• どんな場合に離婚を取り消せますか?
  • どんな場合に離婚を無効にできますか?
  • どんな手続きを踏めばいいですか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

離婚した後、離婚したことに後悔し、「離婚を取り消すことはできないか?」と考える方が少なからずおられます。では、離婚した後に、離婚を取り消したり、離婚を無効にすることはできるのでしょうか?

今回は、離婚を取り消すことができるケース、できないケース、無効にできるケース、できないケースをご紹介するとともに、それぞれの手続きなどについても詳しく解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
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離婚の取消しについて

まず、離婚の取消しから解説していきます。

離婚を取り消すことができる場合

離婚を取り消すことができるのは、相手の

  • 詐欺
  • 強迫

のいずれかによって離婚した場合です(民法747条1項、764条)。

たとえば、不倫しているにもかかわらずそのことを隠し、「借金で取立てに負われていて迷惑をかけるから離婚して欲しい」などともちかけられて離婚し、実際は不倫相手と再婚したというようなケースでは、詐欺による離婚の取消しが認められる可能性が高いです。

また、離婚を拒否しているにもかかわらず、暴力や脅し、反社会的勢力を利用するなどして離婚届に無理やりサインさせられたというようなケースでは、強迫による離婚の取消しが認められる可能性が高いです。

一方で、相手とよりを戻したいから、離婚に後悔したからという理由では離婚を取り消すことはできません。こうした想いにならないためにも、離婚する前に本当に離婚したいのか、離婚したことで後悔しないかしっかり確認しておくことが大切です。

離婚の取消し期限

離婚を取り消すことができる期限は、

  • 詐欺を発見したとき
  • 強迫を免れたとき

から3か月です。

この期間内にあとで述べる調停を家庭裁判所に対して申し立てる必要があります。3か月はあっという間に過ぎてしまいますので、気づいた段階で申し立ての準備にとりかかる必要があります。

離婚を取り消すための手続き

離婚を取り消すには次の手続きを踏む必要があります。

調停を申し立てる

まず、家庭裁判所(※1)に対して離婚取消調停を申し立てます。

調停では調停委員が当事者の相手に入って話をまとめていきます。話し合いを通じて相手も離婚の取消しに合意する場合は、裁判所が離婚を取り消す判断(合意に相当する審判)をくだします。

※1 相手の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意した家庭裁判所
※2 相手が再婚している場合
相手が再婚している場合は「離婚取消調停」のほかに、相手と再婚相手に対して「婚姻無効確認調停」を申し立てる必要があります。また、調停が不成立となった場合は訴訟を提起する必要があります。離婚が取り消されたからといって、相手と再婚相手との婚姻が当然に無効となるわけではありません

訴訟を提起する

一方、相手が調停に出席しなかったり、取消しに合意しなかった場合は調停不成立となります。それでも、離婚を取り消したい場合は家庭裁判所に対し離婚取消訴訟を提起し、取消原因(詐欺または強迫)があることを証明できれば、裁判所が離婚を取り消す旨の判決を出してくれます。

戸籍の訂正

合意に相当する審判で離婚が取り消された場合は役所宛に戸籍を訂正する届出を行う必要があります。

(手続きを行う場所)
・本籍地のある役所
・居住地の(住民票上の住所がある)役所
・所在地の(一時的に滞在している)役所
(必要なもの)
・調停で取り消された場合
□ 戸籍謄本(※本籍地以外の役所に届出する場合)
□ 審判書謄本
□ 確定証明書
・判決で取り消された場合
□ 戸籍謄本(※本籍地以外の役所に届出する場合)
□ 判決謄本
□ 確定証明書
※審判書謄本は裁判所から住所宛へ送られてきます。判決謄本と確定証明書は裁判所に申請して取り寄せる必要があります。
(届出の方法)
・持参
・郵送
※持参による届出が基本です。

届出をした後は、戸籍は離婚前の状態に戻ります。

離婚の無効について

次に、離婚の無効について解説します。

離婚が無効となる場合

離婚が無効となるのは、離婚届が提出した(された)時点で、夫婦の双方または一方に離婚意思がない場合です。

協議離婚の場合、

・離婚届を提出する時点で当事者双方に離婚意思があること
・(子どもがいる場合は)親権、監護権に関する取り決めをしたこと
・役所に不備のない離婚届を提出し受理されたこと

が離婚の成立要件です。

したがって、

  • 相手が勝手に離婚届にサインして提出し受理された
  • だいぶ前に喧嘩した勢いでサインした離婚届を相手が勝手に提出し受理された

などという場合は、夫婦どちらかの離婚意思を欠くため離婚は無効です。

一方、贈与税を免れるために、離婚の財産分与によって相手に財産を移転し、離婚後しばらくして再婚したなど、仮装離婚・偽装離婚の場合は、夫婦双方に離婚意思はありますから離婚は無効とはなりません。

離婚無効の確認期限

無効な離婚はいつまでたっても無効ですから、離婚の取消しと異なり期限はありません。ただ、離婚から一定期間が経過すると相手が再婚するなどして身分関係が複雑化し、離婚前の状態にスムーズに戻ることが難しくなることも考えられます。離婚の無効を主張したい場合ははやめに手続きしておきましょう。

離婚を無効とするための手続き

離婚を無効とするための手続きは取消しとおおむね同じです。

すなわち、まずは家庭裁判所に対して「協議離婚無効確認調停」を申し立てます。調停で離婚の無効について合意できたら離婚は無効となります。調停では次のような離婚が無効であることを証明する証拠を提出して調停委員を説得する作業が必要になります。

□ (相手が勝手に提出した)離婚届の写し
□ あなたと相手の筆跡がわかる資料
□ 離婚をめぐって相手とやり取りしたLINE、メール など

一方、調停で合意できず、なお離婚の無効確認を求めたい場合は家庭裁判所に対して「協議離婚無効確認訴訟」を提起し、届出時点で離婚意思がなかったことを証明できれば、裁判所が離婚が無効である旨の判決を出してくれます。

戸籍の訂正のやり方も取消しの場合と同じです。

はやめに離婚届不受理申出を

役所は離婚届に記入漏れがないか、必要な書類は整っているかなど形式面しかチェックしません。したがって、夫婦の一方に離婚意思がなくても離婚届が受理され、協議離婚が成立してしまう可能性があります。

一度離婚が成立すると、離婚を無効とするには「調停→裁判」という手続を経なければならず、時間と手間がかかってしまいます。こうした事態になるのを防ぐには、役所に離婚届を提出される前に離婚届不受理申出をしておくとよいでしょう。

行政書士こぶき
行政書士こぶき

特に、離婚の話し合いがまとまらない、相手が不倫している、という場合に離婚届を勝手に出される可能性が高いですので注意しましょう。

離婚の取消し・無効は慎重に

相手が離婚を取り消しえるような行為に出たり、無行にできるような行為に出るということは、それほど相手が離婚したがっていたということの表れともいえます。

そのため、仮に離婚を取り消したり、無効にすることができたとしても、その後に相手から離婚調停を申し立てられるなどして、再び離婚を迫られる可能性があることには注意が必要です。

そのような相手と離婚を取り消したり、無効にしてまで夫婦生活を送っていくことができるのか、夫婦関係を修復していくことができるのかは念には念と入れて考えておく必要があります。

もちろん、調停の手続きの中で、あなたの想いを相手に伝えたり、今後の夫婦生活について話し合うことは可能ですが、相手との生活、修復が難しいと考える場合は離婚に向けて気持ちを切り替えることも選択肢の一つです。

もし調停の手続きの途中で「離婚の取消し・無効」→「離婚」という気持ちに切り替わった場合には、離婚成立を前提に親権(の変更)や養育費、財産分与、慰謝料などの離婚条件について話し合うこともできます(※時効に注意)。

まとめ

今回のまとめです。

  • 離婚を取り消すことができるケース、無効にできるケースは限定される
  • 離婚を取り消すため、無効にするためには一定の手続きを踏まなければならない
  • 離婚届を勝手に出されたくない場合は離婚届不受理申出をしておく