離婚することについて合意できなかった場合は、

再度、話し合う(協議する)

離婚裁判を提起する

のいずれかの方法をとることが考えられます。

調停不成立となったからといって、必ず離婚裁判を提起しなければならないというわけではありません。話し合いができる状況であれば、調停中、調停後を問わず、直接の話し合いは可能です。

また、調停の申し立て回数に制限はありませんから、再度、調停を申し立てることもできます。もっとも、不成立直後に申し立てても、裁判所が申し立てそのものを受け付けてくれない可能性があります。調停の申し立てを検討する場合は、不成立から一定期間間を置いた方がよいです。

話し合いや調停による解決が難しい場合は、離婚裁判を提起します。

離婚合意はできた場合

一方、離婚には合意できるものの、親権などの離婚条件に合意できない場合は、裁判所の判断で「調停に代わる審判」に移行することがあります(㋐)。審判では、裁判官が親権者(やその他の離婚条件)を決めます。

もっとも、この審判に対しては、結果を受けた日の翌日から2週間以内に異議申し立てをすることができます。そして、適法な異議の申し立てがあった場合は審判の効力が失われてしまいます。

もともと、当事者は、離婚条件に不服があったからこそ調停不成立となったわけですから、仮に審判に移行したとしても、当事者から異議を申し立てられることは十分に予想されます。そのため、調停に代わる審判はあまり活用されてはいないのが実情です。

その他、先に離婚を成立させ、親権のみ別の審判で決めてもらうという方法もあります(㋑)。ただ、この方法では、離婚成立から親権者が決まるまでにタイムラグがあり、子供にとって好ましくないという意見もあります。

㋐、㋑の方法による解決が難しい場合は、離婚裁判を提起するほかありません。

親権を決める際に考慮すべき9つの事情

親権は子供のためにあるものですから、親権者は子供の親権者になることがふさわしい人、すなわち、親権者の適格性がある人がならなければいけません。

そして、親権者の適格性があるかどうかは、子供の利益を最優先に考えて決める必要があります。民法という法律でも、親権を決める際は「子の利益を最も優先して考慮しなければならない(民法766条1項)」、親権者は「子の利益のために子の監護及び教育する権利を有し、義務を負う」(民法820条)と規定しています。

具体的には以下にあげる事情を考慮して決める必要があります。

現在の監護状況、監護実績、監護の継続性

まず、今現在、子供がどちらの親と生活しているか、これまで主として夫婦のいずれが子育てに関与してきたかです。

主に子育てを担当している親の方が、子供と精神的・情緒的な結びつきが強い傾向にあります。また、子育てに不慣れな親に、離婚後子育てを担当させることは子供にとっても不利益といえます。

これまで主に子育てに関わってきた親を急に変えることは、子供にとって好ましいことではありません。できる限り、今の監護状況を変えない方が子供の利益になります。

母性優先の原則

母性優先の原則とは、子供の福祉の観点から、原則として、子供の親権は母親に持たせるべきとの考えです。

特に、子供が乳幼児(0歳~5歳)のときは、通常、父親よりも母親の方が子育てに関与する時間は多いと思いますから、前述した監護の継続性の観点からみても、母親に親権を持たせた方が子供にとって利益といえます(※)。

※もっとも、母性優先の原則が通用するのは、母親が子供に愛情をもって子育てしてきたことが前提です。虐待や育児放棄など、親権者として適任とはいえない場合は父親に親権が渡ることも十分に考えられます。

離婚後の生活環境

次に、離婚後、子供が安心して生活できる環境かどうかです。

子供が保育園や幼稚園、学校に通っている場合は、今の生活環境を変えないことが理想です。今の家を出ていき、やむを得ず転園、転校せざるをえない場合は、子供が新しい住居地で安心して住み続けることができるかどうかが問われます。

周囲のサポート体制

次に、子育てに関する周囲のサポート体制が整っているかどうかです。

すでに実感されている方も多いと思いますが、子育ては一人でできるものではありません。身近な人であれば自分の親、兄弟姉妹などの親族の援助、第三者であれば信頼できる友人、保育園・幼稚園・学校・学童クラブなどの担任の先生など、いざというときに周囲に頼れる人や支援体制が整っているかも重要なポイントです。

心身の健康状態

次に、親自身の心身の健康状態です。

子育ては肉体的にも精神的にもとても労力を必要としますよね。離婚後は、新しいパートナーを見つけるまでは、一人で子育てしていかなければいけませんから、心身共に健康であることが求められます。

※今現在支障がある場合は、回復の見込みがあることをアピールできるよう、回復に向けてきちんと取り組んでおくことが必要です。

経済力

次に、経済力です。

子育てしていくにはお金がかかりますから、経済力も親権者も適格性を判断する上で一つの考慮事情にはなりえます。ただ、経済力が低くても、現在の監護状況や監護実績などを考慮すると、親権者として適任と考えられるケースは多くあります。その意味で、経済力は親権を決める上での重要な指標ではありません。

子供の意向

次に、子供の意向です。

15歳以上の場合、審判では子供の意見を聞かなければならず、調停でも子供の意向を十分考慮する必要があるとされています。また、子供によって個人差はあるものの、子供が15歳未満でも、10歳前後であれば自分の意思を表明できるとして、子供の意向を確認することとしています。

面会交流への寛容性

次に、親権者となる親(監護親)が、非監護親の面会交流を拒否せず、条件面でも柔軟な姿勢を示しているかどうかです。このような親に親権者としての適格性を認めることを「フレンドリーペアレントルール」といいます。

面会交流は子供の健全な育成のためにも重要なイベントですので、面会交流に寛容であることは、親権者としての適格性の評価にも影響を及ぼすことがあります。

兄弟姉妹の不分離の原則

最後に、兄弟姉妹の不分離の原則とは、子供が複数いる場合、子供は同一の親の元で監護すべきという考え方です。

兄弟姉妹は、精神面・情緒面でつながりが強く、離婚を機に兄弟姉妹を分離すると子供の精神面に大きなダメージを残しかねないからです。このようなことから、一方の親が全ての子供の親権をもつことが一般的です。

もっとも、長年にわたり、別々に暮らしてきたため、精神面・情緒面でのつながりが薄い、ないという場合は、分離することも考えてみてもよいでしょう。

親権の決め方Q&A

最後に、親権を決める際に、多くの方が思い浮かぶ疑問についてお答えします。

専業主婦でも親権をもつことはできますか?

専業主婦でも親権をもつことはできます

前述のとおり、親権を決める際に最も重要視されるべきなのは現在の監護状況やこれまでの監護実績、監護の継続性です。現に子育てしており、これまでの子育ての実績十分で、これからも継続して子育てしていけるのであれば親権をとることは可能です。

ネックとなる収入面については、就職や資格取得するなどして自力で稼いでいける力を身に付け、同時に離婚前に養育費などの取り決めをきちんと行っておくことでカバーできるようにしておきましょう。

父親でも親権をもつことはできますか?

父親でも親権をもつことはできます

現在の監護状況やこれまでの監護実績、監護の継続性からみて、父親が親権を得ることがふさわしいとの判断であれば父親が親権をとるべきです。また、母親に虐待や育児放棄など、親権者としてふさわしくない形跡がある場合も同様です。

母親と異なり、離婚後もこれまでの仕事を継続される方が多いと思いますから、離婚後の生活環境や周囲のサポート体制もしっかり確保しておくことが大切です。

離婚原因が自分にある場合は親権を得ることは難しいですか?

いいえ、そんなことはありません。

自ら離婚原因を作ったとしても、それが直ちに親権者としてふさわしくないという評価には結びつくわけではなく、子供の利益になるのであれば親権を得ることは可能です。

もっとも、子供への虐待はもちろん、配偶者への虐待など、子供の成長に大きなマイナスの影響を与えかねないことが原因で離婚に至った場合は、親権を得ることは難しいといえます。

まとめ

親権は、まずは話し合い、話し合いで決めることができない場合は調停、調停で決めることができない場合は審判、あるいは裁判で決めることになります。親権を決める際は、子供の利益を最優先に考え、夫婦のどちらが親権をもつことが適当かを判断して決める必要があります。

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。