- 家庭内別居とはどんな状態をいいますか?
- 家庭内別居のメリット、デメリットは何ですか?
- 家庭内別居を上手に乗り切るためのコツはありますか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
修復、あるいは離婚に向けて別居するとしても家庭内別居を選択される方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、そもそも家庭内別居とは何か解説した上で、家庭内別居のメリット・デメリット、家庭内別居を上手に乗り切るためのコツ、家庭内別居から修復または離婚するための方法などについて詳しく解説していきたいと思います。
この記事を書いた人
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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家庭内別居とは?~仮面夫婦との違い
家庭内別居とは離婚してもいいぐらい婚姻関係が破綻しかけているにもかかわらず、同居を続けているような状態のことをいうようです。法律上の定義はありません。
家庭内別居というためには、具体的には、
・寝室が別
・食事が別
・洗濯が別
・一緒に外出しない
・旅行に行っていない
・生活費が別
・性交渉がない
・会話がない
・離婚に向けた行動(※)をとっている
※専門家に依頼した離婚協議書を作成している、離婚届にサインしているなど
などの事情が一定期間継続していることが必要です。つまり、家庭内「別居」というぐらいですから、別居と似たような状況でなければ家庭内別居とはいえないということです。
反対に、日常会話はないけど生活費は共同で負担している、相手の食事も作っている、汚れ物は一緒に選択しているなど、別居とはいえない状況の場合は家庭内別居とはいえないでしょう。
なお、家庭内別居に似た概念として仮面夫婦があります。家庭内別居も仮面夫婦も婚姻関係が破綻しかけているという点では共通しています。
ただ、家庭内別居は内でも外でも婚姻関係が破綻しかけているのに対して、仮面夫婦は内では破綻しているものの外では破綻していないように取り繕っている(第三者から見れば仲のいい夫婦に見える)という点で異なります。
もっとも、婚姻関係が破綻しかけている点では共通しており、法的観点からは両者を区別する実益はあまりないといえます。
家庭内別居の法的意味
仮に家庭内別居の状態のときは、夫婦としての実態がない=婚姻関係が破綻していると判断されてしまう可能性があります(ただし、家庭内別居の目的や経緯、期間等にもよります)。
婚姻関係が破綻していると判断されると離婚請求が認められやすくなります。夫婦間の貞操義務は消滅し、破綻後の不倫は慰謝料請求の対象ではなくなります。一方、婚姻費用については、別居が解消される(離婚成立時)まで請求できます。
家庭内別居のメリット
家庭内別居には次のメリットがあります。
金銭的な負担が軽く済む
まず、金銭的な負担が軽く済むことです。
今の家を出ていくのであれば引っ越し費用や新生活のための費用(家具・家電の購入費)などがかかります。住む場所によっては敷金・礼金などの初期費用や家賃がかかります。一方、家庭内別居ではこうした費用が一切かかりません。あなたにとっても相手にとっても、金銭的な負担を抑えながら別居することができます。
子どもへの負担が軽く済む
次に、子どもへの負担が軽く済むことです。
慣れ親しんだ場所を離れ、新しい住まい、環境に慣れていくのは子どもにとって大きな負担です。一方、家庭内別居では子どもたちに今まで通りの生活を送らせることができます。ただし、両親の不仲が子どもに悪影響を及ぼす可能性もあるため、子どものことを考えると、必ずしも家庭内別居がメリットとはいえない側面もあります。
世間体を気にしなくて済む
次に、世間体を気にしなくて済むことです。
別居はマイナスな出来事とは限らないのですが、自分たちが考えている以上に世間の目が厳しい場合があります。近所との付き合いが濃い場合は、別居したことが知らず知らずのうちに周囲に伝わってしまう可能性があります。一方、家庭内別居は外見上は同居しているのと同じですから、世間体を気にせず生活できるという点はメリットといえそうです。
証拠集めに専念できる
最後に、不貞などの証拠集めに専念できることです。
不貞などの証拠の中には相手と同居しているからこそ集めることができるものがあります。一度別居してしまうとそうした証拠を集めることが難しくなってしまいます。また、相手の行動を監視できず、自由に行動させてしまうことになることも別居のデメリットといえます。証拠を集めきれていないなどという場合は、家庭内別居を選択するのも一つの方法といえます。
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家庭内別居のデメリット
次に、家庭内別居のデメリットは次のとおりです。
同居のストレスから解放されない
まず、同居のストレスから解放されないことです。
別居の最大のメリットは、相手と同じ屋根の下で暮らしていることによるストレスから解放されることではないでしょうか。一方、家庭内別居だと「別居」とはいえ、同じ屋根の下で暮らしていることに変わりありませんから、同居のストレスから完全に解放されるわけではありません。
子どもに悪影響を及ぼす可能性がある
次に、子どもに悪影響を及ぼす可能性があることです。
先ほど述べたとおり、家庭内別居は子どもにとってメリットの側面とデメリットの側面があります。子どもによっては親の仲が悪いのは自分のせいだと勘違いし、その結果自己肯定感が低下し、将来の発育、成長に影響を及ぼしてしまうことも考えられます。ただし、これは別居にもあてはまります。
修復が難しくなる可能性がある
最後に、修復が難しくなる可能性があることです。
夫婦関係を修復するには、お互いがきちんと向き合ってお互いの考えをぶつけ合う機会を設けるべきですが、家庭内別居してしまうとその機会を設ける気すら起こらず、夫婦の意思疎通の機会は今まで以上に減る可能性があります。なお、別居でも同じ現象が起こり得ますので、家庭内別居特有のデメリットとはいえません。
家庭内別居を有意義に過ごすためにやるべきこと
家庭内別居を有意義に過ごすためにやるべきことは次のとおりです。
家庭内別居の目的・ゴールを確認し合う
まず、何のために家庭内別居をし、家庭内別居した後、どういう関係でいたいのか相手とよく話し合って確認しておくことです。
家庭内別居をした後に選ぶべき道は修復か離婚かいずれかです。家庭内別居をはじめる段階では、どちらの選択をするのか結論を出すことは難しいかもしれませんが、お互いの考えを伝え合っておくだけでも、家庭内別居期間中の過ごし方は変わるはずです。二人で話し合うことが難しい場合は、カウンセラーなどの専門家を間に入れることも検討しましょう。
家庭内別居の期間を決める
次に、家庭内別居の期間を決めておくことです。
期間を設けておくことで、「○○までに○○をする」とお互いが明確な目的意識をもって過ごすことができます。期間を設けず家庭内別居に突入すると、目的意識のないままダラダラと過ごすことになり、何のために家庭内別居したのかわからなくなってしまう可能性があります。
家庭内別居中のルールを決める
次に、家庭内別居期間中のルールを決めることです。
家庭内別居を始めても、きちんとルールを決めなければお互いにストレスを抱えたまま生活しなければならず、夫婦関係は悪化する一方で、離婚するしか選択肢がない状況となってしまう可能性があります。何についてどんなルールを決めておくべきかについては、あとで詳しく解説します。
生活費(婚姻費用)の分担を決める
次に、生活費の分担を決めることです。
家庭内別居中も引き続き夫婦はお互いに生活費を分担し合う義務を負っています。別居中は、収入が少ない方が多い方に、収入が多くても子どもと一緒に暮らす方が他方に生活費を請求できることはご存知と思いますが、家庭内別居中でも収入が少ない方が多い方に請求できます。
家庭内別居中の生活費の計算方法
では、どのように家庭中別居中の生活費を計算すればいいのでしょうか?
この点、別居する際に使われる婚姻費用算定表(以下「算定表」といいます。)は、あくまで別居する夫婦の生活費を計算することを前提に作られたものですから、家庭内別居の場合に算定表をそのまま使うことはできません。
家庭内別居の生活費については確立された計算方法はなく、夫婦の収入や支出の状況等に応じて、柔軟に決めていくべきものとされています。その際に算定表が参考にされることはありますが、いくらか修正は必要です。
家賃は?
たとえば、家計の中でも大きなウェイトを占める「家賃(共益費などの諸費用を含む)」については、夫名義の口座から毎月引き落としされているケースが多いと思います。
仮に、そうした場合に算定表を使って生活費を計算するとなると、算定表から計算される生活費には家賃などの住居費も含まれていますから、妻は夫に家賃を負担させながら、家賃を含んだ生活費を受け取ること(二重取り)になってしまいます(※1)。
とはいえ、ここで夫が負担すべき生活費から毎月の家賃全額を差し引いてしまうと、今度は妻にとって不公平な結果となってしまいます(夫が妻に家賃を負担させながら家に住むことになってしまいます(※2))。
そのため、この場合は、夫婦の収入比に応じて負担額を計算する方法をとられることがあります。家賃のほか、夫婦の一方が負担しているものの、双方の利益になるような費用(水道光熱費、通信費(ネット回線代))などは、同様の方法で計算するのも一つの方法です。
※1 夫の年収>妻の年収であることを前提とします
※2 もし、別居で、夫が妻が住むアパートの家賃を負担するのであれば、算定表から計算される生活費から家賃を差し引いた額を夫が妻に支払う生活費とすることが公平です
住宅ローンは?
住宅ローン(夫単独名義の場合も、妻と連帯債務の場合も夫名義の口座から毎月引き落とされているものとします)については家賃と異なる側面があります。
すなわち、夫は妻の分の住居費を負担しているという点では家賃と同じですが、同時に住宅ローンの支払いによって不動産という資産を形成している側面があります。
したがって、この場合も夫が負担すべき生活費から毎月の住宅ローン全額を差し引くべきではありませんが、かといって全く差し引かないとなると、夫が住居費を含んだ婚姻費用と住宅ローンの支払いという二重の負担を強いられることになります。
そのため、この場合、簡易的な方法としては、夫の年収から住宅ローンの返済額(年額)を差し引いた額を算定表上の年収として生活費を計算する方法があります。
たとえば、夫の年収が500万円で年間の住宅ローンの返済額が150万円という場合、350万円を算定表上の年収として生活費を計算するということです。これにより、住宅ローンの負担分だけ、夫の生活費の負担が軽くなる形となります。
家庭内別居で決めるべきルール10選
家庭内別居をストレスなく過ごすには、家庭内別居期間中のルールを決めておくと安心です。具体的には次の項目に関するルールを決めておくことが考えられます。
①共有場所の使用方法
②共有部分の掃除の方法
③食事の方法
④洗濯の方法
⑤相手に対する対応
⑥子どもに対する対応
⑦実家に対する対応
⑧連絡手段
⑨休日の過ごし方
⑩禁止事項
以下、詳しく解説します。
①共有場所の使用方法
まず、
・キッチン
・リビング
・トイレ
・お風呂
・脱衣所
・洗面所
・階段
・踊り場
・玄関
などの共有場所の使用方法です。
相手と顔を合わせること、一緒の空間にいることに苦痛を感じる場合は、お互いが使用する時間帯等をきちんと決めておく必要があります。
②共有部分の掃除の方法
次に、共有部分の掃除の方法です。
今まで一方に任せていた場合でも、これを機に分担してみるのも一つの方法です。一方に任せる場合も分担する場合も掃除をする場所ごとに、掃除をする曜日、時間帯を決めておく必要があります。
③食事の方法
次に、食事の方法です。
まず、家で食事をとりたい場合は作る人を決める必要があります。一方だけが担当する必要はなく、交互に作る、あるいは、それぞれが違う時間帯に作るでもよいでしょう。食事をとる場所、時間帯もきちんと決めておく必要があります。
④洗濯の方法
次に、洗濯の方法です。
まず、別々に洗濯するか、一緒に洗濯するかです。別々の場合は洗濯する曜日、時間帯、一緒の場合は誰が洗濯機を動かすのか、洗濯物を干すのか、乾いた洗濯物を取り込むのか、取り込んだ洗濯物をどうするのか決めておく必要があります。
⑤相手に対する対応
次に、相手に対する対応です。
顔を合わせたときにどう対応するのか(挨拶をする、悪口は言わないなど)決めておく必要があります。子どもがいる場合は子どもに険悪な雰囲気が伝わってしまわないよう、お互いに対応を心がける必要があります。
⑥子どもに対する対応
次に、子どもに対する対応です。
子どもの世話・育児をどちらが担当するか、分担するとして何をどう分担するのかです。親権でもめたときは、どちらが子育てに関わってきたかが重要視されます。離婚後に子どもと一緒に生活することを考える場合は、子育てに積極的に関わっておくことが大切です。
⑦実家に対する対応
次に、実家に対する対応です。
まず、家庭内別居していることや夫婦の現状をそれぞれの実家に伝えるかどうかです。伝えることにより家族に何かあったときに協力を得られやすい一方で、協力を得られない、心配をかけるなどのデメリットもあります。もし、伝えない場合は、祝い事などのイベントのときにどう対応するか話し合って決めておく必要があります。
⑧連絡手段
次に、普段の連絡手段です。
家庭内別居期間中は顔を合わせる機会が少ない分、LINEなどで連絡を取り交わすことが多くなるでしょう。携帯電話番号やSNSのアカウントを変えたときに、いつ、どんな方法で相手に教えるかかもきちんと話し合っておくとよいでしょう。
⑨休日の過ごし方
次に、休日の過ごし方です。
お互いの休日が重なっている場合は顔を合わす可能性が高まりますから、どう過ごすのか決めておく必要があります。子どもがいる場合は、二人で面倒をみるのか一方が面倒をみるのか、後者の場合は一方に任すのか、交互にみるのか決めておく必要があります。
⑩禁止事項
最後に、家庭内別居期間中にお互いにやって欲しくないことです。
たとえば、
・不倫、浮気をしない
・借金をしない
・SNS等で誹謗中傷しない
・相手の悪口を言わない
ことなどを決めておくことが考えられます。
家庭内別居から修復する方法
家庭内別居から夫婦関係の修復を目指す場合は、これまでの自分を変える覚悟をもつことが何より大切です。
夫婦関係が悪くなると、何でもパートナーのせいにしてしまいがちですが、パートナーもあなたに同じような気持ちをもっています。ここで、お互いがお互いの責任を擦りつけるようでいると、今後に向けてまともに話し合いはできず、夫婦関係は悪化する一方でしょう。
そのため、まずはあなたから自分が変わっていく姿勢をパートナーに示すことが大切です。あなたの想いがパートナーに通じれば、パートナーも変わってくれます。反対に、いつまでも他責思考でいると、パートナーが変わることはないと思っていいでしょう。
他人を変えることは簡単ではありませんが、自分を変えることは他人を変えることに比べて難しくはありません。他人が変わることを求める前に、自分から変わることが大切です。
家庭内別居から離婚する方法
一方、家庭内別居から離婚を目指す場合は、パートナーに離婚を切り出す前に離婚の準備を進めます。
まずは、離婚後の収入・支出を洗い出し、両者を比べてみて収入が足りないようであれば、就職・転職など収入をあげる活動から始める必要があります。並行して離婚後の住まいも検討します。離婚後の住まいをどこにするかで、様々なことが決まってきます。
離婚の準備が整い、離婚後の生活の不安を取り除けた段階で、相手に離婚(別居)を切り出します。離婚の切り出し方やタイミングにも注意が必要です。離婚を考えている場合は、この段階で別居するのも一つの方法です。
離婚を切り出した後は、相手と養育費などの離婚条件について話し合います。話がまとまったら離婚協議書を完成させ、養育費などの金銭の取り決めをしたときは離婚公正証書の作成の手続きをとります。
家庭内別居から別居する際の注意点
家庭内別居から別居する際は、離婚前提で準備を進めていく必要があります。一度一度別居してしまうと修復は難しいことは覚悟していた方がいいかもしれません。
離婚にあたっては様々取り決めることがありますが、別居に踏み切る前に証拠資料を集めておきます。また、勝手に別居すると相手から「悪意の遺棄」を主張され、不利な条件で離婚しなければならなくなる可能性があります。
別居する際は一度相手に話し合いを切り出し、別居後の生活について取り決め、別居の同意を得てから別居するのが基本です。
家庭内別居の注意点
最後に、家庭内別居の注意点について解説します。
曖昧なまま始めない
まず、家庭内別居の目的やルールを曖昧にしたまま家庭内別居を始めないことです。
「家庭内別居を有意義に過ごすためにやるべきこと」でも述べたとおり、ただ何となく家庭内別居を続けているという状態が続かないように、家庭内別居を始めるにあたっては話し合いの機会を設け、家庭内別居の目的や期間、ルール等を共有しておくことが大切です。
子どもに悪影響を及ぼす可能性がある
次に、「家庭内別居のデメリット」でも述べたとおり、子どもに悪影響を及ぼす可能性があることです。
家庭内別居では、気づかないうちに、親の険悪な関係が子どもに伝わり、子どもに悪影響を及ぼしている可能性があります。子どものことを最優先に考えるのであれば、相手の理解も得た上で別居することも選択肢の一つといえます。
まとめ
今回のまとめです。
- 家庭内別居とは夫婦関係が破綻しかけている状況の中で同居を続けていること
- 家庭内別居が続くと夫婦関係が破綻していると判断されることがある
- 家庭内別居にはメリット・デメリットがある
- 家庭内別居を始めるにあたっては目的やルールを定めておく
- 家庭内別居は子どもに悪影響を及ぼす可能性があるので注意する