• 親権はどうやって決めたらいいですか?
  • 決めるときの判断基準はありますか?
  • 親権でもめたときはどうすればいいですか?

この記事はこのような疑問、悩みにお応えします。

親権は数ある離婚条件の中でも相手ともめやすい離婚条件の一つです。ただ、現在の日本の法制度上は、離婚後は夫婦のどちらかが親権をもち(単独親権制)、かつ、離婚前に夫婦のどちらが親権をもつかを決めなければ離婚できないことになっています。そのため、いったん親権でもめると離婚するまでに時間がかかったり、離婚そのものが成立しない可能性もあります。

そこで、今回は、できる限り親権でもめないための親権の決め方や親権でもめたときの対処法などについて詳しく解説していきたいと思います。今後の参考にしていただけると幸いです。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
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親権の決め方①~話し合い

親権のみならず養育費、面会交流などの離婚条件については、まずは夫婦で話し合うことからスタートです。

ただ、話し合いを円滑に、有利に進めていくためには、相手に話し合いを切り出す前の事前準備がとても大切です。事前準備が十分でないまま相手に話し合いを切り出すと、話し合いが長期化して離婚までに時間がかかったり、曖昧な離婚条件のまま離婚してしまい離婚後にトラブルとなる可能性があるため注意が必要です。

親権の話し合いでの参考事項

相手に離婚を切り出した後、親権でもめずに話し合うには、次のことを頭に入れておくとよいかもしれません。

母親が親権をもつことが多い

まず、親権は母親がもつ(取る)ことが多いということです。

厚生労働省の調査結果によると、離婚した夫婦の約8割以上の夫婦では母親が親権をもっていることがわかっていますし、裁判所の調査結果でも、調停離婚した夫婦の約9割以上の夫婦では母親が親権を取っていることがわかっています。

仮に、妻が親権をもつことに反対して調停まで手続きを進めたとしても結局は妻が親権を取ることが多い、ということを頭に入れながら、話し合いで離婚を成立させるのか調停以降で離婚を成立させるのか、どちらが得策なのか考えた方がよいかもしれません。

面会交流を実施する

次に、面会交流を実施する(認める)ことです。

相手(特に、夫)が親権に固執しているのは、あなたに親権をもっていかれることで「子どもと会えない」などと考えているからかもしれません。しかし、面会交流を実施することでこうした不安が少しは解消され、親権でもめずに済むかもしれません。

相手に対する不満や怒りの感情から「親権は渡さない」、「面会交流も認めない」という気持ちになることもわかります。ただ、子どもに関わることだけは、個人的な感情はいったん横に置いておき、子どもの立場に立って決めていくという心構えでいることが大切です。

お金をきちんと払うことに合意する

次に、養育費や未払いの婚姻費用、慰謝料などのお金きちんと払うことに合意することです。

お金を払わないなら面会交流は認めないなどと、お金と面会交流を交換条件にすることはできませんが、それでもやはり親権をもつ相手がお金と面会交流とを交換条件にしたくなる気持ちも理解できなくもありません。

もし、相手に面会交流を認めて欲しいと思うのであれば、できる限り相手の希望に沿う形でお金を払っていくことに合意し、公正証書の作成にも協力して相手が抱いているお金の未払いに対する不安を少しでも解消することが大切です。

親権をわけることができる

次に、長男の親権は夫がもち、長女の親権は妻がもつ、というように親権をわけることができることです。

もっとも、兄弟姉妹は一緒に育てる方がいいという考え方もありますので(兄弟姉妹不分離の原則)、親権でもめているからといって安易に親権をわける方法を選択しない方がよいでしょう。

仮に、親権をわける場合でも、自分が親権者とならなかった子どもに対しては扶養義務が残るため、養育費の支払いはどうするのか、親と子、離れて暮らす子ども交流をどう図っていくかもきちんと決めておく必要があります。

親権と監護権をわけることができる

次に、親権は夫がもち、監護権は妻がもつ、というように親権と監護権をわけることができることです。

もっとも、親権と監護権をわけることにはデメリットもあり、デメリットをよく把握しないまま安易にわけてしまうと将来トラブルとなる可能性があります。

親権と監護権をわけるのは、どうしても親権で決着をつけることができない最終手段と考え、仮にわけることを検討する場合でもデメリットをよく把握しておくことが大切です。

親権者を変更することに合意できる

次に、将来親権者を変更することについてあらかじめ合意ができることです。

もっとも、実際には夫婦の合意だけで親権者を変更することはできず、家庭裁判所に対して親権者変更の調停を申し立て、家庭裁判所に親権者を変更することを認めてもらう必要があります。

親権者を変更することについて調停が必要であるにもかかわらずあらかじめ夫婦で合意しておくのは、調停のときに一つの考慮事情としてくんでもらい親権者変更を認めてもらいやすくするためです。

親権の決め方②~調停など

そもそも、夫婦で話し合うことができない、話し合っても話がまとまらない、という場合は離婚調停を申し立てることも検討する必要があります。ここでは調停以降、どのような手続きで進んでいくのかについて解説します。

調停

調停は、調停委員という第三者が夫婦の間に入り話をまとめていく、一定のルールに従って手続きを進めていく必要がある、という点が話し合い(協議)と大きく異なります。

調停以降の手続きでは、あとで述べる「親権を決めるときに考慮される事情」をいかに調停委員や裁判官にアピールできるかが、親権を獲得する上で重要になります。

裁判など

相手が調停に出席しない場合、出席はするものの親権などについて合意できない場合は調停不成立となって離婚は成立しません。もちろん、親権についても何も決まっていません。

調停不成立となった場合は「再度話し合う(再協議する)」、「調停に代わる審判に移行する」、「離婚裁判を提起する」の3つの選択肢があります。都合のよい方法を選択しましょう。

親権を決めるときに考慮される事情

調停以降の手続きに進むということは親権でもめているというケースも少なくないでしょう。ここでは、仮に、調停以降の手続きに進んだ場合に、裁判所がどのような事情を考慮して親権者を決めるのか、その考慮事情について解説していきます。

現在の監護状況、監護実績

まず、今現在どちらの親が子どもと生活しているか、これまで主にどちらの親が子どもと触れ合ってきたかです。

今の生活環境を急に変えることは子どもにとって大きな負担となりますから、今の生活環境を維持した方が子どものためになります。また、子どもとの触れ合いが多い親の方が子どもからの信頼も厚く、子どもとの精神的な結びつきが強い傾向にあります。離婚を機にこうした親と離れ離れにすることは子どもにとって一番よくないことであるため、現在の監護状況や監護実績は最も重要視されます

母性優先の原則

母性優先の原則とは、原則として母性のある親に親権をもたせるべきとの考えです。

かつては「母子」優先の原則と言われていましたが、父親でも母親的な役割を果たせることから「母性」優先の原則と言われるようになっています。乳幼児について母親が有利ですが、乳幼児以外の子どもについてはどちらに母性があるかをみられます。

離婚後の生活環境

次に、子どもが安心して生活できる環境が整っているかどうかです。

特に、子どもが幼い間は子どもを一人で見るのは体力的にも精神的にも難しいでしょう。そのため、周囲にどれだけ頼れる人がいるか、頼れる環境が整っているかをみられます。

心身の健康状態

次に、親の心身の健康状態です。

子育てしていくには親自身が心身ともに健康でなければいけません。病気がち、精神障害をかかえている、酒や薬物、ギャンブル依存症、浪費癖といった事情はマイナス要素として働いてしまいます。

経済力

次に、経済力です。

子育てしていくにはお金がかかりますから、経済力も考慮事情の一つです。ただ、今現在経済力がなくても、これから経済力を身につけていくことはできますし、養育費や公的支援で経済力を補うこともできますので、それほど重要視されるわけではありません。

子どもの意向

次に、子どもの意向です。

子どもが15歳以上の場合、審判では子どもの意見を聞かなければならず、調停でも子どもの意向を十分考慮する必要があるとされています。また、子どもが10歳前後であれば子どもの意向を確認するとされており、子どもの意向が結果に反映される可能性があります。

面会交流への寛容性

次に、親権者となる親(監護親)が、非監護親の面会交流を拒否せず、条件面でも柔軟な姿勢を示しているかどうかです。

面会交流は子どもの健全な成長のためにも重要なイベントと考えられていますので、面会交流に寛容であることは、親権者としての適格性の評価にもいい影響を及ぼすことがあります。

兄弟姉妹の不分離の原則

兄弟姉妹の不分離の原則とは、子どもが複数いる場合は、原則として子どもは同じ親の元で生活するべきという考え方です。

兄弟・姉妹間の仲がいい場合、離婚を機に兄弟姉妹を離れ離れにしてしまうと子どもに悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。そのため、調停以降の手続きでは、親権をわけることはあまり行われていないようです。

まとめ

今回のまとめです。

  • 親権を決めなければ離婚が成立しない
  • 親権はまずは話し合いで決める
  • 話し合いでもめないための対策を考えておく
  • 話し合いができない、話がまとまらない場合は調停を検討する
  • 調停以降の手続きでは「現在の監護状況」、「監護実績」が最も重要視される