• 離婚公正証書を作成するには費用がかかりますか?
  • どのくらいの費用がかかりますか?
  • 作成費用は誰が負担するのですか?
  • 費用を支払うタイミング、支払い方法を知りたい

この記事では上記のような疑問、悩みにお応えします。

まず、離婚公正証書を作成するには費用を負担していただく必要があります。いくら負担する必要があるかは離婚公正証書に盛り込む内容(目的価額など)によって異なりますが、通常は、2万円~6万円の範囲内でおさまることが多いです。以下で詳しくみていきましょう。

この記事を書いた人

行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
行政書士・夫婦カウンセラー:小吹 淳
離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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離婚公正証書の費用の内訳

離婚公正証書の作成費用は「基本手数料」+「用紙代」+「送達手数料」+「送達証明書の発行費用」+「年金分割合意証書の作成費用」から成ります。

基本手数料

基本手数料は目的価額によって変動します。目的価額とは相手に何らかの請求をすることによって得られる利益(相手からすれば失われる不利益)のことです。たとえば、離婚公正証書に200万円の慰謝料を請求する旨を記載すれば200万円が目的価額となりますし、2000万円の評価額のついた相手名義の家を財産分与する旨を記載すれば2000万円が目的価額となります。基本手数料と目的価額との関係は以下のとおりです。

目的価額基本手数料
100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下11000円
500万円を超え1000万円以下17000円
1000万円を超え3000万円以下23000円
3000万円を超え5000万円以下29000円
5000万円を超え1億円以下43000円
1億円を超え3億円以下43000円に超過額5000万円ごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5000円に超過額5000万円ごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合24万9000円に超過額5000万円ごとに8000円を加算した額

参照:10手数料 | 日本公証人連合会

なお、養育費を分割で支払う旨の合意をした場合は「月々の金額×12カ月×年数(10年を超える場合は10年とする)×養育費を請求できる子どもの人数」で目的価額を計算します。

用紙代

離婚公正証書は「原本」、「正本」、「謄本」(※)の3種類が作成されます。原本は4ページ目まで無料です。正本と謄本は1ページ目から250円がかかります。たとえば、4ページの離婚公正証書を作った場合は2000円(原本0円、正本1000円(=250×4)、謄本1000円(=250×4))の用紙代がかかります。

※原本は公証役場で保管(原則20年)されます。正本と謄本は原本の写しで、正本はお金の支払いを受ける権利者側、謄本はお金の支払い義務を負う義務者側に交付されます。

送達手数料

送達手数料は公証役場が謄本を義務者に送るときにかかる事務手数料です。送達の方法には公証役場で義務者に直接手渡す「交付送達」と郵送で送達する「特別送達」があります。交付送達の場合は1,400円が特別送達の場合は1,400円に加えて1,110円~1,240円の郵便代がかかります。

送達証明書の発行費用

送達証明書とは、公証役場が離婚公正証書の謄本を義務者に送達したことを証明する書面です。送達証明書は、後日、強制執行の手続きをとる際に必要となる書面ですので、必ず交付を受けておきます。交付送達する場合は、当日申請すればその場で交付を受けることができます。この送達証明書の発行手数料として250円かかります。

年金分割合意証書の作成費用

離婚するにあたって年金分割について合意する場合は、離婚公正証書とは別に年金分割合意証書を作成します。年金分割合意証書の作成費用は5,500円です(離婚公正証書の中に年金分割の条項を盛り込んだ場合は11,000円かかってしまいます)。

離婚公正証書の費用の計算例

では、「養育費については2人の子ども1人あたりにつき月4万円を15年間支払い続ける、慰謝料200万円を支払う」という合意内容を盛り込んだ離婚公正証書(枚数4ページ)を作ったと仮定して、離婚公正証書の費用がいくらかかるのかみていきましょう。

まず、養育費に関する目的価額は「月々の金額×12カ月×年数(10年を超える場合は10年とする)×養育費を請求できる子どもの人数」で計算しますから「4×12×10×2」で960万円となります。上記の表より、目的価額が960万円の基本手数料は17,000円です。次に、慰謝料の目的価額は200万円、目的価額が200万円の基本手数料は7,000円です。よって、離婚公正証書の基本手数料は24,000円となります。

次に、用紙代は、先ほどの計算のとおり2000円です。あとは、これに送達手数料(1,400円~2,640円)、送達証明書の発行費用(250円)、年金分割合意証書の作成費用(5,500円)が加算された金額が離婚公正証書の費用と考えておけばよいでしょう。

離婚公正証書の費用は誰が負担する?

離婚公正証書の費用は夫婦で負担していただく必要があります。負担の方法としては、夫婦で折半するか、夫婦の一方が負担するか、です。夫婦の一方、あるいは双方が手続きを代理人に任せた場合も同様に負担する必要があります。

夫婦の一方が負担する場合は、離婚公正証書を作成することによりメリットを受ける方が負担すれば、離婚公正証書を作成することにつき相手の同意も得られやすくなります。

離婚公正証書を作成する場合は、離婚公正証書の費用負担をめぐってもめないよう夫婦できちんと話し合い、離婚公正証書の文案(公証人との面談の際にもっていく書面)に記載しておくと安心です。

費用を払うタイミングと方法

離婚公正証書の費用は、公証役場で離婚公正証書にサインし、正本を受け取った後に公証役場で支払います。支払い方法は、以前は現金払いしかできませんでしたが、令和4年4月1日からクレジットカード払いもできるようになりました。ただし、クレジットカード払いができるのは基本手数料についてだけです。送達手数料、印紙代等は現金で払う必要があります。実際の金額は、公証人が離婚公正証書の原案を作った後、公証役場から教えてもらいます。

参照:クレジットカード決済について | 日本公証人連合会

離婚公正証書の費用以外の費用

離婚公正証書の作成手続きを弁護士や行政書士などの専門家に依頼した場合は報酬金がかかります。不動産の所有権移転登記を司法書士に依頼した場合は司法書士の報酬金がかかります。離婚公正証書の費用と同じく、負担方法について夫婦でよく話し合っておくことが大切です。

離婚公正証書の費用に関する注意点

離婚公正証書の費用に関する注意点は以下のとおりです。

キャンセルする場合も費用が発生する可能性も

公証役場に離婚公正証書の作成を依頼した後、何らかの事情で作成をキャンセルしたいという場合も出てくるかもしれません。しかし、公証役場からすれば、依頼を受けた時点から様々な事務負担が発生しますから、依頼後に作成をキャンセルした場合でも、事務負担の程度に応じて費用を負担しなければならない場合があります。

作成費用を節約しようとしない

先ほど述べたとおり、離婚公正証書の費用は目的価額によって増減しますが、費用を節約しようとするあまり離婚公正証書に盛り込む内容や目的価額について大幅に譲歩してはいけません。離婚公正証書の費用は離婚後の生活を安心して送るため、離婚後のトラブルを避けるための必要経費と考えましょう。