車の財産分与 | 対象となる場合、ならない場合、分け方をケース別に解説
- 車は財産分与の対象になりますか?
- 財産分与する前にやるべきことはありますか?
- 財産分与の対象になる場合はどうやって分けたらいいですか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
車をもっている夫婦が離婚するときに、検討すべきことが車の財産分与です。そもそも財産分与すべきなのか、すべきとしてどうやって分けるのかわからないという方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、車が財産分与の対象となる場合、ならない場合をご紹介するとともに、車を財産分与する場合にあらかじめやっておくべきことや実際に分ける方法、手順などについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
車が財産分与の対象となる場合
車が財産分与の対象となるのは、車が共有財産といえる場合です。車が夫婦の共有財産といえるのは、次のようなケースです。
- 婚姻後に共有財産で車を現金購入した
- 婚姻後にローンを組んで車を購入し共有財産からローンを返済している
- 婚姻前に夫婦の一方がローンを組んで車を購入したものの、婚姻後は共有財産でローンを返済している
なお、車の名義は関係ありません。車の名義が相手にあっても、共有財産である以上は財産分与の対象です。
車が財産分与の対象とならない場合
一方、車が財産分与の対象とならないのは、車が特有財産といえる場合です。車が特有財産といえるのは、次のようなケースです。
- 婚姻前か後かを問わず、夫婦の一方が特有財産で車を現金購入した
- 婚姻前に夫婦の一方がローンを組んで車を購入し、婚姻後は購入した夫婦の特有財産でローンを返済している
- 婚姻後に夫婦の一方がローンを組んで車を購入し、購入した夫婦の特有財産でローンを返済している
- 車を親から相続した、親から贈与された
なお、一見、特有財産にあたるような車であっても
- 車の維持にかかる費用(車検代やメンテナンス費用など、)は共有財産から支払っていた
というような場合はやはり共有財産であって、財産分与の対象となります。
ローンが残っている場合、車は財産分与の対象となる?
ローンが残っている場合に車が財産分与の対象となるかは、ローンの残高が車の評価額を下回る「アンダーローン」の場合とその逆の「オーバーローン」の場合で結論がわかれます。
すなわち、アンダーローンの場合、車は財産分与の対象となりますが、オーバーローンの場合、基本的には車は財産分与の対象とはなりません。もっとも、家の場合と同じく、オーバーローンの場合でも、
・他の財産を組み入れた結果、プラスの財産>マイナスの財産となる場合
・話し合いで名義変更やローンの支払いについて合意できる場合
は財産分与の対象とすることは可能です。
車を財産分与する前にやっておくべきこと
車を財産分与する前にやっておくべきことは次の3つです。
① 車の名義を確認する
② 車の評価額を調べる
③ ローン残高を確認する
①車の名義を確認する
まずは、車検証(自動車検査証)で車の名義を確認しましょう。
車検証で見るべき箇所は「所有者の氏名又は名称」と「使用者の氏名又は名称」欄です。ローンを組んでいない、あるいはローンを完済している場合は「所有者の氏名又は名称」欄に名義人の氏名がかかれています。
一方、ローンを返済中の場合は「所有者の氏名又は名称」欄にローン会社の名称が、「使用者の氏名又は名称」欄に実際に使用している使用者の氏名がかかれています(※)。なお、銀行などのローン(いわゆる「マイカーローン」)を組んでいる場合は所有権留保されない場合もあります。
※ローン会社の所有権留保
ローン返済中は、車にローン会社の所有権留保がついています。所有権留保とは、車は使用者に使用させておきながら、ローンが完済されるまで、車の所有権をローン会社に留めておくことです。住宅ローンを組む際に設定する抵当権のようなもので、ローンの返済が滞ると、ローン会社は強制的に使用者から車を引き取り、車を売却して、売却金で未返済分のお金を回収しま
②車を査定に出す
次に、車を査定に出して車の評価額を調べます。
査定に出す前に、車検証などで車のメーカー名、型式、年式などを確認し、オドメーター(走行距離計)で走行距離を確認しておきましょう。
おおよその評価額を調べるには、「レッドブック(正式名称:オートガイド自動車価格月報)を入手して調べる」か「インターネットの無料査定に出す」方法があります。
一方、正確な査定額を出したい場合は、いくつかの中古車買取業者に査定を依頼して調べてもらった方がよいでしょう。夫婦が合意できるのであれば、どの方法で査定してもかまいません。
③ローンの名義と残高を確認する
最後に、ローンが残っている場合はローンの名義と残高を確認しましょう。
名義は夫(妻)が単独か、夫婦で組んでいる場合はいずれが連帯債務者(あるいは、連帯保証人)かを確認しましょう。残高はローン会社から郵送される「償還予定表」で確認できます。紛失してしまった方は、ローン会社に問い合わせて再送してもらうとよいです。
車の財産分与の方法
車の財産分与の方法は次のいずれかが基本です。
- 車を売却して、お金を分け合う
- どちらかが車に乗り続け、一方に代償金を支払う
車を売却して、お金を分け合う
以下、ローンを完済している場合とローンを返済中の場合とにわけて解説します。
ローンを完済している場合
ローンを完済している場合は中古車買取業者等に売却し、売却金を夫婦で分け合います(分与割合は原則2分の1)。売却する際は以下の書類が必要となります。どんな書類が必要となるか、あらかじめ確認しておきましょう。
売却する際は費用が発生しますので、どちらが負担するのか話し合って取り決めておきましょう。売却金から費用を差し引いた金額を分与する方法もあります。
【車売却時に必要な書類】
・車検証
・自賠責保険証明書
・自動車納税証明書 など
ローンを返済中の場合
一方、ローンを返済中の場合は、先にローンを完済しなければいけません。前述のとおり、ローン返済中の車には所有権留保がついており、それを解除しなければ車を売却できないところ、解除するにはローンを完済する必要があるからです。
アンダーローンの場合は中古車買取業者等に売却し、売却金をローンの返済に充て、その差額を夫婦で分け合うことができます。一方、オーバーローンの場合は差額分を現金等で埋める必要があり、誰が、どうやって払うのかを話し合って取り決める必要があります。
どちらかが車に乗り続け、一方に代償金を支払う
ご事情によっては、離婚後も車に乗り続けたいという場合もあるでしょう。ここでは「車の名義「所有者:ローン会社、使用者:夫」、ローンの名義「夫」」というケースを前提に、夫が車を乗り続ける場合と妻が乗り続ける場合をみていきましょう。
夫が車に乗り続ける場合
夫が車に乗り続ける場合は、夫が妻に代償金(※)を支払います(財産分与の対象が車だけの場合)。車やローンの名義変更は必要なく、離婚後は夫がローンを返済していきます。
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※代償金
ローンを完済している場合は車の評価額の2分の1の額、アンダーローンの場合は車の評価額とローン残高の差額の2分の1の額。金銭以外の共有財産で調整することも可能です。オーバーローンの場合も同様です。
※連帯債務者、連帯保証人になっている場合は要注意
今回のようなケースで、たとえば、妻がローンの連帯債務者、連帯保証人になっている場合は要注意です。今現在は夫がローンを負担していても、夫の返済が滞った場合は妻が代わりに返済する必要があるからです。夫婦の一方が連帯債務者、連帯保証人の場合は、離婚前に連帯債務者、連帯保証人から外れることができないかについても検討する必要があります。なお、夫婦の一存だけで外れることはできず、ローン会社との交渉が必要です。
妻が車に乗り続ける場合
一方、妻が車に乗り続ける場合は、妻が夫に代償金を支払います。
なお、使用者が変更になりますから、使用者の名義変更(正式には「記載事項変更」)が必要です。名義変更せずにいると、その年の4月1日時点で「使用者」だった人(今回のケースでは夫)に自動車税が課される可能性があります。
もっとも、ローンを返済中の場合、ローン会社によっては契約上、使用者の変更を認めていない場合もありますので、あらかじめ変更できるかどうか確認しておきましょう。
【手続きを行う場所】
現住所(使用の本拠)を管轄する運輸支局等
(こちらで検索できます➡国土交通省 全国運輸支局等のご案内)
【必要書類】
〇事前に準備する書類
■ 使用者の戸籍謄本(発行後、3か月以内のもの)
■ 使用者の委任状
■ 車検証
〇当日必要な書類
■ 申請書(運輸支局等の窓口で受け取る)
■ 手数料納付書(運輸支局等の窓口で受け取る)
■ 自動車税申告書(運輸支局等に隣接する税事務所で受け取る)
【費用】
無料(自分で行う場合)
※使用者変更と同時に、ローンの名義を変更できないかも検討する必要があります。そのまま放置しておくと、夫がローンを返済いくことになりますが、万が一夫の返済が滞った場合、ローン会社に所有権留保を解除され、強制的に車を引き取られてしまう可能性があります。もっとも、ローンの名義を変更するにはローン会社の承諾が必要で、妻に夫と同等かそれ以上の経済力がなければ承諾してくれないことがほとんどです。今回のケースのような場合は、妻にローンの名義を変更できるかどうかも含めて、妻が車に乗り続けるべきか、夫が乗り続けるべきかを決めた方がよさそうです。
ローンを完済できないかどうか検討しよう
ローンが残っていて、離婚後、夫婦のどちらかが車に乗り続けるケースでは、離婚後、誰がローンを返済していくのかが一つの検討課題となります。
前述のケースで、夫が車に乗り続ける場合でも、妻がローンの連帯債務者、連帯保証人であれば、妻も依然としてローンの返済義務を負います。妻の返済義務を解除するには、ローンを完済するか、代わりの連帯債務者や連帯保証人を立てるなどしなければいけません。
一方、妻が乗り続ける場合でも、妻に返済能力がなければ、妻にローンの名義を変更することは難しく、夫がローンを返済していかなければいけません。この状態を避けるには、離婚前にローンを一括で返済できないか検討する必要があります。
所有者の名義変更もお忘れなく
ローンを完済している(①)、あるいはローンを完済して(②)、離婚後夫婦のどちらかが車に乗り続けることとし、乗り続ける人と車の所有者とが一致しない場合は、所有者の名義変更(変更登録)が必要です。
万が一、名義が変わった日から15日以内に名義変更しなかった場合は「50万円以下の罰金」を科される可能性がありますし、自動車保険や税金の面で問題が生じる可能性があります。
また、何より車の名義人でなければ、将来、車を売りたいときに自分の判断で売ることができません。ローンが残っている場合は、ローンを完済しない限り、ローン会社は所有権を移転しませんので、ローン会社から乗り続ける人に所有権を移転したい場合は、まずはローンを一括返済する必要があります(②の場合)。
普通自動車
【手続きを行う場所】
現住所(使用の本拠)を管轄する運輸支局等
(こちらで検索できます➡国土交通省 全国運輸支局等のご案内)
【必要書類】
(①の場合)
〇事前に準備する書類
■ 譲渡証明書(旧所有者の実印の押印があるもの)
■ 旧所有者の印鑑証明書(発行後、3か月以内のもの)
■ 新所有者の印鑑証明書(発行後、3か月以内のもの)
■ 旧所有者からの委任状(実印の押印があるもの)
■ 自動車検査証(車検証)
※以上は旧所有者の協力が必要となる書類です。可能な限り、離婚前に取得し、手続きを済ませましょう。また、旧所有者から鍵も確実に受け取っておきましょう。
■ 新所有者の住民票(発行後、3か月以内のもの)
■ 自動車保管場所証明書(車庫証明書)※住所を管轄する警察から取得する
〇当日必要な書類
■ 申請書
■ 手数料納付書、自動車税申告書
(②の場合)
〇事前に準備する書類
■ 譲渡証明書(ローン会社から発行してもらう)
■ 印鑑証明書(ローン会社のもの)
■ 委任状(ローン会社から新所有者へ手続きを委任する書面)
※上記3つは、いずれもローン会社から取り寄せ
■ 印鑑証明書(新所有者のもの)
■ 新所有者の印鑑(印鑑証明の実印)
■ 自動車検査証
■ 車庫証明(新所有者に住所変更がなければ不要)
〇当日必要な書類
■ 申請書
■ 手数料納付書
■ 自動車取得税、自動車税申告書
【費用】
■ 登録手数料 500円
■ ナンバープレート交付手数料 約2,000円
(自動車登録番号の変更を行う場合)
軽自動車
【手続きを行う場所】
軽自動車検査協会
(こちらで検索できます➡軽自動車検査協会 全国の事務所・支所一覧)
【必要書類】
■ 自動車検査証記入申請書(※事前に旧所有者から署名・押印をもらっておく)
■ 住所を証明する書類(住民票写し、印鑑証明書など)
■ 自動車検査証
【費用】
無料
所有者の名義変更を行う場合は、旧所有者の署名・印鑑が必要となる書類(自動車検査証記入申請書)もあります。名義変更は、できる限り、離婚前に済ませておきましょう。
まとめ
車の中にも財産分与の対象となる財産、ならない財産がありますので、しっかり確認しておきましょう。財産分与の対象とならない車でも、夫婦の合意によって対象に含めることは可能です。
車を財産分与する際は、車の名義、車の評価額、ローンの名義と残高を確認しましょう。車を財産分与する方法は車を売却するか、夫婦のどちらかが乗り続けるかです。売却するにしてもローンが残っているときは、ローンを完済する必要があります。
一方、夫婦のどちらかが乗り続けるにしても、車の名義はどうするのか、ローンの名義や誰が払っていくか(払っていくことができるか)など、様々なことを検討する必要があります。
投稿者プロフィール

- 離婚分野を中心に取り扱う行政書士です。 行政書士に登録する前は法律事務所に約4年、その前は官庁に約13年勤務していました。実務を通じて法律に携わってきた経験を基に、離婚に関する書面の作成をサポートさせていただきます。
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