- 家を財産分与するにはどうしたらいいですか?
- 家を財産分与する前にやっておくことはありますか?
- 住宅ローン残債がある場合、ない場合はどうしたらいいですか?
この記事はこのような疑問、悩みにお応えします。
持ち家があって離婚する場合に頭を悩ませるのが家や住宅ローンの処理ではないでしょうか?離婚後の住まいをどこにするか、そもそも家を残した方がいいのか、住宅ローンは誰がどうやって払っていくのか、様々なことが絡み合い、頭を悩ませることと思います。
そこで、今回は、家を財産分与する前にあらかじめやっておくべきことや財産分与の方法を住宅ローン残債がある場合とない場合にわけて詳しく解説していきます。家の財産分与はとても複雑ですので、まずはあなたがどんなケースに該当し、どんな選択肢をとれるかだけでもつかんでいただければと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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家を財産分与する前に確認しておくこと
家を財産分与する前は次のことを確認しておく必要があります。
①家の名義
②住宅ローン残債と名義
③財産分与の基準時
④家の評価額
⑤頭金(特有財産)の有無
①家の名義
まず、家(土地、建物)の名義です。単独名義なのか共有名義なのか、共有名義の場合、持分はいくらかを確認しておきましょう。
家を売るにしても、単独名義であれば名義人の判断だけで家を売ることができますが、共有名義だと共有持分の割合にかかわらず、夫婦の一方の判断だけで売ることができません。
一方、離婚後、夫婦のどちらかが家に住み続ける場合も、家の名義人が誰か、住み続ける人が誰かによっては、名義はそのままでいいのか、変更する必要があるのかが変わってきます。
家の名義は不動産の「登記簿謄本(登記事項証明書(土地用、建物用))」で確認できます。登記事項証明書の「権利部(甲区)」の「権利者その他の事項」の欄を見てください。
そこに「所有者〇〇〇〇」と一人の名前しか記載されていない場合は、その人の単独名義であることを示しています。一方、「共有者 持分 〇分の〇 〇〇〇〇(名前)」などと書かれている場合は共有名義であることを示しています。
登記事項証明書はご自宅に保管しているはずですが、見つけることができない場合は法務局から取り寄せてください(法務局に出向かずに、オンラインや郵送での取り寄せることもできます)。
②住宅ローン残債と名義
次に、住宅ローン残債があるときは、住宅ローンの残債と住宅ローンの名義です。なお、家の名義が夫の単独名義だからといって、住宅ローンの名義も夫の単独名義とは限りません。家の名義と住宅ローンの名義は必ずしも一致しませんので注意しましょう。
住宅ローンが残っている場合、家を売るときに、家の売却金で住宅ローンを完済できるのか(住宅ローン残債が家の評価額を下回る「アンダーローン」の状態か)、完済できないか(住宅ローン残債が家の評価額を上回る「オーバーローン」の状態か)を見極めるためにも、住宅ローンの残債の確認は必須です。
家を売らないか、オーバーローンの場合は離婚後も引き続き住宅ローンを払っていく必要があります。住宅ローンを払う義務を負うのは住宅ローンの名義人ですから、住宅ローンの名義もあわせて確認しておく必要があります。住宅ローンの名義は以下のパターンが考えられます。
【住宅ローンの名義】
・夫(妻)の単独名義
・夫、妻双方が連帯債務者(連帯債務型)(※)
・夫(妻)が主債務者、夫(妻)が連帯保証人(連帯保証型)
住宅ローンの残高は住宅ローンを組むときに債権者(住宅ローンの貸主=金融機関など)から配布された「償還(返済予定)表」で確認できます。紛失してしまった方は、債権者に問い合わせれば発行してくれます。住宅ローンの名義は「金銭消費貸借契約書」などの書面で確認できます。
※連帯債務型には「ペアローン」と「収入合算型のローン」があります。「ペアローン」は、夫婦それぞれが金融機関から住宅ローンを借り入れ(契約数は2本)、互いが互いの債務を連帯して保証し合う関係にあるローンです。一方、「収入合算型のローン」は夫婦で収入を合算して1本の住宅ローンを借り入れ、夫または妻が主債務者、他方が従たる債務者となるローンです。どちらのローンも、夫婦それぞれが住宅ローンの返済義務を負っていることには変わりありません。一方、連帯保証型は、まず主債務者が住宅ローンの返済義務を負い、主債務者の住宅ローンの返済が滞ったときにはじめて、連帯保証人が主債務者の代わりに返済義務を負うという違いがあります。
③財産分与の基準時
次に、財産分与の基準時です。
財産分与の基準時とは、財産分与の対象とする財産をいつの時点で評価するかという問題です。
財産分与は夫婦が協力して築いた財産を離婚時に清算するというものですから、離婚まで別居しなければ離婚時、離婚に先行して別居した(離婚まで同居を再開したことがない)場合は別居時が基準時となります。
【財産分与の基準時】
・別居なし → 離婚時
・別居あり → 別居時
別居なしの場合は離婚時の家の評価額、別居ありの場合は別居時の家の評価額を調べる必要があります。
④家の評価額
次に、家の評価額です。
家の評価額によって、アンダーローンかオーバーローンか、家をどのくらいで売却できるのかがわかります。家の評価額を調べる方法は以下の5通りです。夫婦で合意できれば、どの方法で調べた評価額でも家の評価額とすることができます。
㋐ 固定資産納税通知書or固定資産評価証明書(※)で課税評価額を確認する
㋑ 国土交通省の土地総合情報システムを使う➡「不動産取引価格情報検索」
㋒ インターネットで無料の一括査定に出す
㋓ 不動産業者に査定を依頼する
㋔ 不動産鑑定士に鑑定を依頼する
※固定資産納税通知書は毎年6月初旬~中旬頃、役所から自宅に郵送されます。固定資産評価証明書は不動産がある市区町村役場から取り寄せることができます。
㋐から㋔の順に正確な評価額を出すことができますが、不動産業者は売却前提でなければ査定してくれないところもあります。また、不動産鑑定士に鑑定を依頼する場合は20万円~40万円程度の費用がかかります。夫婦で合意できるのであれば、どの方法を使っても問題ありません。
⑤頭金(特有財産)の有無など
最後に、頭金の有無です。
頭金が
・夫婦の一方が婚姻前から貯めていた預貯金
・夫婦の一方が親族(親など)から贈与してもらったお金
という場合、頭金は特有財産にあたります。特有財産は財産分与の対象とはなりませんから、財産分与の計算から外す処理をする必要があります。
処理方法は様々ありますが、通常は、
㋐ 家の購入価格に占める頭金の割合を算出する
㋑ 家の評価額に㋐で出た割合をかける
という手順で頭金の額を割り出し、その額を特有財産の所有者の分与額に加算する方法がとられることが多いです。
たとえば、「3000万円の家を購入する際、妻が独身時代に貯めていた貯金600万円を家の頭金に充て、評価額1800万円で売却する」というケースの場合、頭金の額は
㋐ 600万円÷3000万円=0.2
㋑ 1800万円×0.2=360万円
となります。
そして、家以外に財産分与の対象となる財産がない場合、分与対象財産の評価額は上記の特有財産分を除いた1440万円(=1800万円-360万円)で、分与割合を2分の1とした場合、
妻の取得分=1080万円(=720万円+360万円)
夫の取得分=720万円
となります。仮に夫婦の貯金額が0円の場合、妻は夫に360万円の支払を請求することができます。
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家の財産分与の方法①(残債あり、アンダーローン)
「住宅ローン残債あり+アンダーローン」の家の財産分与の方法は
㋐【換価分割】
→家を売却し、残ったお金を財産分与する
㋑【代償分割】
→夫婦の一方が住み続け、他方にお金(代償金)を払う
の2通りです。
住宅ローンを完済している場合も同じ方法で分けることができます。
換価分割
家を売る場合は、次の手順で進めていきます。なお、家の名義が共有の場合は、一方の判断だけで家を売ることができません。まずは、売るか売らないか、夫婦でよく話し合う必要があります。
【STEP1】 不動産業者を見つける
↓
【STEP2】 不動産業者が買手を見つける
(不動産の売却、所有権移転登記・抵当権の抹消)
↓
【STEP3】 売却代金を清算・分配する
【STEP1】不動産業者を見つける
家を売る場合は、不動産業者に仲介を依頼することが多いかと思います。また、家の評価額の査定も不動産業者に依頼することになるでしょう。不動産業者に仲介を依頼した場合は「仲介手数料」がかかります。
【STEP2】不動産業者が買手を見つける
不動産業者に依頼した後は、不動産業者が購入希望者を見つけて交渉します。話がまとまったら「売買契約の締結→手付金の授受→登記に必要な情報・書類の確認→残代金の振込み→所有権移転・抵当権の抹消の登記」という順に進めていきます。登記は司法書士に依頼して行います(通常、不動産会社が指定する司法書士に依頼します)から、司法書士への報酬金が発生します。
【STEP3】売却代金を清算・分配する
家を売却した場合、
- 仲介手数料
- 登記にかかる諸費用(司法書士の報酬金、登録免許税)
- 税金(印紙税、譲渡所得税)
がかかります。
そのため、売却代金から「住宅ローン」と「上記諸費用」を差し引いた後の残額が財産分与の対象額となります。
財産分与対象額=売却代金-(住宅ローン+売却時にかかる諸費用)
代償分割
夫婦の一方が家に住み続けることを希望する場合は、次の手順で進めていきます。
以下では「「家の名義:夫、住宅ローンの名義:夫」の家に妻と子どもが住み続ける」ケースを前提に話を進めていきます。
【STEP1】 住宅ローンを一括返済できないか検討する
↓
【STEP2】 誰が住宅ローンを支払うかを話し合う
↓
【STEP3】 家の名義をどうするか話し合う
↓
【STEP4】 代償金の支払いの有無を検討する
なお、今の家に住み続ける場合は固定資産税などの税金を払っていく必要がありますし、不動産を譲渡するときは不動産所得税がかかる場合もあります。今の家に住み続けることを希望するときは、これらの税金を払えるかどうかも考えておく必要があります。
【STEP1】住宅ローンを一括返済できないか検討する
まず、住宅ローンを完済できないか検討してみましょう。
住宅ローンを残したまま離婚することは夫婦それぞれにデメリットがあります。今回のケースでは、妻に住宅ローンを支払っていく能力がない限り、夫は離婚後も住宅ローンを払い続けなければいけません。住宅ローンが離婚後の生活の負担として重くのしかかります。
一方、妻も夫がきちんと住宅ローンを払ってくれるのか常に不安を抱えながら生活しなければいけません。万が一夫の支払いが滞ると家を競売にかけられ、家を強制退去させられる可能性があります。
住宅ローンを完済することができるならば、夫婦双方がこうした不安をもつ心配がなくなります。夫が一括返済した場合は、その分を妻に財産分与で渡したこととして分与額を調整することもできます。
【STEP2】誰が住宅ローンを支払うかを話し合う
住宅ローンを完済することができないときは、誰が住宅ローンを払っていくかを話し合う必要があります。
今回のケースでは、何の取り決めもしなければ、今までどおり夫が住宅ローンを払っていくことになります。もっとも、これでは、先ほど述べたとおり、妻は夫の住宅ローンの未払いや競売のリスクを抱えたまま生活することになります。
そこで、妻が住宅ローンを払っていくことができないかを検討する必要があります。妻が住宅ローンを払う方法としては、
- 免責的債務引受
- 借り換えによる債務者変更
- 併存的債務引受
- 履行引受
などが考えられます。
これらの方法については後ほどの「離婚後の住宅ローンの支払方法」で詳しく解説します。
※連帯債務者、連帯保証人の場合の注意点
たとえば、妻が連帯債務者、連帯保証人となっていて、家から出ていく場合は注意が必要です。なぜなら、連帯債務者、連帯保証人も住宅ローンの返済義務を負っており、家を出ていくからといって返済義務が免除されるわけではないからです。そこで、家から出て行くにしても、連帯債務者、連帯保証人から外れることを第一に考える必要がありますが、連帯債務者、連帯保証人から外れるには債権者と交渉し、同意を得る必要があります。夫が「自分一人で負担する」などと言って、夫婦の合意だけで連帯債務者、連帯保証人から外れることはできません。債権者の同意を得るには、代わりの連帯債務者、連帯保証人(相手の親・親族など)を立てる、家に住み続ける者(今回のケースでは夫)が住宅ローンを借り換えるなどの対応が必要です。
【STEP3】家の名義をどうするかを話し合う
次に、住宅ローンの支払いと同時に検討しなければならないのが家の名義です。
今回のケースでは、妻が家に住み続けるということですから、名義をそのままにしておくと、将来夫に家を勝手に売られて家に住めなくなってしまうおそれがあります。そのため、妻に名義を変更することが望ましいです。
もっとも、住宅ローンの契約(規約)には、家の名義変更は債権者の承諾がなければできないとの定めが設けられていることが多いです(※要確認)。これは、債権者は、家の名義人がその家に住み、住宅ローンをきちんと支払っていくという前提をもとに住宅ローンを貸しつけているからです。もし、債権者の承諾なく名義変更したことがバレると、債権者から住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。
今回のケースで、妻が名義変更を望む場合でも、妻に住宅ローンの支払能力がない場合は債権者の承諾を得られず、名義変更することが難しい場合がほとんどです。債権者の承諾を得ることが難しい場合は、そもそも妻が家に住み続ける選択がよいのかどうか、もう一度じっくり考えてみる必要があります。
※共有名義のままのリスク
上記は夫の単独名義の場合の話ですが、家の名義が共有名義の場合も注意が必要です。もし、離婚後も共有名義のままにしておくと、
・離婚後、夫婦の一方が再婚し、再婚相手との間に子をもうけた場合、権利関係が複雑になる
・家に住まない者(たとえば、夫)が住宅ローンの支払いを怠った場合、夫の持分が差し押えられて第三者に処分され、その第三者と共有関係をもつことになる
などのリスクがあります。
このように、離婚後、家の名義を共有名義にしておくことは望ましことではありませんから、家の名義が共有名義の場合は家を売ることができないか、夫婦いずれかの単独名義とできないかを検討する必要があります。
【STEP4】代償金の支払いの有無を検討する
最後に、代償金の支払いが必要かどうかを検討します。
今回のケースで、妻への家の引き渡しと住宅ローンの名義変更が可能な場合は、
代償金=(家の評価額-住宅ローン残高)÷分与割合
で計算します。
たとえば、財産分与の対象となる財産が家のみで「家の評価額2000万円、住宅ローン残高1500万円、分与割合を2分の1」のケースでは、
250万円=(2000万円-1500万円)÷2
となり、夫の取得分(250万円)と妻の取得分(250万円)との差額は0円ですから、代償金は発生しません。
一方、妻への家と住宅ローンの名義変更ができず、引き続き夫が住宅ローンを負担していく場合は、妻は2000万円の家を取得する一方で、夫は-1500万円の財産を取得することになります。
この場合、妻は「1750万円」を余計に取得したことになりますから、夫に1750万円を支払う形をとる必要があります。ただ、このような大金を一括で支払うことができない場合がほとんです(※)。
※一括で支払うことが難しい場合は、家と住宅ローンの名義を夫にしたまま
・夫との間で賃貸借契約を結び、夫に家賃を払っていく
・養育費を請求しない代わりに、夫が住宅ローンを払っていく
などの方法をとることが考えられます。
ただし、夫の住宅ローンの支払いが滞った場合は家を競売にかけられ、強制退去させられるおそれもありますので、こうした方法をとるかどうかは慎重に検討する必要があります。
離婚後の住宅ローンの支払方法
ここでは【STEP2】でご紹介した「免責的債務引受」、「借り換えによる債務者変更」、「併存的債務引受」、「履行引受」について解説します。なお、引き続き「家の名義:夫、住宅ローンの名義:夫」の家に妻と子供が住み続けるというケースを前提にしています。
免責的債務引受
免責的債務引受は、夫が住宅ローンの支払義務を免れる代わりに、妻が住宅ローンの支払義務を負うというものです。債権者の承諾が必要で、妻に住宅ローンの支払能力がないと承諾してくれないことがほとんどです。
借り換えによる債務者変更
借り換えによる債務者変更は、妻が新たに住宅ローンを組み、そのお金で今の住宅ローンを完済し、新たに組んだ住宅ローンを返済していくものです。これも妻に支払能力がないととることが難しい方法です。
併存的債務引受
併存的債務引受は、夫に加えて妻も住宅ローンの支払義務者となることです。債権者の承諾は必要ですが、免責的債務引受よりも承諾は得られやすいでしょう。夫と妻は連帯債務の関係になります。
履行引受
履行引受は、夫を住宅ローンの支払義務者にしたまま、妻が住宅ローンを払っていくというものです。夫と妻との合意のみで可能(債権者の承諾は不要)です。
家を財産分与する方法②(残債あり、オーバーローン)
オーバーローンの場合、家自体は財産分与の対象とはなりませんが、家や住宅ローンは残ったままです。そのまま放置して離婚すると、離婚後に思わぬトラブルに発展しかねませんから、離婚前に家や住宅ローンのことをきちんと取り決めておくことが大切です。
家を売る
まず、家を売ることです。
もっとも、住宅ローンが残っている家には抵当権(※)が設定されており、抵当権がついたままの家を買い取る人などいませんから、まずはこの抵当権を外す必要があります。
ところが、住宅ローンを完済しない限り、この抵当権を外すことができません。住宅ローンが完済されるまでは住宅ローンの未払いのリスクがあるからです。
そのため、オーバーローンで家を売るには、まずは家を売ることができるだけのお金を集めて住宅ローンを一括返済し、抵当権を外すことから始めなければいけません。
※抵当権
住宅ローンの支払いが滞った場合に、家を競売にかける(強制的に売る)ことができる債権者の権利。住宅ローンを組む際、債権者は必ずこの抵当権を家と土地に設定します。債権者は抵当権を実行し、競売で得たお金を住宅ローンの滞納分のお金に充てて回収します。
任意売却する
家を売りたいけど住宅ローンの一括返済が難しい、という場合に検討したいのが任意売却です。
任意売却とは、債務者(住宅ローンを借りている人)と債権者との話し合いで家を売る方法です。競売が債務者の意思と関わりなく(強制的に)家を売られてしまうのに対して、債務者の意思で家を売ることができることから「任意」売却と呼ばれています。
任意売却には、競売に比べて家を高値で売ることができる可能性がある、周囲に知られることなく手続きを進められる、家を売った後も住宅ローンを分割で返済していくことを認めてもらえることがある、などのメリットがあります。一方、ブラックリストに載り、ローンを組んだりクレジットカードを利用することが難しくなる可能性がある、などのデメリットもあります。
家を任意売却するには債権者との交渉し同意を得ることが必須です。なぜなら、任意売却するには債権者に抵当権を外してもらう必要があるからです。もっとも、債権者は簡単には同意しないでしょう。債権者との交渉は専門の業者に任せることが通常です。
家の名義人が住み続ける
たとえば、「家の名義:夫、住宅ローンの名義:夫」の家に夫が住み続ける、というような場合です。住宅ローンも引き続き夫が払っていきます。
注意しなければならないのは、妻が住宅ローンの連帯債務者・連帯保証人となっている場合です。これまで繰り返し述べているように、そのままの状態だと、離婚後妻も住宅ローンの返済義務を負い続けます。したがって、可能な限り、妻を連帯債務者・保証人から外すことができないか、債権者を含めて話し合う必要があります。
また、家が共有名義の場合は夫の単独名義にできないか(妻の共有持分を夫に移転できないか)も検討する必要があります。ただし、家が共有名義の場合、妻は連帯債務者・連帯保証人となっていることが多く、妻を連帯債務者・連帯保証人から外すことができなければ単独名義とすることも難しいでしょう。
家の名義人でない人が住み続ける
先のケースで、妻が家に住み続ける、というような場合です。
この場合も、アンダーローンの場合と同様、誰が住宅ローンを払うのか、払えるのか、住宅ローンはどうやって払っていくのか、家の名義をどうするのかきちんと話し合って決める必要がります。
住宅ローン、家の名義ともに変更が難しい場合は、夫が住宅ローンを支払っていくことに合意し、万が一、夫の返済が滞った場合は夫の財産を差し押さえることができる旨の離婚公正証書を作っておくことが対策として考えられます。
※離婚後も今の家に住み続ける最終手段として検討したいのが「リースバック」です。リースバックとは、今の家を不動産業者等に売り、不動産業者等と賃貸借契約(定期貸借契約)を結んで家賃を払いながら今の家に住み続ける方法です。ただし、先ほど述べたように、家を売るには抵当権を外す必要があり、オーバーローンの場合は「住宅ローン残債から売却価格を差し引いて余った金額」を用意して払う必要があります。また、売却価格が市場価格よりも安くなる(相場の7割程度)、家賃が相場よりも高い、定期貸借契約であるため今の家に住み続けることができる保証はない、などのデメリットもあります。
まとめ
今回のまとめです。
- 家を財産分与する場合は家の名義等を確認しておく
- 住宅ローン残債があるときはアンダーローンかオーバーローンかを確認する
- アンダーローンかオーバーローンかで分け方が異なる
- 家の名義をどうするか、住宅ローンは誰が払うかは慎重に判断する