性格の不一致と離婚

  • 性格の不一致で離婚できるの?
  • 性格の不一致で慰謝料を払わせることはできるの?


この記事ではこのような悩み、疑問にお応えします。

裁判所が公開している司法統計をみても、性格の不一致(性格が合わない)は離婚理由の第1位のようです。この記事をお読みの方の中にも性格の不一致を理由に離婚を検討されている方も多いのではないでしょうか?

令和3年度司法統計 | 第19表婚姻関係事件数-申立て動機別(夫編)
令和3年度司法統計 | 第19表婚姻関係事件数-申立て動機別(妻編)

そこで、今回は、そもそも性格の不一致を理由に離婚できるのか、性格の不一致を理由に離婚する場合はどのような点に気をつければいいのか、離婚するまでにどのような手順で進めていけばいいのか、詳しく解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
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性格の不一致が離婚理由の1位である理由

性格の不一致とは、文字通り読めば、「性格が合わない」ということです。しかし、これは単に「性格」が合わないということだけではなく、

  • 価値観
  • 生活習慣
  • 金銭感覚
  • マナー
  • 子育てに関する考え方
  • 教育方針
  • 友人、親・親族との付き合い方
  • 宗教観

など、性格以外のものが合わないという意味も含まれており、それが性格の不一致が何十年にもわたり、離婚理由の1位であり続けている理由だろうと思います。

夫婦はもともと生まれも育ちも違いますから生活や価値観などが異なって当然です。何も性格の不一致の問題は今に始まったことではなく、実は結婚当初からあった問題なのです。

しかし、結婚当初は、それを気にもせず、あるいは寛容な心をもって受け入れることができていたことから相手との生活を続けることができたと思います。ところが、ある日を境に気になったり、受け入れることができなくなってしまうことがあります。

相手に改善を求めても一度人に身についた価値観や習慣を修正することはなかなか難しいことです。そして、とうとう相手との生活に耐えられなくなると、性格の不一致を理由に離婚したいと考え始めるようになってしまうのではないでしょうか。

性格の不一致で離婚できる?

性格の不一致を理由に離婚できるかどうかは、どのような方法で離婚するかによって異なります。

協議、調停なら可能

まず、協議や調停で離婚する場合は可能です。

協議離婚とは夫婦間の話し合いで離婚する方法、調停離婚とは裁判所を介した話し合いで離婚する方法ですが、協議離婚、調停離婚では離婚理由が何であるかは問われないからです。離婚と離婚条件(親権、養育費、財産分与など)について合意できさえすれば、離婚理由が何であるかを問わず離婚できます。

裁判なら離婚事由にあたるかどうか

一方、裁判では、以下のいずれかの離婚事由があることを証明できなければ離婚できません

①不貞
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④強度の精神病、かつ、回復の見込みがない
⑤婚姻を継続し難い重大な事由

このように、性格の不一致が裁判上の離婚事由として明確に規定されているわけではありませんが、それでも性格の不一致を理由に裁判で離婚したい場合は⑤を理由に裁判での離婚を求めることが考えられます。

⑤を理由に離婚したい場合は、裁判で「婚姻関係が修復しがたいほどに夫婦関係が破綻していること」を証明する必要があります。夫婦関係の破綻を証明するには、一定期間別居したり、夫婦関係が破綻したことを証明する証拠を集めておく必要があります。

もし、性格の不一致だけを離婚事由とするだけでは離婚が認められそうになり場合は、不倫、DV・モラハラ、悪意の遺棄など、ほかの裁判上の離婚事由がないか検討し、あればそれらを証明する証拠を集めて性格の不一致と一緒に証明するという方法もあります。

性格の不一致を証明する証拠

性格の不一致、すなわち、夫婦関係が破綻したことを証明する証拠としては、

□ ケンカしたときのボイレコ・録音データ
□ ケンカした直後のメモ、日記
□ 相手とやり取りしたメール、手紙
□ 第三者の証言

などがあります。

相手に不倫、浮気などの事実があれば、それらの証拠も集めておくとよいでしょう。

性格の不一致で離婚するまでの流れ

性格の不一致で離婚する場合もそのほかの理由で離婚する場合も、離婚までの流れは基本的に同じです。

①修復できないか検討する → 別居?

②離婚準備をする

③話し合いをする → 別居?調停?

➃書面を作成する

⑤離婚届を提出する

修復できないか検討する

まずは、いきなり離婚を切り出すのではなく、修復できないか検討してみましょう

相手に対する愛情が少しでも残っている場合は、修復の余地はあるといえます。一度は好きになった相手ですから、その気になってこれまでの自分を変えることができれば相手も変わり、これまで以上の関係を築くことができるかもしれません。修復か、離婚か判断がつかないというときは、この段階で別居してみるのも一つの方法です。

離婚準備をする

相手に対する愛情がなくなった、あるいは修復が見込めないことがわかり、離婚を考えたら離婚準備を進めましょう

真っ先にやることは「お金の準備」と「住まいの確保」です。離婚するにも様々な費用がかかりますし、離婚してからは、基本的には自力で生活していかなければいけません。経済力がないまま離婚すると、離婚した途端に生活に困る可能性があります。DVを受けているなどの一定の例外を除き、離婚後の生活の不安を取り除けるまでは、相手に離婚を切り出さないことがポイントです。

話し合いをする

離婚の準備が整い、離婚後の生活の不安を取り除けた後、相手に離婚を切り出します

離婚を切り出した後の話し合いをスムーズに進めるためにも、離婚の切り出し方、切り出すタイミング、切り出す場所などもあらかじめ考えておきましょう。二人で話し合うことに自信がない場合は間に第三者に入ってもらうか、入ってもらう場合は誰が適任かも考えておきましょう。切り出した後は、養育費などの離婚条件について話し合っていきます。

別居する

相手に離婚を切り出してみたものの、相手が話し合いに応じない、なかなか離婚に同意しないという場合は別居してみるのも一つの方法です。相手に別居を切り出すことであなたの離婚に向けた本気度を相手に示すことができます。また、別居が長くなると、相手が婚姻費用の支払いを負担に感じて離婚に合意したり、調停や裁判で離婚が認められやすくなります。

調停を申し立てる

離婚の話し合いが進まない場合は、別居のほか離婚調停を申し立てることも考えられます。調停では調停委員という第三者が夫婦の間に入りますので、夫婦で話し合いをするよりかは話し合いがスムーズに進む可能性があります。調停が終了したときに作られる調停調書には公正証書と同じ強制力のほか、公正証書にはない効力もあります。

書面を作成する

相手との話し合いの結果、離婚と離婚条件について合意できたら、あとで言った・言わないのトラブルになることを防止するためにも書面を作りましょう

離婚準備の段階で原案を作り、原案をベースに話し合いを進め、相手の意見や要望も取り入れて適宜修正を加えながら最終的な書面を作っていくことが理想です。養育費などのお金を分割で受け取っていく合意をしたときは、未払いを防止するために離婚公正証書を作っておくと安心です。離婚協議書(離婚公正証書の原案)を作っておけば、離婚公正証書に盛り込んで欲しい内容を公証人に漏れなく伝えることに役立ちます。

離婚届を提出する

書面を作った後は役所に離婚届を提出します(書面を作る前に離婚届を提出することもできなくはありませんが、その場合は書面の書き方に注意する必要があります)。

協議離婚の場合は離婚と離婚条件に合意しただけでは離婚は成立しません。離婚届を役所に提出し、受理されてはじめて離婚が成立します。提出の方法は「持参」、「郵送」、「代理」があります。役所によっては平日の開庁時間外や休日でも提出することができますので、都合がつかない方は検討してみましょう。

性格の不一致で慰謝料を請求できる?

性格の不一致を理由に離婚したい場合、相手に慰謝料を請求したいと考える方も多いと思います。しかし、性格の不一致を理由に慰謝料を請求することはできません

なぜなら、そもそも慰謝料は不貞、DVなどの相手の責任ある行為によって精神的苦痛を受けたからこそ発生するものですが、性格の不一致の場合は、どちらに責任がある一方的に決めつけることはできないからです。

ただ、もし、どうしてもお金の支払いで合意が見込めないときなどは、話し合いをこれ以上長引かせないという意味合いで、「解決金」名目で夫婦の一方から他方にお金を支払う旨の合意をすることがあります。

まとめ

今回のまとめです。

  • 性格の不一致は離婚理由の第1位
  • 性格の不一致の「性格」には様々な意味が含まれている
  • 協議、調停では性格の不一致でも離婚できる
  • 裁判では「夫婦関係が破綻しているかどうか」が争点となる
  • 性格の不一致で離婚したくなっても、まずは修復の道を探ってみる
  • 離婚に踏み切る場合は入念な離婚準備からはじめる
  • 性格の不一致を理由に慰謝料は請求できない
  • 解決金名目でお金の支払いを請求することはある