- 相手の借金で離婚できますか?
- 離婚に向けて何をやるべきですか?
- 離婚した後も借金を返済しなければいけませんか?
- 借金は財産分与の対象になりますか?
- 相手が借金していても養育費や慰謝料を請求できますか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
相手の借金は夫婦生活に大きな影響を及ぼします。毎月返済に負われ、生活に必要なものを買うことができなかったり、子どもに満足のいく教育や習い事を受けさせることができなくなることも考えられます。そのため、相手の借金を理由に離婚を考えられる方も少なくありません。
そこで、今回は、借金と離婚をテーマに、借金で離婚できるのか、離婚に向けて何をやるべきか、離婚後あなたも返済義務を負うのか解説するとともに、離婚のときに検討しなければいけない財産分与や養育費、慰謝料についても詳しく解説していきたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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借金で離婚できる?
それでは、まず借金で離婚できるのか解説していきたいと思います。
相手が同意すれば離婚できる
まず、離婚理由が相手の借金であれ、その他の理由であれ、相手が離婚に同意すれば離婚できます。協議離婚、調停離婚では、離婚理由が何であるかは厳格には問われません。
同意しない場合は裁判上の離婚事由にあたるかどうか
一方、相手が離婚に同意しない、あるいは離婚には同意するものの、離婚条件について同意しない場合は協議離婚、あるいは調停離婚することができず、最終的には裁判で離婚を成立させていくことになります。
もっとも、裁判で離婚を成立させるには次のいずれかの離婚事由があることを裁判で証明しなければいけません。
①不貞
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復し難い重度の精神病
⑤婚姻を継続し難い重大な事由
このように、借金は明確に裁判上の離婚事由にはあげられていませんが、たとえば、
・働こうと思えば働くことができるのに働かない
・生活費を家に入れない
・貯金の大半をギャンブルに費やしている
などの事情がある場合は②(悪意の遺棄)を理由に離婚を請求することができますし、不貞・不倫、性格の不一致など借金以外の離婚理由がある場合は、借金とあわせて⑤(婚姻を継続し難い重大な事由)を理由に離婚を請求することは可能です。
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借金で離婚を考えたときにやること
借金が原因で離婚しようと決めた、あるいは離婚するかどうか迷っている(けど、もしかしたら離婚するかもしれない)というときは、次のことを行っておきましょう。
離婚(別居)の準備
まずは、離婚(別居)に向けた準備です。
今現在無職、あるいは生活費の大半が相手の収入でまかなわれているという場合はお金の準備をはじめることが先決です。お金の準備をしないまま相手に離婚を切り出してしまうと、離婚した途端、生活に困ってしまう可能性があります。
また、同時に離婚後の住まいの確保も重要です。住まいは離婚後の生活の基盤となります。離婚後の住まいをどこにするかで、あなたの仕事や子どもの生活のことなどが変わってきます。離婚が頭をよぎった段階で離婚後の住まいも検討しましょう。
その他、離婚(別居)の準備には離婚に関する情報収集や次で紹介する証拠集め、離婚協議書の原案の作成など、やるべきことがいろいろあります。準備には一定期間必要ですので、離婚を思い立ったら計画的に進めていくことが必要です。
証拠を集める
次に、相手の借金やお金の使い道を証明できる証拠を集めておくことです。
具体的には
- 借金で購入したと思われる趣味品、ぜいたく品の写真
- 消費者金融からの請求書(写し)
- クレジットカードの利用明細書(写し)
などです。
また、先ほど述べたとおり、相手が借金している場合は、悪意の遺棄や不貞、不倫を理由に離婚できることも多いため、悪意の遺棄や不貞、不倫を証明できる証拠はないか疑っておき、あれば集めておくことが大切です。
離婚するにあたっては借金などの離婚理由に関する証拠のほか、親権、養育費などの離婚条件に関する証拠も集めておく必要があります。証拠は相手に離婚を切り出す前、今の家から出て行く前に集めておきましょう。
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借金を増やさない【貸付自粛制度】
もし、相手との関係を継続したいと考えているときは、あなたの生活を守る意味でも、相手の借金をこれ以上増やさないようにしなければいけません。
あなたの説得では効果がない場合は、親や友人、職場の上司などに頼んで説得を試みてみるのも一つの方法ですが、相手によっては火に油を注ぐ結果にもなりかねません。
相手が自ら借金をやめないときは強制的に借金をやめさせるしかありませんが、そのために利用できる制度があります。それが「貸付自粛制度」です。
貸付自粛制度とは、日本貸金業協会、あるいは全国銀行個人信用情報センターのどちらかに「貸付をやめてください」と申し出ることによって、金融機関からの借金を5年間ストップすることができる制度です。
本人のほか、一定の条件を満たせば、本人の配偶者(あなた)と原則二親等内の親族もこの申出をすることができます。制度の詳細はコチラでご確認ください。
債務整理を検討する
貸付自粛制度のほか、離婚を回避するための方法としては債務整理があります。債務整理には次の3つの方法があります。
- 自己破産
- 個人再生
- 任意整理
いずれも借金の負担を軽くする方法ですので、実現できれば借金の悩みから解放され、相手との関係に前向きな気持ちになれるかもしれません。
なお、自己破産、個人再生、任意整理それぞれにメリット、デメリットがありますから、利用を検討される場合は弁護士などの専門家ともよく相談の上、相手にあった方法を選択する必要があります。
自己破産
自己破産は、今もっているお金や財産を換金して得たお金で一部の借金を返済したり、裁判所の許可を得て残った借金をチャラにしてもらう手続きです。
【メリット】
・借金をチャラにしてもらえる
※裁判所の許可が必要
・財産の差押えの可能性がなくなる
【デメリット】
・財産を処分されてしまう(※)
※生活に必要な財産(自由財産)は残される
→財産をすべて失わないという意味ではメリット
・資格を必要とする仕事に就けない、できない
・「支払不能」という利用条件がある
・手続きが難しい
・ブラックリストに登録される
個人再生
個人再生は、裁判所を通して、借金を大幅に減額してもらう手続きです。
【メリット】
・借金を大幅に減額できる
・残った借金を分割返済できる
・住宅ローン特則で土地、家を残せる
【デメリット】
・「支払不能のおそれ」という利用条件がある
・手続きが難しい
・ブラックリストに登録される
任意整理
任意整理は、債権者との話し合いで借金の返済額や返済方法などについて決める手続きです。
【メリット】
・借金を減額(利息、遅延損害金をカット)できる
・分割返済が可能
・複雑な手続きが不要
【デメリット】
・借金の減額幅が小さい
・債権者との交渉が必要
・ブラックリストに登録される
借金で離婚する場合の返済義務はどうなる?
借金で離婚するときに今ある借金はどうなるのか、すなわち、あなたも返済義務を負うのか気になる方も多いのではないでしょうか?そこで、以下では、離婚後、今ある借金の返済義務がどうなるのかについて解説していきたいと思います。
相手が勝手に作った借金は返済義務なし
まず、相手が勝手に作った(個人名義で作った)借金については、基本的に返済義務はありません。相手が勝手に作った借金とは、すなわち、相手が個人的に契約して作った借金で、あなたが契約に関与していない以上、返済義務を負わせられるいわれはありません。
例外的に返済義務を負う場合
もっとも、相手が勝手に作った借金でも、
- 日常家事債務にあたる借金
- 連帯債務者、連帯保証人となっている借金
は、離婚後も返済義務を負い続けます。
日常家事債務とは夫婦生活で生じる通常の債務をいいます。家賃や水道光熱費などの未払金などがこれにあたります。連帯債務者、連帯保証人となっている借金とは家や車のローンが典型です。
借金は財産分与にどう影響する?
離婚のときに財産分与を考えている方は借金が財産分与にどう影響するのか気になる方も多いと思います。そこで、以下では、借金が財産分与にどう影響するのか解説したいと思います。
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借金が特有財産の場合は財産分与の対象に含めない
まず、借金がある場合に財産分与する場合は、その借金が特有財産なのか共有財産なのかを見極める必要があります。
そして、借金が特有財産にあたる場合は財産分与の対象にはなりません。特有財産にあたる借金とは、たとえば、
- 結婚前の借金
- (結婚後の)夫婦の一方の趣味、ギャンブルで作った借金
- 夫婦の共有財産(貯金)を形成する目的のない投資(株など)で作った借金
などがこれにあたります。
上記のような特有財産は財産分与の対象から外して財産分与することになります。
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借金が共有財産の場合は財産分与の対象に含める
一方、借金が共有財産である場合は財産分与の対象になります。共有財産にあたる借金とは、先ほど離婚後も返済義務が生じる借金として紹介した
- 日常家事債務
のほか、
- 夫婦生活のために生じた債務
- 資産の形成・維持のために生じた債務
です。
借金を財産分与の対象に含めた結果、プラスの財産がマイナスの財産を上回る場合は財産分与を行いますが、下回る場合は基本的には財産分与は行いません。
借金で離婚する場合の養育費と慰謝料はどうなる?
借金で離婚するときに財産分与以外にも疑問に思われることが多いのが養育費と慰謝料です。そこで、以下では、借金で離婚するときに、そもそも養育費や慰謝料について取り決め(話し合い)をしていいのか(請求できるのか)、現実にお金を払わせることができるのか解説していきたいと思います。
養育費
まず、借金があっても養育費の取り決め(請求)は可能です。
もし、相手に借金があって未払いの不安がある場合は、離婚前に公正証書を作るなどして未払いの対策しておく必要があります。
もっとも、養育費を払う、払わないは相手の気持ちしだいという点は否めませんので、仮に万全の対策をしていたとしても、相手が約束した通りに養育費を払ってくれるかどうかは別の問題となります。
なお、相手に養育費を請求する権利は相手が自己破産したとしても消滅しません。したがって、現実に養育費を払ってもらえるかどうかはわかりませんが、相手が自己破産したとしても養育費を請求し続けることはできます。
慰謝料
次に、慰謝料についても取り決め自体は可能です。
もっとも、相手に慰謝料を請求するには、不貞や悪意の遺棄などの相手の有責行為によって精神的な苦痛を伴ったといえる状況でなければいけません。ただ単に離婚する、相手が借金している、という理由だけで慰謝料を請求することはできません。
また、請求する金額にもよっては慰謝料を払えるだけの経済的な余裕がないなどの理由から、支払いを拒否されたり、現実に払ってもらえない可能性も考えられます。なお、養育費を請求する権利と異なり、慰謝料を請求する権利は相手の自己破産によって消滅してしまう可能性があります。
まとめ
今回のまとめです。
- 相手が離婚に合意すれば、離婚理由を問わず離婚できる
- 合意しない場合は裁判で離婚事由があることを証明する
- 離婚を思い立ったら離婚の準備をはじめる、借金の証拠等を集める
- 相手の借金をとめたい場合は貸付自粛制度の利用を検討する
- 相手が勝手に作った借金は返済義務を負わない
- 日常家事債務にあたる借金、連帯債務者・連帯保証人となっている借金は離婚後も返済義務を負う
- 借金が特有財産の場合は財産分与の対象に含まれない
- 借金が共有財産の場合は財産分与の対象に含まれる
- 借金を理由に離婚する場合でも養育費、慰謝料を請求してもいいですが、実際に払ってもらえるかどうかは別問題
- 養育費を請求する権利は相手が自己破産したとしても消滅しない