離婚後の苗字(姓)、戸籍はどうなりますか?子供についても解説

  • 離婚後の苗字はもとに戻すべきでしょうか?
  • 元に戻すメリット・デメリットは何でしょうか?
  • 戸籍はどうなりますか?
  • 子供の苗字、戸籍はどうなりますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

結婚したときに相手の苗字に変えた方は、離婚のときに次のいずれかの選択をする必要があります。

  • 元の苗字(旧姓)に戻す
  • 今の苗字を使い続ける

離婚した後、相手と同じ苗字を使い続けるには抵抗がある。そんな想いから、元の苗字に戻す方は少なくありません。一方で、元の苗字に戻した方がいいのか、今の苗字を使い続けるべきなのか迷われている方も多いのではないでしょうか?

そこで、今回は、はじめに、元の苗字に戻すメリット、デメリット、今の苗字を使い続けるメリット、デメリットをおさらいした上で、ご紹介した上で、元の苗字に戻す手続き、今の苗字を使い続ける手続きなどについて解説します。記事の後半では、子供の苗字・戸籍についても解説していますので、ぜひ今後の参考にしていただけると幸いです。

元の苗字に戻すメリット・デメリット

それでは、さっそく、元の苗字に戻すメリット、デメリットからみていきましょう。

メリット

まず、メリットは、相手の苗字を名乗らなくてよいことでしょう。また、法的にも心理的にも相手との関係を断ち切ることができ、心機一転、新たな人生を歩むことができます。手続き的には離婚届に記入するだけで済みますので簡単です。

デメリット

一方、デメリットは、運転免許証などの氏名変更をはじめとした離婚後の手続きが大変なことです。また、元の苗字に戻すことで離婚したことが周囲に伝わってしまいます。周囲の目や世間体を気にする方にとってはデメリットといえます。

今の苗字を使い続けるメリット・デメリット

次に、今の苗字を使い続けるメリット・デメリットをみていきましょう。

メリット

まず、メリットは、今の氏名の効力を離婚後も活かすことができることです。たとえば、仕事で「鈴木花子=あなた」として社会的に認知されてきた、実績を積んできたという場合は、今の苗字を使い続けることでこれまで通り仕事を継続でき、実績を積み続けることができます。また、運転免許証などの氏名変更などの手続が不要、離婚したことが周囲に伝わりづらいこともメリットといえます。

デメリット

一方、デメリットは、離婚した相手の苗字を名乗らなければならないことです。特に、円満離婚でない場合は今の苗字を使い続けることに抵抗を感じる方も少なくないのではないでしょうか?精神面でリセットしづらいこともデメリットといえます。なお、仮に再婚して、再婚相手の苗字に変えた後、再度離婚した場合、当然には前婚前(鈴木)の苗字に戻すことができませんので注意が必要です(※)。

※(前婚前)鈴木→(前婚時)田中→(離婚時)田中→(再婚時)高橋→(再婚後離婚時)→原則、鈴木に戻れない(田中にしか戻れない)

元の苗字に戻す手続きと戸籍

元の苗字に戻る場合は、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」の欄で

①「もとの戸籍にもどる」
②「新しい戸籍をつくる」(※)

のいずれかを選択する必要があります。

①を選択する場合は、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」の欄の「□もとの戸籍にもどる」にチェックを入れます。また、離婚届の「本籍地」の欄には婚姻前の本籍地を記入し、「筆頭者の氏名」の欄には婚姻前の戸籍の筆頭者の氏名(親の戸籍に戻る場合は父母いずれかの氏名)を記入します。

一方、②を選択する場合は、離婚届の「□新しい戸籍をつくる」にチェックを入れます。また、離婚届の「本籍地」の欄に新しい本籍地を記入し、「筆頭者の氏名」の欄には戸籍の筆頭者となるご自分の氏名を記入します。

いずれの場合も、あなたの戸籍は婚姻時の戸籍から抜けます。これを除籍といいます。除籍された場合、婚姻時の戸籍からあなたの氏名等が削除されるのではなく、氏名等の横に「除籍」の文字が印字されます。

新しい戸籍は自由に設定できます。ただ、離婚後も各種手続きにおいて戸籍謄本等を取り寄せる場合のことを考えると、離婚後の住所地など申請しやすい場所に設定した方がよいです。
※新しい戸籍を作る場合は今の苗字を使い続ける選択も可能です(「□新しい戸籍を作る」へのチェックは不要です)。今の苗字を使い続ける場合は後述する「離婚の際に称していた氏を称する届」が必要です。

通称を使う選択肢も

戸籍などの公的な文書の上では元の苗字に戻したいけど、日常生活では今の苗字を使いたい、という場合は、元の苗字に戻す手続きをとった上で、今の苗字を「通称」として使う方法があります。

もっとも、子供が通う学校に提出する文書などの公的な文書には戸籍上の苗字を書かなければならないなど、ケースバイケースで戸籍上の苗字と通称との使い訳が必要となることは理解しておきましょう。

今の苗字を使い続ける手続きと戸籍

一方、今の苗字を使い続ける場合は、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」の欄に何も記入する必要はありません

ただ、この場合、役所に「離婚の際に称していた氏を称する届」という書面(以下、「届出」といいます)を提出する必要があります(※)。期限は離婚の日から3か月以内ですが、離婚届と同時に提出することも可能です。

自治体によっては書式をネット上にアップしています。書式は全国共通ですから、お住いに関係なく、どの自治体の書式をダウンロードして使っても問題ありません。

届出の本籍に関する欄の書き方は、届出を離婚届と同時に提出するか、離婚届を提出した後に提出するかで異なってきます。わからない場合は自治体の担当者に問い合わせするようにしてください。

届出を離婚届と同時に提出する場合は、新しい戸籍を作る必要があります(婚姻前との苗字が異なることから、婚姻前の戸籍に戻ることはできません)。

※本籍地以外の役所に提出する場合は戸籍謄本が必要です。

離婚後も苗字を変更することはできる?

離婚時に今の苗字を使い続けることを選択したものの、やはり元の苗字に戻したいという場合が出てくるかもしれません。では、そのような場合、元の苗字に戻すことはできるのでしょうか?

この点については、自分の意思だけで元の苗字に戻すことはできない、というのが結論です(戸籍法107条1項参照)。もっとも、家庭裁判所に対して苗字変更の申立てを行い、裁判所が苗字を変更することについて「やむを得ない事情」があると認め、苗字を変更することにつき許可を得れば変更できます。

参照:氏の変更許可 | 裁判所

子供の苗字、戸籍はどうなる?

ここまでは、離婚後、あなたの苗字をどうすればいいのか、どうなるか、戸籍がどうなるかについて解説してきました。では、離婚に伴いお子さんの苗字、戸籍はどうなるのかご存知でしょか?最後に、離婚後の子供の苗字、戸籍やについて解説したいと思います。

苗字、戸籍は変更されない

まず、離婚しても、離婚後あなたが子供の親権者となって一緒に暮らすことになったとしても、手続きをとらない限り、子供の苗字、戸籍は変わりません。あなた(田中花子)が元の苗字(鈴木)に戻るのか戻らないのか、元の戸籍に戻るのか新しい戸籍に作るのかは関係ありません。

【離婚前の苗字・戸籍】
筆頭者(夫):田中太郎
妻     :田中花子 
子     :田中一郎

以下、イメージしやすいように、あなたがとりうる選択肢別に詳しく解説します。

①元の苗字・戸籍に戻る場合

まず、あなた(田中花子)が元の苗字(鈴木)・戸籍(自分の親の戸籍)に戻る場合のあなたと子供(田中一郎)の戸籍は次のようになります。

【離婚後の苗字・戸籍】(あなた)
筆頭者(父):鈴木次郎
子     :鈴木花子

【離婚後の苗字・戸籍】(子供)
筆頭者   :田中太郎
子     :田中一郎

このように、手続きをとらない限り、子供との苗字と戸籍は別々になります。子供は相手を筆頭者とする戸籍に入ったままです。あなたが子供の親権を得て、子供と一緒に暮らす場合でも同様です。

②元の苗字に戻り、新しく戸籍を作る場合

次に、元の苗字に戻る一方で、新しく戸籍を作る場合は次のようになります。

【離婚後の苗字・戸籍】(あなた)
筆頭者   :鈴木花子

【離婚後の苗字・戸籍】(子供)
筆頭者   :田中太郎
子     :田中一郎

新しく戸籍を作る場合はあなたが戸籍の筆頭者になりますが、子供の戸籍は相手の戸籍に入ったままです。

③今の苗字を使い続け、新しく戸籍を作る場合

次に、今の苗字を使い続け、新しく戸籍を作る場合は次のようになります(今の苗字を使い続ける場合は、新しく戸籍を作る必要があります)。

【離婚後の苗字・戸籍】(あなた)
筆頭者   :田中花子

【離婚後の苗字・戸籍】(子供)
筆頭者   :田中太郎
子     :田中一郎

今の苗字を使い続ける場合は苗字は子供と同じですが、戸籍は別々のままです。

変更するには手続きが必要

子供の苗字と戸籍を変更するには、次の手続きを踏む必要があります。

【STEP1】新しい戸籍を作る

【STEP2】「子の氏の変更許可」を申し立てる

許可=子供の苗字が変更される

家庭裁判所から「審判書謄本」が自宅に郵送される

【STEP3】入籍届と審判書謄本を役所に提出

子供の戸籍があなたの戸籍に入る

【STEP1】新しい戸籍を作る

まず、離婚届の「離婚前の氏にもどる者の本籍」で「□新しい戸籍をつくる」にチェックを入れ、新しい戸籍を作る必要があります。今の苗字を使い続ける場合はもちろん、元の苗字に戻る場合も新しい戸籍を作る必要があります

これは、元の戸籍に戻る場合、親の戸籍に入ることが多いと思います(①を参照)が、次のようなあなたと子供という二世代が同じ戸籍に入るという戸籍を作ることができないからです。

【離婚後の苗字・戸籍】
筆頭者(父):鈴木次郎
子     :鈴木花子 
子     :鈴木一郎
     ↓
このような戸籍は作れない(×)

【STEP2】「子の氏の変更許可」を申し立てる

次に、子供の苗字を変更するには家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可」を申し立て、裁判所の許可を得る必要があります。

子の氏の変更許可の申し立て方法
●申立人
子ども(子どもが15歳未満の場合は法定代理人(親権者など))
●申立先
子どもの住所地を管轄する家庭裁判所(※子どもが複数いる場合は、そのうち一人の子供の住所地を管轄する家庭裁判所)
参考:裁判所の管轄区域 | 裁判所
●申立てに必要な費用
□ 800円の収入印紙(子供一人につき)※申立書に貼付します
□ 郵便切手代 ※申立先の家庭裁判所に問い合わせてください
●申立てに必要な書類
□ 申立書(15歳未満用/15歳以上用)
□ 子どもの戸籍謄本
□ 父・母の戸籍謄本(※離婚の記載のあるもの)
※離婚成立後に、婚姻時の戸籍(除籍)謄本を取得すれば1通で足ります。
●申立て方法
申立書等を直接持参又は郵送

参照:子の氏の変更許可 | 裁判所

申し立て後は、稀に書面で回答を求められたり、裁判所に出廷して聴き取りに応じなければならないこともあります。結果(審判内容)は申立て当日に出されることもあれば、申し立てから5日程度かかることもあります。

結果は家庭裁判所から自宅に送られてくる「審判書謄本」という書面でわかります。万が一、不許可だった場合は、審判書謄本を受け取った日から2週間以内であれば不服を申し立てることができます。一方、許可の場合は、子供の苗字が変更されたことになります。

【STEP3】入籍届と審判書謄本を役所に提出する

次に、子供の戸籍をあなたの戸籍に入れるには、役所で入籍届を行う必要があります。一つの戸籍に異なる苗字の人を入れることができないため、子供の戸籍をあなたの戸籍に入れるには、まず子供の苗字を変更する手続きが必要だったのです。なお、子供の苗字だけ変更しておいて戸籍はそのままにしておく、すなわち、あなたの戸籍には入れないことももちろん可能です。

入籍届の方法
●届出先の役所
子どもの本籍地又は届出人の所在地のある役所
●届出(受付)日時
届出される役所のホームーページでご確認ください
●提出する人
届出人又はその代わりの方(使者)
●届出に必要なもの
□ 入籍届
□ 審判書謄本
□ 印鑑
□ 戸籍謄本(本籍地以外に提出する場合)

参照:入籍届 | 江戸川区

まとめ

離婚後、元の苗字に戻るか今の苗字を使い続けるかは、それぞれのメリット、デメリットを踏まえた上で判断しましょう。また、手続きも異なりますので、しっかり確認しておいてください。
子どもの苗字や戸籍は離婚したからといって、当然に、あなたの苗字に変わるわけではありません。子どもの苗字、戸籍を変更したい場合は一定の手続きが必要です。どんな手続きが必要なのかもあらかじめ把握しておきましょう。

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。