- 調停調書と公正証書との違いは?
- どちらを作った方がいいですか?
この記事ではこのような疑問や悩みにお応えします。
調停調書とは調停が成立した際に裁判所が作る公文書です。調停調書も公正証書も離婚する際に作ることができる書面であるため、違いなどがわからず、どちらを作るべきか迷う方もおられると思います。
そこで、今回は、調停調書と公正証書との違いを解説した上で、調停調書と公正証書のどちらを作るべきか、その判断基準をお示ししたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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調停調書と公正証書との違い
それでは、さっそく、調停調書と公正証書の違いからみていきましょう。
書面を作成する人・場所
まず、書面を作る人・場所が違います。
調停調書は調停を担当した家庭裁判所の裁判所書記官が作成します。一方、公正証書は公証役場に勤める公証人(元裁判官、元検察官、元弁護士の方が多い)が作成します。
作成手続き
次に、作成手続きが違います。
調停調書は調停という手続を通じて作成されます。調停には調停委員などの第三者が関与します。一方、公正証書は、原則として、夫婦だけで手続きを進めることができます。
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作成後の手続き
次に、作成後の手続きが違います。
調停の場合、調停が成立したと同時に離婚が成立します(ただし、役所への離婚届の提出は必要です)。離婚届の提出の際に必要となる「調停調書謄本」は家庭裁判所に申請して取り寄せる必要があります。
一方、公正証書(協議離婚)の場合は、公証役場で公正証書にサインした後、正本・謄本(※)を受け取ります。その後、役所に離婚届を提出し、受理された段階で離婚が成立します。公正証書の提出は不要です。
※原本の写し。お金を請求する権利者が正本を、お金を支払う義務を負う義務者が謄本を受け取ります。
作成までの期間
次に、作成までの期間が違います。
調停調書(謄本)は調停の手続きが終わった後に受け取ることができますが、ケースによっては、調停を申立ててから手続きが終わるまでに数か月~数年かかることがあります。一方、公正証書は公証人の繁忙などにより異なりますが、公証人に作成を依頼してから原案作成まで、1週間前後~2週間前後かかります。
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作成費用
次に、作成費用が違います。
調停調書を作成するのに費用はかかりませんが、調停を申し立てるのに費用(手数料1,200円~、郵便切手代1,000円~1,500円)がかかりますし、調停調書謄本を取り寄せるには、謄本1通につき費用(収入印紙代150円)がかかります。一方、公正証書は作成費用が発生します。費用は自己負担ですがが、一定の条件を満たす場合は役所から補助を受けることができます。
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合意の有無
次に、合意の有無です。
調停調書を作成することに対する夫婦の合意は不要です(ただし、調停事項の合意は必要です)。調停調書は合意の有無に関係なく作成されます。一方、公正証書を作成するには夫婦の合意が必要です。また、強制執行が可能となる公正証書(強制執行認諾文言付公正証書)を作成する場合は、お金を払う義務を負う義務者の同意(認諾)が必要です。
時効・除斥期間
次に、時効・除斥期間が違います。
調停調書は判決と同一の効力を有しますから、調停調書に盛り込んだ権利の時効(除斥)期間は10年となります(民法169条1項)。ただし、弁済期が到来していない権利については、この規定は適用されません(同条2項)。一方、公正証書に盛り込んだ権利の時効(除斥)期間は、養育費は5年、財産分与は2年、慰謝料は3年です。
強制執行が可能な範囲
次に、強制力が及ぶ範囲が違います。
調停調書の場合、養育費や慰謝料などの金銭的な合意事項のみならず、面会交流などの非金銭的な合意事項に対しても強制執行(※)が可能です。一方、公正証書の場合、強制執行が可能となるのは金銭的な合意事項に限られます。
※面会交流については間接強制のみ可能です。間接強制とは、面会交流に応じない場合に金銭の支払を義務付ける裁判所の命令のことで、この命令により義務者に心理的圧迫をあたえ、間接的に面会交流を実現することを目的としています。
履行勧告、履行命令
最後に、履行勧告、履行命令ができるかどうかが違います。
調停調書を作っておくと、強制執行のほか履行勧告、履行命令(※)という手段が使えます。履行勧告とは、裁判所から相手に「約束を守りなさい」と言ってもらえる制度です。また、履行命令とは、相手に(裁判所への)お金の支払いを命じることで、約束を守らせようとするものです。履行命令に従わないときは、10万円以下の過料を科すことができます。一方、公正証書を作ったとしても履行勧告や履行命令を使うことはできません。
参照:履行勧告
※履行勧告の申出は口頭(電話)でもできます。費用はかかりません。相手に履行勧告に従わなかったからといって、相手の財産を差し押さえるなどの強制力はありませんが、強制執行や履行命令と比べて手軽に行えるのがメリットです。一方、履行命令は書面で行う必要があります。また、申立て手数料が500円かかります。履行勧告は養育費の未払いや面会交流の不履行(拒否)のときでも使えますが、履行命令は面会交流の不履行のときは使うことができません。
調停調書or公正証書?どっちを作るべき?
最後に、調停調書と公正証書のどちらを作るべきかですが、まずは夫婦で話し合いができるかどうかが一つの基準となります。
公正証書を作る前提として、まずは、夫婦で離婚と養育費などの離婚条件について話し合った上で合意しなければいけません。この話し合いができない、話がまとまらないという場合は公正証書を作ることはできません。公証人はあくまで公正証書を作ることが仕事で、夫婦の間に入って話をまとめてくれるわけではありません。
一方、調停では調停委員という第三者が夫婦の間に入って話をまとめてくれます。相手と話し合いができない、話がまとまらないという場合は調停を申立て、調停成立を目指すべきです。また、調停調書による時効や強制力の範囲、履行勧告・履行命令にメリットを感じるも調停を申し立てることを検討すべきです(※)。
※夫婦での話し合いを省いていきなり調停を申し立てることもできますが、相手の怒りを買う可能性があるため、少しでも話し合いができる可能性があるのであれば、まずは話し合いを試みてみて、それでも難しい場合は調停を検討した方がいいと思います。