• 特有財産って何ですか?
  • どんな財産が特有財産になりますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

離婚で財産分与するなら、どの財産が特有財産で、どの財産が共有財産なのかをきちんと把握することが必要があります。基本的に財産分与は共有財産を対象とするからです。そこで、今回は、特有財産とは何か、具体例をあげつつ解説するとともに、特有財産でよくある疑問にもお答えしたいと思います。

特有財産とは

特有財産とは、次のいずれかの財産のことをいいます。

夫婦の一方が

① 婚姻前から所有していた財産
② 婚姻中に相続・贈与など、相手とは無関係に取得した財産
③ 夫婦の一方しか使わないことが明らかな物

特有財産は、基本的には財産分与の対象とはなりません。

もっとも、婚姻中に夫が親から相続した家(特有財産)の維持費等を、妻が自分の収入をメインとして負担してきた場合など、他方配偶者(妻)の寄与・貢献によって、特有財産の消滅・価値の減少を防止し、あるいは維持してきたと認められる場合には、寄与・貢献度に応じて、相当額を財産分与の対象とすることは可能です(※)。

※たとえば、妻の負担がなければ500万円の価値しかなかった家が、妻の負担によって1000万円の価値を維持できたという場合は、500万円(=1000万円ー500万円)を妻の取得分としてカウントしてもいいのではないか?ということです。

共有財産とは

一方、特有財産と異なり、財産分与の対象となるのが共有財産です。共有財産とは、夫婦共有名義の財産、あるいは婚姻後に夫婦が協力して築いたと認められる財産をいいます。

特有財産の具体例

特有財産にあたる財産とは次のような財産です。

【①にあたる特有財産】
・婚姻前から貯めていた預貯金
・婚姻前に購入した不動産(婚姻後のローンなし)
・婚姻前に相続、贈与によって取得した不動産
・婚姻前に現金で一括購入した車
・婚姻前に購入した家電、家財道具 
・婚姻前の借金、家や車のローン など

【②にあたる特有財産】
・婚姻中、親族が死亡した際に引き継いだ財産
・婚姻中、贈与を受けた財産
・交通事故などによって支払われた賠償金 など

【③にあたる特有財産】
・男女の区別のある装飾品、スマホ、服、靴 など

特有財産に関するQ&A

最後に、特有財産に関してよくある疑問にお答えします。

生活費の支払いに充てている口座に現在300万円あります。その口座には、婚姻前に私が貯金していた100万円が入金されていました。財産分与の対象となる金額はいくらになるでしょうか?

生活口座に入っている預貯金300万円は共有財産として財産分与の対象となります。これを平等に財産分与する場合は150万円を分け合うことになります。

もっとも、婚姻前にあなたが貯金していた100万円は特有財産ですから、これを財産分与の対象とすべきではなく、300万円から100万円を差し引いた200万円を財産分与の対象とすべきとの主張も可能です。

あなたが上記の主張をするものの相手があなたの主張に納得しない場合は、通帳や残高証明書などから、婚姻前に口座に100万円が入金されていたことを証明する必要があり、証明できない場合は100万円も共有財産とされてしまいます。

なお、婚姻から期間(目安は5年以上)が経過すればするほど、婚姻前の預貯金は夫婦の生活費に充てられたとみなされ、特有財産の主張をすることが難しくなってしまいますので注意が必要です。

婚姻後、自宅(2500万円)を購入するにあたって、私が婚姻前から貯金していた500万円を頭金に充てました。残りの2000万円は夫を単独名義として住宅ローンを組み、すでに返済しています。自宅は夫の単独名義です。評価額は1500万円です。私が出した頭金は財産分与において考慮することはできますか?できるとしてどのように考慮すればいいのでしょうか?

住宅ローンは完済済みとのことですから、自宅は共有財産として財産分与の対象です。自宅を売却する場合は、売却代金から諸費用を控除して余った金額を分与割合(通常2分の1)にしたがって分け合うか、どちらかが住み続ける場合は、住み続ける方が出ていく方に評価額を分与割合で割った額を金銭等で分与するかの方法をとります。

また、あなたが出した頭金500万円は特有財産であり、財産分与額を定めるにあたって考慮することは可能です。考慮の方法は様々ありますが、

① 自宅の購入価格に占める頭金の割合(寄与度)を割り出す
② 自宅の評価額に①の割合をかける
③ 自宅の評価額から②で出た額を控除する
④ ③の額を分与割合で割る
⑤ ④の額に②の額を上乗せする(=あなたの分与額)

という方法をとることが多いです。

仮に、分与割合を2分の1として、この方法にしたがって計算すると、

① 500万円÷2500万円=0.2
② 1500万円×0.2=300万円
③ 1500万円-300万円=1200万円
④ 1200÷2=600万円
⑤ 600万円+300万円=900万円(=あなたの分与額)
            600万円(=夫の分与額)

となります。

自宅(2500万円)を購入するにあたって私の親が頭金500万円を私の口座に振り込んでくれました。離婚にあたって、私は自宅から出ていきます。親が振り込んでくれた500万円を取り返すことはできますか?

通常、親は頭金500万円を「あなた」に「貸した」のではなく、親心として「贈与した」ものと思いますから、相手からも、あなたからも500万円を回収することはできません。

しかし、頭金500万円はあなたの特有財産といえますから、先ほどご紹介した計算方法で、共有財産への寄与分を分与額に上乗せする形をとることで実質的に取り返す形をとることは可能かと考えます。