• 子どもの預貯金、学資保険は財産分与の対象となりますか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

子どもの財産とはいえ、元をたどればそれは夫婦の財産であることがほとんどです。そこで、財産分与するときに、子どもの財産が財産分与の対象になるのか、ならないのか判断に迷う方も多いのではないでしょうか?

そこで、今回は、そもそも子どもの財産(預貯金、学資保険)が財産分与の対象となるのか、実際に子どもの財産はどう処理すればいいのか解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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子どもの預貯金は財産分与の対象になる?

まず、子どもの預貯金が財産分与の対象になるかですが、預貯金のもととなったお金(原資)が夫婦の共有財産といえる場合は財産分与の対象となります。一方、共有財産とはいえない場合は財産分与の対象にはなりません。

財産分与の対象になるもの、ならないもの

子どもの預貯金と一言でいっても、中には共有財産以外の財産を原資とする預貯金もあるでしょう。そこで、以下では、子どもの預貯金の内容ごとに、子どもの預貯金が財産分与の対象となるかどうかみていきたいと思います。

子どもへのお年玉、お小遣い

親から子どもへのお年玉・お小遣いが原資となった預貯金は、そのお金が共有財産である限り財産分与の対象となります。一方、親が子どもに「自由に使ってよい」という趣旨で与えたお小遣いや親以外からもらったお年玉、お小遣いは財産分与の対象にはなりません。

出産祝い金

出産祝い金は「子どものため」というより、「これからの夫婦の生活のため」という意味合いで渡されるが場合が多いでしょう。そうした趣旨で渡された出産祝い金は共有財産といえますから、出産祝い金が原資となった預貯金は財産分与の対象となります。

各種祝い金

一方、誕生日祝いや入学祝いなどで受け取ったお金は、性質上「子どものため」という意味合いが強いお金といえます。そのため、共有財産とはいえず、各種祝い金が原資となった預貯金は財産分与の対象にはなりません。

アルバイト代

子どもが稼いだアルバイト代は子ども個人に帰属するお金ですから、共有財産とはいえないでしょう。したがって、アルバイト代が原資となった預貯金は財産分与の対象にはなりません。

児童手当

児童手当は児童を養育している者に対して支給されるお金(児童手当法1条)ですから共有財産といえます。したがって、児童手当を原資とした預貯金は財産分与の対象となります。一方、別居後の児童手当は財産分与の対象とはなりません。

子どもの預貯金への実際の対応

このように、子どもの預貯金には財産分与の対象となるものとならないものがあり、口座には混在していることがほとんどでしょう。そのため、通帳を一目見るだけではどれが財産分与の対象となる預貯金で対象とならない預貯金なのか見分けることが難しいのが実情ではないでしょうか?

また、子どもの将来のためにと思って貯金されてきた方も多いと思いますので、子どもの預貯金を財産分与の対象に含めること、ましてや口座を解約してまで夫婦でお金を分け合うことを感じる方も多いと思います。

そのため、実務上は、子どもの預貯金は財産分与の対象には含めず、口座は解約せず、離婚後子どもと一緒に暮らし、子育てしていく方(親権・監護権をもつ方)に取得・管理させていくこととすることが多いのが実情です。

行政書士こぶき
行政書士こぶき

子どもの預貯金を管理する親が子どもの預貯金を貯金の目的以外に使うおそれや不安がある場合は、離婚協議書離婚公正証書に「子どもの貯金は子どもの(学費の)ためにしか使わない」ことを約束する旨の条項を入れることがあります。

学資保険は財産分与の対象となる?

次に、学資保険が財産分与の対象となるかですが、学資保険については、保険料を共有財産から払っている場合は、保険料払込期間に対応する解約返戻金相当額が財産分与の対象になります

学資保険についても解約して解約返戻金を夫婦で分け合うのか、解約せずに今の契約を続けるのか、続ける場合は誰が保険料を払っていくのかなどといったことについて考えておく必要があります。

財産分与以外の子どもに関する準備

ここまで子どもの財産が財産分与の対象となるのか解説してきましたが、以下のように、離婚に向けては財産分与以外にも準備しなければならないことは多くあります。

  • 親権、養育費、面会交流の検討
  • 離婚後の住まい、子ども預け先の確保
  • 子どもの苗字・戸籍の検討
  • 転園・転校の検討
  • 各種諸手当、支援制度の確認

離婚によって影響を受けるのは親だけではありません。大人が気づかないところで子どもも苦しみ、精神的なストレスを抱えている可能性があります。

子どもへの影響を最小限に抑えるためにも、できる限り相手に離婚(別居)を切り出す前からしっかりとした準備をしておくことが理想です。

 まとめ

今回のまとめです。

  • 子どもの預貯金は、その原資が共有財産であれば財産分与の対象となる
  • 子どもの預貯金は財産分与の対象に含めないことが多い
  • 学資保険は共有財産で払っている保険料の払込期間に対応する解約返戻金が財産分与の対象となる