• 離婚後に相手に住所を知られたくありません
  • どうすれば知られないで済みますか?
  • 何か対策はありますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

離婚した後は、相手と顔を合わせたくない、会いたくない、相手との縁を切りたいという思いから、離婚後に相手に住所を知られたくない、知られないで済むにはどうしたらいいか、という疑問、悩みをお持ちの方は多いです。特に、相手のDVやストーカーで悩んでいる人にとっては切実な悩みになっているのではないでしょうか?

そこで、今回は、離婚後に相手に住所を知られたくないという場合にとることができる方法や事前の対策について詳しく解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
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離婚後に住所を知られないための方法

離婚後に相手に住所を知られないための最善の対策は、当然のことながら、相手が知っている住所に引っ越さないことです。

離婚後の住所として実家を選択肢にあげる方もおられると思いますが、通常、相手は実家の住所を知っていると思いますから、実家は離婚後の住所の選択肢から外し、その他の住まいを検討しなければいけません。

また、相手が知らない住所に引っ越したとしても、相手の生活圏内に引っ越したのでは相手に見つかり、追跡されて住所を把握されてしまう可能性もないとはいえません。万全を期すためには、相手の生活圏内からは遠い住所へ引っ越す必要があります。

離婚後に住所を知られないための対策

離婚後に相手に住所を知られないためには、

  • 相手の知らない住所に引っ越す
  • 相手の生活圏から程遠い住所に引っ越す

といった対策をとった上で、さらに次の対策をとっておく必要があります。

離婚後の戸籍の本籍地と住所は別にする

まず、離婚後の戸籍の本籍地と住所は別にすることです。

婚姻時に苗字を変え、相手を筆頭者とする戸籍に入った方(女性が多い)の戸籍は、離婚が成立した後、相手の戸籍から抜けます(苗字を変えるか、変えないかは選択できます)。

ただ、このとき、相手の戸籍には離婚後にあなたが設定した本籍地が記録されるため、仮に「離婚後の本籍地=離婚後の住所」としてしまうと、相手が自分の戸籍をみることであなたが設定した離婚後の住所を把握できてしまいます。これが、離婚後の戸籍の本籍地と住所は別にすることをおすすめする理由です。

①離婚によって「身分事項」に「離婚」が追加されます
②相手の戸籍から抜ける方(山田(鈴木)花子)には「除籍」と表示されます
③離婚後に設定した本籍地が記録されます。「離婚後の本籍地=離婚後の住所」としてしまうと、相手(山田太郎)に離婚後の住所が知られてしまう可能性があります。

相手の戸籍から抜ける方は、離婚届で「①もとの戸籍にもどる」か「②新しい戸籍をつくる」かを選択しなければいけませんが、①の戸籍の本籍地が親の住所の場合は①は選択できないかと思います。②の場合は自由に本籍地を設定できます。その際、「離婚後の本籍地=離婚後の住所」とならないよう注意が必要です。

一方、あなたが婚姻時(離婚前)の戸籍の筆頭者である場合、あなたが新しい戸籍(本籍地)を作らない(転籍しない)限り、相手に離婚後の住所を知られてしまう可能性があります。戸籍には住所を記録する附票(※)が添付されており、相手は「戸籍に記載されていた人」という立場であなたの婚姻時の戸籍をみることができるからです。

※住所の異動歴が記録された書類

離婚届を出した後に住所を異動させる

次に、役所に離婚届を出した後に住所を異動させる(住民票上の住所変更をする)ことです。

離婚後の戸籍は役所に離婚届を出した後に作成されます。離婚届を出す前に住所を異動させてしまうと、婚姻時の戸籍の附票に異動後の住所が記録されてしまい、相手は婚姻時の戸籍をみることであなたが異動させた後の住所を把握できてしまいます。

こうした事態を避けるには、役所に離婚届を出した後に住所を異動させる必要があります。住民票の住所の異動届には「転出届」、「転居届」、「転入届」があります。それぞれの手続き、離婚後の手続きについては、以下の関連記事で詳しく解説しています。

子どもの戸籍を自分の戸籍に入れる

次に、離婚後子ども一緒に生活する場合に忘れてはいけないのが、あなたの戸籍に子ども戸籍を入れることです。

婚姻時に相手を筆頭者とする戸籍に入っていた場合、離婚後、あなたの戸籍は相手の戸籍から抜けますが、子どもの戸籍は相手の戸籍にあ入ったままです。

子どもの戸籍を相手の戸籍に入れたままにしておくと、相手の戸籍の附票に子どもの住所が記録されますから、相手が自分の戸籍を見ることであなたの住所も把握できてしまいます。

あなたの戸籍に子どもの戸籍を入れるには、離婚届で「②新しい戸籍をつくる」ことを選択した後、子どもの苗字を変更する手続きをとることからはじめなければいけません。詳しくは以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

戸籍の附票等の閲覧等の制限措置をかける

次に、子どもと住所を同じくしている場合で、かつ、以下の①から④のいずれかに該当する場合は、戸籍の附票等の閲覧等の制限措置(以下「制限措置」といいます。)をかけることです。

なぜ、子どもと住所を同じくしている場合に上のような制限措置が必要かといいますと、戸籍法という法律の第10条に、

戸籍の附票に記録されている人(子ども)の配偶者、直系尊属もしくは直系卑属は、役所に対して戸籍の附票の写しの交付を請求することができる(ただし、請求が不当な目的であることが明らかである場合は交付を拒否されます)

という規定が置かれており、離婚後、相手は子どもの「直系尊属」という立場で、戸籍の附票の写しの交付を請求することができてしまうからです。

制限措置の対象となる書類は戸籍の附票(除票も含む)の写しのほか、住民基本台帳の一部の写し、住民票(除票も含む)の写しがあります。

もっとも、どんな人でも制限措置をかけることができるわけではなく、制限措置をかけることができるのは

①相手からDV(※1)を受けていた方
②相手からストーカー行為を受けていた方
③児童虐待を受けていた子ども及びその親
④①から③の方に準じる方

に限られます。

戸籍の附票等に制限措置をかけるには、お住いの役所に対して「申出書」等の書類を提出して申請する必要があります。申出を受けた役所は、警察などの相談機関の意見や裁判所が発行する保護命令(※2)決定書(DV被害の場合)、警察が発行する警告書、禁止命令書(ストーカー被害の場合)などによって、制限措置が必要かどうかを判断します。したがって、制限措置をかけるには、役所に制限措置の申出をする前に、警察などの相談機関に相談しておくことが必要です。

制限措置の効力は、役所から結果の通知を受けた日から起算して「1年」で、期間終了の1か月前から、期間延長の申出をすることができます。

【制限措置のまとめ】
○制限措置の内容
相手からの以下の請求を禁止する
・戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付請求
・住民基本台帳の一部の写しの閲覧請求
・住民票(除票を含む)の写しの交付請求

○制限措置の申出を行うことができる人
①相手からDVを受けていた方
②相手からストーカー行為を受けていた方
③児童虐待を受けていた子ども及びその親
④①から③の方に準じる方

○申出の手順・方法
①警察などの相談機関に相談する
※すでに相談している方は不要

②役所へ申出を行う

○制限措置の期間
1年(期間満了日前1か月から延長の申出が可)

※1 身体的暴力、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力、社会的暴力
※2 DV加害者があなたや子ども、親族などに接触することなどを禁止する命令