- 養育費に連帯保証人をつけることはできますか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
借金をするとき、家を借りるとき、借金や家賃等を滞りなく払ってもらうために、貸主が借主に連帯保証人を立てるよう求めることがあるかと思います。では、養育費では相手に連帯保証人をつけるよう求めることはできるのでしょうか?
この記事では、養育費で連帯保証人をつけることができるかどうか、つけるための条件、つけるときの注意点などについて詳しく解説していきたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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養育費に連帯保証人をつけることはできる?
まず、結論から申し上げると、養育費に連帯保証人をつけることは可能です。
養育費の支払いも借金の支払いなどと同じく、お金を支払う義務であることに変わりはないからです。ただし、実際に連帯保証人をつけるには、候補者となる人の同意を得るなど、後で解説する「条件」をクリアしなければいけません。
養育費に連帯保証人をつけるメリット
養育費を請求する人(以下「権利者」といいます。)にとってのメリットは、養育費の未払いのリスクを抑えることができることです。万が一、相手(以下、養育費を払う義務がある人という意味で「義務者」といいます。)が養育費を払わない場合は連帯保証人に養育費の支払いを請求することで、養育費を回収することができます。
一方、義務者にとってのメリットは、離婚や離婚条件の合意を得やすくなることです。権利者が養育費をきちんと払ってくれるのか不安を抱いており、離婚や離婚条件について合意できないときに、交渉のカードとして経済的信用力のある連帯保証人をつけることを提案することで、合意を得られやすくなす。
連帯保証人にはデメリットしかない
なお、連帯保証人にはメリットはなくデメリットしかありません。権利者から請求されれば義務者と同様に払う義務がありますが、払ったからといって自分に何か利益が生じるわけではありません。そのため、実際に連帯保証人になってくれるのは親のほか兄弟姉妹など、自分の身近な存在の人に限られるでしょう。
公証人や家庭裁判所は消極的
養育費に連帯保証人をつけることはできますが、公正証書を作る公証人や家庭裁判所は養育費に連帯保証人をつけることには消極的です。公証人や裁判所が養育費に連帯保証人をつける必要性や相当性を認めない限り、連帯保証人をつけることは難しいかもしれません。
これは、養育費の支払義務は親の子どもに対する扶養義務(生活保持義務)に基づくものであるところ、親の子どもに対する直接の扶養義務は親自身が負うものであって、親以外の第三者に負わせることは適当ではないという考えによるものです。ちなみに、祖父母の子どもに対する扶養義務は生活保持義務よりも程度の低い生活扶助義務と考えられています。
養育費の連帯保証契約を成立させるための条件
養育費の連帯保証は、権利者と連帯保証人になる人との間で取り交わす契約の一種です。有効な連帯保証の契約を成立させるには次の条件をクリアする必要があります。
- 行為能力、弁済力を有すること
- 権利者と連帯保証人との間で契約すること
- 契約書面を取り交わすこと
- 契約書面に限度額を書くこと
- 義務者から連帯保証人に情報提供すること
行為能力、弁済力を有すること
まず、養育費の連帯保証人となる人が次の条件をクリアすることです。
① 行為能力者であること
② 弁済をする資力を有すること
行為能力者(①)とは、単独で、完全に法律行為を行うことのできる能力を有する人のことをいいます。
未成年者(18歳未満の者)は行為能力者ではないため、未成年者は養育費の連帯保証人になることはできませんし、成年者(18歳以上の者)でも一定の判断能力を欠く人は養育費の連帯保証人になることはできません。
また、行為能力を有する人であっても、養育費を払えるだけの資力がなければ養育費に連帯保証人をつける意味がありません。そのため、養育費を払えるだけの資力があることも養育費の連帯保証人になることの条件とされています(②)。
権利者と連帯保証人との間で契約すること
次に、権利者と連帯保証人との間で契約することです。
権利者が義務者に連帯保証人をつけるよう頼み、義務者がこれを承諾しただけでは契約は成立しません。また、義務者が親などに連帯保証人になってくれるよう頼み、親がこれを承諾しただけでも契約は成立しません。
契約書面を取り交わすこと
次に、権利者と連帯保証人との間で契約書面を取り交わすことです。口約束だけでは有効な契約が成立したことにはなりません。
離婚協議書、離婚公正証書を作る場合は、その中に連帯保証の条項を設けることができます。この場合、連帯保証人の署名・押印も必要です。公正証書に連帯保証の条項を設けることができる場合は、連帯保証人が直接署名・押印するか、義務者が連帯保証人から委任を受けて代わりに署名・押印する方法が考えられます。
契約書面に限度額を書くこと
次に、契約書面の連帯保証の条項に「限度額(極度額)」を書くことです。限度額とは連帯保証人が保証できる限度額のことです。
養育費の支払期間が長期にわたる場合は総額が大きくなりますから、限度額を定めなければ連帯保証人に過度な責任を負わせることになりかねません。その結果、連帯保証人になってくれる人を見つけることができず、権利者・義務者双方にとっても都合が悪くなります。こうした事態を避けるために限度額の記載が必須とされています。
義務者から連帯保証人に情報提供すること
次に、義務者から連帯保証人に義務者の経済状態に関する情報を提供することです。
連帯保証人が権利者と連帯保証契約をするにあたっては、義務者の経済状態がどうなのか気になるところだと思います。こうした連帯保証人の期待に応えるため情報提供が義務づけられています。仮に提供しなかった場合は契約が取り消される場合があります。なお、限度額と異なり、書面への記載は義務付けられていませんが、契約の取消しを防ぐためには書面に記載していた方が安心です。
養育費に連帯保証人をつける場合の離婚協議書の書き方
離婚協議書に盛り込む連帯保証の条項例は次のとおりです。離婚協議書を作る際の参考にしてみてください。
第○条(養育費)
1 (略)
2 甲の父○○○○(以下「丁」という。)は、乙に対し、甲の前項の養育費の支払いについて極度額○○○万円の範囲内で連帯して保証し、丁は、甲と連帯して、乙に対し、前項と同様の期日及び方法に従って、前項の金員を支払う。ただし、その連帯保証の期間は、丁が生存する期間とする。
3 甲は、前項記載の連帯保証契約に先立ち、丁に対し、以下の項目について情報の提供を行い、丁は、情報の提供を受けたことを確認する。
⑴ 甲の財産及び収支の状況
⑵ 甲が主債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
⑶ 甲が主債務について乙に担保を提供していない事実
養育費に連帯保証人つけることができない場合の対処法
ここでは、連帯保証人が見つからず、養育費に連帯保証人をつけることができない場合の対処法について解説します。
強制力のある公正証書を作成する
まず、相手の給与等の財産を差し押さえる手続きをとることが可能となる公正証書(※)を作成することです。
そもそも養育費に連帯保証人をつけるのは義務者の養育費の未払いに備えるためです。強制力のある公正証書を作ることも同じ目的・効果があります。強制力のある公正証書を作るには、義務者の同意が必要です。
※正確には「強制執行認諾文言付公正証書」といいます。
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連帯保証以外による保証を検討する
次に、連帯保証以外による保証を検討することです。
連帯保証は「人」による担保を提供するという意味で人的担保といいますが、担保には人的担保のほかにも「物」や「債権・債務」による物的担保があります。「物」による担保としては、車や高級品に譲渡担保権を設定することなどが考えられます。「債権・債務」による担保としては、相手が有している預金口座の預金債権に担保権を設定することなどが考えられます。
養育費の連帯保証人に関する注意点
最後に、養育費の連帯保証人に関する注意点について解説します。
強制はできない
まず、第三者に連帯保証人になるよう強制はできないことです。
連帯保証の契約は権利者と連帯保証人との間の合意により成立します。第三者の合意がない契約は無効ですし、詐欺や強制によって無理やり合意させた場合はあとで取り消されてしまう可能性があるため注意が必要です。
相手が選んだ第三者と簡単に契約しない
次に、相手が選んだ第三者と簡単に契約しないことです。
先ほど述べたとおり、そもそも第三者に資力がなければ連帯保証人になれませんし、つける意味もありません。連帯保証人の資力に不安な場合は、第三者の資力を証明する証拠を提出させるなどの対応が必要です。
義務者が死亡したら連帯保証債務は消滅する
次に、養育費を払う義務者が死亡した場合は、連帯保証債務は消滅することです。
連帯保証債務は義務者の養育費の支払義務があってはじめて成立するものです。そのため、義務者が死亡し、養育費の支払義務が消滅した場合はそれに伴って連帯保証債務も消滅します。また、養育費の支払義務は義務者の固有の義務ですから、義務者の親などへは相続によって引き継がれません。
連帯保証債務は相続されることがある
次に、連帯保証債務は相続されることがあることです。
連帯保証債務は連帯保証人固有の債務とはいえません。そのため、連帯保証人が死亡した場合は相続人に相続される可能性があります。こうした事態を避けるには、「連帯保証の期間は、○が生存する期間とする。」などと、連帯保証の期間を設けておくことが考えられます。
連帯保証人の負担が変わる
最後に、連帯保証人の負担が変わる可能性があることです。
すなわち、義務者が支払う養育費の金額が減額された場合は連帯保証人が支払う金額もその額に減額されます。一方、増額された場合は、連帯保証人が契約当初に設定された金額以上の額の負担を負うことはありません。
まとめ
今回のまとめです。
- 養育費に連帯保証人をつけることはできる
- 公証人や裁判所は養育費に連帯保証人をつけることに消極的
- 連帯保証は権利者と連帯保証人との間の契約の一種
- 有効な契約を成立させるには法律上の条件をクリアしておく必要がある
- 養育費の未払いは公正証書の作成などで担保できる