DV_離婚

  • 相手のDVで悩んでいますがどこに相談したらいいですか?
  • DVで離婚するにはどのような手順を踏んだらいいですか?
  • 慰謝料はいくらくらい請求できますか?

この記事はこのような疑問、悩みにお応えします。

この記事をご覧の方の中には「相手のDVで悩んでいて離婚したいけどなかなか前に踏み出せない」という方も多いと思います。そこで、今回は、DVで離婚するときに相談していた方がいい相談先や離婚の手順、慰謝料の相場などについて詳しく解説していきたいと思います。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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DVとは?

まず、そもそも相手からDVを受けている方の中には、自分がDVを受けているのか、自分がDV被害者なのか気づけていない方もおられます。そこで、はじめに、DVとは何か簡単に解説したいと思います。

DVとは主に配偶者による他方配偶者への暴力のことをいいます。なお、ここでいう「暴力」とは、

  • 身体的暴力
  • 精神的暴力
  • 性的暴力
  • 経済的暴力
  • 社会的暴力

にわけられます。

DVといえば殴る、蹴る、叩くなどの「身体的暴力」を一番にイメージされる方が多いと思いますが、DVは身体的暴力に限られるわけではありません。

参照:ドメスティックバイオレンス(DV)とは | 内閣府男女共同参画局

身体的暴力

・殴る
・蹴る
・叩く
・首を絞める
・髪の毛を引っ張る
・腕をはじる
・押し倒す
・羽交い絞めにする
・物を投げつける
・物で叩く
・熱湯をかける
・刃物などの凶器を突きつける など

精神的暴力

・大声で怒鳴る
・暴言を吐く
・無視する
・すべて否定する
・いつも命令口調 
・高圧的な態度
・行動を監視する
・あえて人前でしかる、名誉・人格を傷つけることを言う
・家族や友人を馬鹿にする発言を繰り返す
・大切にしているものを壊す など

性的暴力

・性交渉を強要する
・性交渉の場面を写真や動画で撮影する
・避妊具をつけない
・中絶を強要する など

経済的暴力

・生活費を入れない、渡さない
・外で働くことを許さない
・仕事を辞めさせる
・家計を独占する
・勝手に多額の借金をする
・相手のお金を取り上げる
・相手のお金を使い込む など

社会的暴力

・人間関係を監視、制限する
・行動を監視、制限する
・特定の人に連絡させない など

DV加害者の特徴

また、DV加害者には次のような特徴があります。相手が次の特徴にあてはまる人であれば、あなたはDV被害者である可能性があります。もし、不安であれば、あとで紹介する相談先にはやめに相談することをおすすめします。

□ 自分の価値観、考え方、やり方が絶対だと思っている
□ 相手や家族は自分のいうことに従って当然と考えている
□ 相手は自分より下の存在と考えている
□ 支配欲、独占欲が強い
□ 掲げる理想、目標、ハードルが高すぎる
□ DVをしている自覚がない
□ 相手や家族のためにと思ってやっている、言っているという思いが強い
□ 世間的、社会的には評価が高い一方で、家庭内では別人
□ もともと暴力的、怒りっぽい

こういう人がDVする、というような特定の特徴・傾向はなく、年齢・性別・学歴・職種・年収などに関係なく、誰でもDVをする素質はもっていると言われています。

今現在、DVを受けていないからといって、将来DVを受けないという補償はありません。特に、パートナーに上の特徴のうち一つでも当てはまるものがある場合は注意していた方がよいかもしれません。

DV被害の相談先

DVを受けている、DVを受けているかも?と感じた場合は、とにもかくにも周囲に相談することが先決です。DVは一人の力で解決できる問題ではありません。

そもそもDV加害者は「自分が正しい」と思っているため、あなたがいくら相手に改善を求めても相手の怒りを買うだけで、状況は何も進展しません。最悪の場合、相手をより凶悪化させ、あなたの命にかかわるトラブルまで発展してしまう可能性もあります。

DVでお悩みの場合は一人で悩まず、はやめに専門の相談先に相談して、第三者の適切なアドバイスのもと今後のことを考えていく必要があります。

なお、これから紹介する相談先にあらかじめ相談しておけば、あとで解説する「保護命令」や「住民票等の制限措置」を申し立てることができるようになります。裁判所に保護命令を出してもらえれば「児童扶養手当」を受け取ることができます

警察

・緊急の場合→#110
・緊急でない場合→「#9110」か「警察本部の専用電話番号」

配偶者暴力相談センター(DVセンター)

・DVセンターの概要はコチラ
・DVセンターの電話番号、ホームぺージURLはコチラ

DV相談プラス

・DV相談プラスの概要、電話番号はコチラ

女性センター

・女性センターの概要はコチラ
・女性センターの電話番号はコチラ

婦人相談所

・婦人相談所はコチラ
・婦人相談所の電話番号はコチラ

福祉事務所

・福祉事務所の概要はコチラ
・各都道府県の福祉事務所は「(都道府県名) 福祉事務所」で検索

※福祉事務所は「母子生活支援施設」の窓口です

児童相談所

・児童相談所の所在地、電話番号はコチラ

別居するまでにやること

相談先に相談した後は担当者の指示にしたがって別居に向けた準備を進めていくことになると思いますが、一般的には次の準備を進めていくことになるでしょう。

別居先を見つける

まずは、身の安全を確保できる別居先を見つけることです。

安全な別居先を見つけることができない場合は、警察、DVセンターなどに相談すれば、避難先を紹介され一時保護を受けることができる場合があります。

もっとも、一時保護はその名のとおり、一時的な避難のための措置です。避難できる期間は2週間から長くても2~3か月程度ですから、期間中からその後の避難先を探しておく必要があります。

別居の準備をする

次に、別居の準備をします。

別居の準備には様々あり、時間がかかりますが、DVで別居する場合は緊急性が高く、時間をかけて準備している余裕はないでしょう。したがって、最低でも次の準備しておきます。その他のことは、身の安全を確保した後で進めていきましょう。

□ 子どもに説明する
□ 転園・転校の準備をする
□ もっていく荷物をリストアップする
□ 離婚で必要な証拠を確保する
※ DVの証拠はのちほど紹介します

離婚届の不受理申出を行う

次に、離婚届の不受理申出を行うことです。

離婚届不受理申出とは、相手があなたに勝手に離婚届を提出した場合に役所に離婚届を受理しないことを求める申出です。役所は離婚届の形式面しか審査する権限がありませんから、あなたに現時点で離婚の意思がなくても勝手に離婚を成立させられてしまうおそれがあります。相手が勝手に役所に離婚届を提出するおそれがある場合には、本籍地または住所地の役所に申出しておきましょう。

弁護士に相談する

次に、弁護士に相談することです。

あとで解説する「別居した後にやること」で紹介するもののほとんどは専門的なものばかりで、一人で手続きを進めていくことは難しいと思います。また、相手との離婚協議には弁護士の力が必要となりますから、はやめに相談しておきましょう。

弁護士費用がネックとなっている場合は、まずは法テラスの「DV等被害者法律相談援助制度」を活用する手もあります。DV被害者の方で、資力が一定以下の場合は無料で弁護士の相談を受けることができます。

参照:DV等被害者法律相談援助制度 | 法テラス

離婚や慰謝料請求で必要なDVの証拠

相手と離婚するには相手が離婚に合意することが必要ですが、DV加害者は世間体を気にして離婚に合意しない傾向があります。相手が離婚に合意しない場合はあなたが離婚裁判を起こし、婚姻関係を継続・修復できないほど破綻していることを証拠によって証明していく必要があります。また、同時に慰謝料の支払いも求めていくことにもなるでしょう。

ただ、裁判で離婚や慰謝料を請求するには、あなたが過去にDVを受けていたことを証明する証拠が必要となります。そこで、ここではあなたのDV被害を証明できる証拠を紹介します。もし、DVを受けたかも?と思ったら、今後のためにもその段階から証拠を集めておくことをおすすめします。

診断書

まずは、診断書です。

暴力を受けた場合のみならず、相手の暴言などで精神疾患を患った場合も速やかに病院を受診しましょう。DVを受けた日から病院を受診する日までの間が空けば空くほどDVと損害(精神的苦痛)との因果関係を疑われる可能性がありますので、間を空けずに受診することが大切です。医師の診断を受ける際は医師にDVが原因であることを正直に伝え、医師に診断書を作ってもらうときは初診日や加療期間を書いてもらいましょう。

写真・動画

次に、写真や動画です。

相手に暴力を振るわれる場面、暴言を吐かれる場面を動画撮影できればいいですが、難しい場合はその都度

・負傷した部位
・相手が壊した物
・荒れた部屋の様子

などを写真に撮っておくとよいです。負傷した部位を撮影する際は、その怪我があなたの怪我だとわかるように、できれば負傷した部位がわかるような形で全身を撮影し、その後に負傷した部位をアップで撮るとよいでしょう。

音声・電話の録音

次に、音声・電話の録音です。

これらは身体的暴力以外の暴力を証明するために有効な証拠です。ただし、録音の仕方などには注意が必要です。相手に録音していることがバレると相手の怒りを買い、あなたの命にかかわるような暴力を受けてしまう可能性があります。相手の発言の証明は、最低でも後述する日記やメモでも代用できますので、録音するかどうかは慎重に検討する必要があります。

メール

次に、メールです。

相手とやり取りしたメールは、録音と同じく、相手の発言内容の証明に使える可能性があります。また、相手ではなく家族や友人など、あなたがDV被害で困っていること、悩んでいることを相談した相手とのやり取りもDVを証明する証拠となる場合があります。あれば削除せずにスクショなどで証拠化しておきましょう。

日記、メモ

次に、日記、メモです。

暴力を受けた日時、場所、方法、態様(回数)、暴言の内容など、できるだけDVを受けたその日に、詳細に書いておくと信用性が高まります。ただし、日記、メモは「自分の都合のいいように誇張して書いたのではないか」などと、どうしても疑いの目で見られてしまいます。その意味で信用度は劣るため、診断書や写真などの信用度を補完する役割程度のものという位置づけにあります。

警察などの相談記録

次に、警察などに相談した際の相談記録です。

先ほど紹介した警察などの相談先に相談した際は、必ず相談の記録が残されています。相談記録には、あなたの相談内容が記録されていますので、DVを証明する証拠として使える可能性があります。

DV慰謝料の相場

DVを理由に慰謝料請求する場合の相場は「50万円~500万円」です。不貞の慰謝料の相場は「50万円~300万円」と言われていますので、不貞よりも高額となる傾向です。

もっとも、実際の金額は

・DVの回数、期間
・被害の内容、程度
・DV加害者の反省の程度

などの諸要素を考慮して決められます。そのため、ケースによっては、相場よりも高くなったり、場合によっては低くなることも考えられます。

別居した後にやること

別居して身の安全を確保した後は次のことをやります。

保護命令の申立て

まず、裁判所に保護命令を出してもらうよう申立てをすることです。裁判所に保護命令を出してもらうと児童扶養手当が受け取れるようになります。

保護命令には「接近禁止命令」、「退去命令」、「電話等の禁止命令」などがあります。

・接近禁止命令
→一定期間、DV加害者があなた、子ども、親族などあなたと密接な関係を有する人につきまとうこと、住居・勤務先などに押しかけたり、周辺を徘徊(はいかい)することなどを禁止する
・退去命令
→DV加害者に、一定期間、家から出て行くことを命じる。退去した家の周辺を徘徊することも禁止される。
・電話等の禁止命令
→面会の要求、電話、連続してのメールの送信などを禁止する

裁判所に保護命令を出してもらうには、加害者の住所を管轄する裁判所に申し立てを行った上で一定の手続きを踏む必要があります。すでに述べたとおり、まずは警察などの相談先に相談しておきましょう。保護命令を受けたDV加害者が命令に違反したときは罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が科されます。

参照:保護命令手続について | 裁判所

住民票の閲覧等の制限措置の申し出

次に、役所に住民票の閲覧等の制限措置の申出をすることです。

住民票の閲覧等の制限措置とは、DV加害者から役所の戸籍係に以下の書類(写し)の閲覧や交付の請求・申出があった場合でも、これを拒否したり、第三者のなりすましによる請求・申出を防止するために必要な対策を講じる措置のことです。

・住民基本台帳
・住民票(除票を含む)
・戸籍の附票(除票を含む)

この措置を受けるには、保護命令と同じく、警察などの相談先に相談しておく必要があります。また、書類がある自治体の役所に対して申し出の手続きをとる必要があります。詳しい手続は各自治体に問い合わせてみましょう。

【手続きに必要なもの】
□ 住民基本台帳事務における支援措置申出書
□ 本人確認証(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど顔写真付きの身分証)
□ 印鑑

園・学校関係者への事情説明

次に、園や学校の関係者に事情を説明しておくことです。

子どもを転園・転校させた場合は、子どもの転園、転校先からあなたの住まいを知られてしまう可能性もあります。そのため、上記の制限措置とあわせて、子どもにかかわる保育園、学校などの関係者に事情を説明した上で、DV加害者から情報の開示を受けたときは、これに応じないよう要請しておくことが必要です。

生活費を請求する

次に、生活費を請求することです。

相手よりも年収が低い場合、年収が高くても子どもと一緒に生活する場合は、別居後離婚するまで相手に生活費を払うよう請求できます。金額や支払方法などを決める必要がありますが、DVの場合、話し合いで決めることは難しいですから、裁判所に調停(あるいは審判)を申し立てることが必要となるでしょう。

参照:婚姻費用の分担請求調停 | 裁判所

児童手当の受給者変更

次に、児童手当を受け取る人(受給者)を変更することです。

今現在、DV加害者が児童手当の受給者で、あなたが子どもと一緒に生活する場合は、児童手当の受給者を変更する手続きをとりましょう。児童手当の受給者の変更は離婚することが確定的になってから手続きをとることが基本ですが、DV被害を受けている場合は別居後に手続きをとることができます。

参照:児童手当Q9~Q11 | 内閣府

児童扶養手当の受給申請

次に、児童扶養手当の受給申請です。

児童扶養手当は本来、母子家庭、父子家庭など、ひとり家庭に支給される手当ですが、相手からDVを受けていて、相手が裁判所から保護命令を受けているときは離婚前から児童扶養手当を受け取ることができます。詳しい手続きはお住いの自治体の担当者に尋ねてみましょう。

参照:平成24年8月から、児童扶養手当の支給要件に、配偶者からの暴力(DV)で「裁判所からの保護命令」が出された場合が加わりました | 厚生労働省

就職、転職活動する

次に、就職、転職活動することです。

児童手当や児童扶養手当、養育費など離婚で受け取れるお金だけでは生活していけません。無職やパート・アルバイトで収入が安定していない方は離婚後は自力で稼いでいくための経済力をつけておく必要があります。ハローワークなど公的な就業支援施設や制度をうまく活用しましょう。

別居(避難)後の住まいを考える

次に、別居(避難)後の住まいを考えることです。

シェルターに避難した場合はいずれ退去しなければいけませんから期間中から別居(避難)後の住まいを考えておく必要があります。公営住宅などへの入居が難しい場合は、NPOなどが運営するシェルターに入所できないか検討しましょう。必ず入所できるとは限りませんが入所できれば、職員や弁護士のサポートを受けながら、離婚や離婚後の生活の準備を進めていくことができます。

DVで離婚する手順

DVで離婚するまでの流れは次のとおりです。

①別居する(解説済)

②離婚協議を申し入れる

③調停を申し立てる

④裁判を起こす


⑤離婚届を提出する

すでに解説したとおり、まずは別居すること(①)です。あなたや子どもの身の安全を確保してから離婚に向けた準備を進めていきます。そして、通常であれば、離婚の準備が整い、離婚後の生活の不安がなくなった後に相手に離婚協議を申し入れ(②)、夫婦で話し合いを進めていきますが、相手がDV加害者である場合は夫婦で話し合うことはほぼ不可能です。

そのため、相手に離婚協議を申し入れる前から弁護士に依頼して代わりに相手と交渉してもらうか、はじめから②を省略していきなり離婚調停を申し立てる(③)しかありません。離婚調停では調停委員という専門家が夫婦の間に入ってくれるため、夫婦で直接話し合う必要がありません。また、事前に裁判所に申し出ておけば相手と顔を合わさなくていいように配慮してくれるでしょう。

もっとも、調停でも、相手が離婚に合意しなかったり、そもそも相手が調停に出席しなかったりして調停が不成立となった場合は裁判を起こして(④)、裁判での離婚を求めていくことになるでしょう。裁判ではあらかじめ集めた証拠を使って夫婦関係が修復不能な程度に破綻していることを証明していく必要があります。

最後に、役所に離婚届を提出します(⑤)。協議で離婚する場合は離婚届が受理されてはじめて離婚が成立します。そのほかの方法でも、役所に報告する意味合いから届出が必要です。

まとめ

  • DVは身体的暴力、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力、社会的暴力の5つ
  • DV加害者には共通した特徴がある
  • DVかな?と思ったら、まずは専門の期間に相談を
  • DVを受けたら裁判や慰謝料請求のために証拠を集めておく
  • 離婚に向けては身の安全(別居先、避難先)の確保から
  • 別居した後もやることは様々
  • 一人で手続きを進めていくことが難しい場合は弁護士に相談、依頼