- 強制執行の手続きを知りたい
この記事ではこのような悩みにお応えします。
養育費が未払いとなったときにとりうる最終手段が強制執行です。強制執行は相手の意思に関係なく、相手の財産から養育費を回収できる強力な手段といっていいでしょう。
もっとも、強制執行の手続きは難しく、準備も大変なため、せっかく公正証書や調停調書などの強制力のある書面を作っていても、強制執行の手続きまで踏み込めないという方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、公正証書などの書面を絵に描いた餅に終わらせないために、法律の素人である一般の方でも、できる限り自分で強制執行の手続きができるよう、強制執行の条件、手続・流れ、注意点などについて、図を交えながら解説してみました。
なお、養育費が未払いになったからといって、いきなり強制執行の手続きをとることが望ましくない場合もあります。その他の方法や未払いにならないための対策については以下の関連記事で解説していますので参考にしてみてください。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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養育費の強制執行をするための条件
まず、養育費の強制執行の手続きをとる前に、手続きをとるための条件がそろっているかどうかを確認しておく必要があります。養育費の強制執行の手続きをとるための条件は次のとおりです。
・債務名義をもっていること
・送達証明書をもっていること
・執行文をもっていること
・相手の住所を特定できていること
・差し押さえ可能な財産を特定できていること
以下、詳しく解説します。
債務名義をもっていること
まず、債務名義をもっていることです。
債務名義とは、相手に養育費の支払いを請求する権利があることを認めた公的な書面(公文書)です。以下のように、債務名義は離婚の方法によって異なります。
協議離婚 | 強制執行認諾文言付き公正証書 |
調停調書 | 調停調書の正本 |
審判離婚 | 審判書の正本 |
和解離婚 | 和解調書の正本 |
認諾離婚 | 認諾調書の正本 |
判決離婚 | 判決書の正本 |
※正本とは権利者に交付される原本の写しで、原本と同じ効力があります
公正証書・調停調書・和解調書の正本についてはすでにもっている方も多いと思いますが、もし、紛失してしまった場合は、公正証書の正本は公正証書を作った公証役場に、調停調書・和解調書の正本は手続きをした家庭裁判所に申請して取り寄せる必要があります。審判書・認諾調書・判決書の正本についても同様です。
なお、離婚協議書は私的な書面(私文書)のため債務名義にはなりません。手元に離婚協議書しかないという方は、そのままでは強制執行を申し立てることはできません。
送達証明書をもっていること
次に、送達証明書をもっていることです。
送達証明書とは、養育費を払う義務がある相手(義務者)に公正証書の謄本(公正証書の場合、義務者に交付される写しを「謄本」といいます)や調停調書などの正本が送達されたことを証明する書面です。
夫婦で公正証書に調印(サイン)した方は、その日に相手に公正証書の謄本が渡され(交付送達)、公証役場から送達証明書を受け取ることができます。義務者が代理を頼み調印日に出席しなかった場合は、公証役場から義務者に公正証書の謄本が特別送達され、送達された後、代理人から送達証明書を受け取ります。
一方、調停以降の手続きで離婚した方については、家庭裁判所に対して義務者に正本を送達するよう申請する必要があります。家庭裁判所が申請を受け、義務者に正本を送達した後、送達証明書の発行を申請して取り寄せることができます。
特別送達される公正証書の謄本は配達員から相手に直接手渡しで渡されます。そのため、公正証書を作成した後、相手が所在不明となった場合にはいつまでたっても相手に公正証書の謄本を送達できず、送達証明書の交付を受けることができない(つまり、強制執行の申立てをできない)状態が続いてしまう可能性があります。一方、交付送達の場合はこのようなリスクはありません。義務者に確実に公正証書の謄本を受け取らせるという意味では、公正証書へのサインの手続きはできるだけ夫婦二人で行うか、少なくとも義務者には公証役場に足を運んでもらった方がよいでしょう。
執行文をもっていること
次に、執行文をもっていることです(※1)。
執行文とは「この債務名義は強制執行できる書面です。」と、強制執行のお墨付きを与えてくれる書面です。養育費などのお金の支払いに関しては、請求期限が到来していないと強制執行の手続きをとることができないため、期限が到来していて強制執行できる状態であることを公的機関に証明してもらう必要があります。そのための書面が執行文です(※2)。
債務名義が公正証書の正本の場合は公正証書を作った公証役場に対して申請して取り寄せる必要があります(※3)。それ以外の債務名義に関する執行文を取り寄せる場合は、債務名義を取得した家庭裁判所に対して執行文付与の申立てをする必要があります。
※1 執行文が必要となる債務名義は養育費の取り決めをした調停調書の正本及び審判書の正本以外の債務名義です。
※2養育費については一度請求期限が到来した養育費があって強制執行の手続きをとると、その後の未到来分の養育費についても強制執行の手続きをとることができます
※3 ただし、債務名義の内容によっては、調印日当日に申請すれば執行文を発行してくれることがあります
相手の住所を特定できていること
次に、相手の住所を特定できていることです。
強制執行の手続きをとるにあたって相手の住所を特定する必要があるのは、一つは強制執行の申立ては相手の住所地を管轄する地方(「家庭」ではない)裁判所に対する行う必要があるためです。
この点、債務名義には、通常、相手の住所地が書かれていますから、債務名義に書かれてある住所地を管轄する地方裁判所に対して強制執行を申し立てることが考えられます。また、相手が債務名義に書かれてある住所地とは異なる住所地に住んでいることがわかっている場合には、現在の住所地を管轄する地方裁判所に対して強制執行を申し立てることが考えられます。この場合は、裁判所から、債務名義に書かれたある住所地から現在の住所地までのつながりがわかる書類(戸籍の附票など)の提出を求められる可能性があります。
このように、相手の住所を特定しておかなければ、強制執行を申し立てる裁判所がわからなくなるほか、あとで解説する「財産開示手続」の申立てができない、裁判所からの差押え命令が相手に送達されない、ということになってしまいます。
関連記事
差し押さえ可能な財産を特定できていること
最後に、差し押さえ可能な財産を特定できていることです。
養育費の強制執行の最終目標は相手の財産を差し押さえて、そこから養育費の未払い分を回収することにあります。したがって、強制執行の手続きをとるにあたっては、相手のどの財産を差し押さえるのか特定しておく必要があります。
養育費の強制執行では給与を差し押さえることがほとんど
差し押さえの対象となりうる財産としては、
・給与(ボーナスも含む)
・預貯金
・不動産
・車
・株、投資信託
・退職金
などがありますが、養育費については長期間にわたって請求し続けるものであるため、相手の定期的な収入である給与を差し押さえることを前提に手続きを進めていくことがほとんどです。
給与を差し押さえるメリット・デメリット
給与を差し押さえる理由(メリット)は、
- 安定的に回収を図れる
- 給与(※)の2分の1を差し押さえることができる
※所得税、社会保険料、年金などを差し引いた後の額(いわゆる手取り額) - 養育費の未払い分だけでなく、将来の養育費の分まで差し押さえできる
- 不動産などと異なり、予納金を納める必要がない
ことにあります。一方、
- 相手が転職、退職する可能性がある
- 転職、退職されると、差し押さえの効力はなくなる
→相手の会社を特定することからやり直す必要がある
というデメリットがあることにも注意が必要です。
給与を差し押さえるということは?
給与を差し押さえるというのは、相手が受け取った「現金」や「預貯金(預金債権)」を差し押さえるというのではなく、相手(債務者)が会社(第三債務者)に対して給与を払うよう請求できる権利(債権)を差し押さえるということになります。
あとで解説するとおり、裁判所は給与の差押え決定をした後、会社に対して「給与を養育費の回収に充てるため、相手の給与が差し押さえました。今後は相手に給与を払ってはいけません。」という内容の「債権差押命令書」を送る必要があります。そのため、強制執行の手続きをとるにあたっては、相手が勤めている会社名や会社の所在地も特定しておく必要があります。
相手の会社を調べる方法
相手の会社を知らない場合は「第三者からの情報取得手続(以下「情報取得手続」といいます)」を使うことが考えらます。この手続きを使うにも、地方裁判所に対して申立てを行う必要がありますが、申立てが認めれれば市区町村や日本年金機構等の第三者から相手の会社に関する情報を得ることができます。
【第三者からの情報取得手続の流れ】
①申立てに必要な書面、費用をそろえる
↓
②申立てをする
※申立て先は相手の住所地を管轄する地方裁判所
↓
③裁判所が申し立てを→却下する→不服申立て?
※決定正本を受け取った日から1週間以内
↓
認める
↓
④裁判所が第三者に情報提供命令の正本を送る
↓
⑤第三者が裁判所に会社の情報を提供する
↓
⑥裁判所から申立人に情報提供書の写しが送られる
※相手にも会社の情報が提供されたことが通知される
なお、情報取得手続を使うには、前提として申立ての日より前3年以内に「財産開示手続」という別の手続きをとっておく必要があるなどの条件をクリアしておく必要があります。
養育費の強制執行の流れ
ここまで解説してきた条件がそろったら、申立てに向けた準備をはじめます。ここからは申立てに向けた準備から実際に取立て(お金を回収する)までの流れについて解説していきます。
①申立てに必要な書類等を準備する
↓
②裁判所に①で準備したものを提出する
↓
③裁判所が債権差押命令の正本、送達通知書を送る
↓
④給与を取り立てる
↓
⑤裁判所に取立書等を提出する
①申立てに必要な書類等を準備する
養育費の強制執行の申立てをするために必要な書類は次のとおりです。
□ 債務名義
□ 送達証明書
□ 執行文
※債務名義が調停調書の正本(養育費の取り決め内容が含まれているもの)、審判書の正本の場合は不要
□ 確定証明書
※債務名義が審判書の正本の場合に必要
■ 申立書一式
・□ 債権差押命令申立書
※使う書式はケースによって異なります。以下で紹介する書式は「過去の未払い分に加えて将来の養育費に関する給与を差し押さえる場合」に使う書式です。
・□ 当事者目録
・□ 請求債権目録
※使う書式はケースにより異なります。以下で紹介する書式は「過去の未払い分に加えて将来の養育費に関する給与を差し押さえる場合」で債務名義が「公正証書の正本」の場合に使う書式です。
・□ 差押債権目録
※給与債権の種類によって使う書式が異なります。以下で紹介する書式は「民間会社への給与債権及び退職金債権」を差し押さえる場合に使う書式です
□ 資格証明書
□ 申立て手数料
※申立人(債権者)1人、相手(債務者)1人、債務名義1通の場合は4,000円
※手数料分の収入印紙を債権差押命令申立書に貼る
□ 郵便切手代
※切手の種類、枚数は裁判所に要問い合わせ
※申立書に同封する
□ 長型3号の封筒
※債権者の郵便番号・住所、氏名を書いたもの
※封筒の数は「2通+会社(第三債務者)の数」
□ 戸籍謄本
※債権者または債務者の氏名、住所が債務名義に書かれたものと異なる場合に必要
※債務名義に書かれた氏名、住所と現在の氏名、住所とのつながりがわかるもの
※申立日から1か月以内(債権者の場合は2か月以内)に発行されたもの
□ 戸籍の附票
※債権者または債務者の氏名、住所が債務名義に書かれたものと異なる場合に必要
※債務名義に書かれた氏名、住所と現在の氏名、住所とのつながりがわかるもの
※申立日から1か月以内(債権者の場合は2か月以内)に発行されたもの
債権差押命令申立書
債権差押命令申立書は、相手の「給与債権」を差し押さえる命令を出してください、と裁判所に申し立てるための書面です。
①過去の未払い分の養育費に加えて将来の養育費に関する給与を差し押さえる場合にはこの記載のある書式を使っているかを確認してください。
②申立先の地方裁判所を書きます。「民事第○○部」については書く必要があるのか、書く必要がある場合は何部か、裁判所に問い合わせて確認しましょう。
③申立書をつくる年月日を書きます。
④債権者の名前、電話番号を書きます(裁判所から相手に電話番号を教えることはありません)。FAXがない場合は書かなくても大丈夫です。
⑤「□」にチェックを入れます。なお、陳述催告とは、差し押さえた債権があるかないかなどについて、第三債務者に対して回答を求める手続きです。チェックを入れると、裁判所が第三債務者に対して差押命令を出した後、第三債務者から債権者に対して回答書が送られてきます。
⑥申立書と同時に出す書類の通数を書きます。
当事者目録
当事者目録は、誰が養育費を請求する人(債権者)か、誰が養育費を払う人(債務者)か、義務者の勤める会社(第三債務者)はどこかを裁判所に教えるための書面です。
①債権者の郵便番号・住所、氏名、送達場所(上の住所と同じ場合は「□上記住所」にチェック、異なる場合は別の住所を書く)、連絡先を書きます。
②債務者の郵便番号・住所、氏名を書きます。
③第三債務者の郵便番号・所在地、会社名及び会社の代表者(取締役)の氏名を書きます。
なお、債務名義上の住所と今の住所が異なる場合は下の書式を使います。
請求債権目録
請求債権目録は、相手の給与から回収したい養育費について書く書面です(上は債務名義が公正証書の場合の請求債権目録で、他の債務名義の場合は書式が異なります)。
①債権差押命令申立書と同じく、過去の未払い分の養育費に加えて将来の養育費に関する給与を差し押さえる場合にはこの記載のある書式を使ってください。
※②から⑧は公正証書の正本を見ながら書きましょう。
②公正証書をつくった公証役場、公証人の氏名、作成番号を書きます。
③「確定期限が到来している債権」とは「請求期限が過ぎている未払いの養育費」のことです。「執行費用」とは強制執行を申し立てるためにかかる費用で、未払いの養育費に含めて回収することができます。
④⑤と⑦の合計金額を書きます。
⑤未払いの養育費の合計金額を書きます。
⑥養育費の取り決め内容を書きます。
⑦執行費用の合計金額を書きます。
⑧「確定期限が到来していない定期金債権」とは「まだ請求期限がきていない養育費」のことです。
差押債権目録
差押債権目録は、差押え対象の債権(給与債権)に関する目録です。
①債権差押命令申申立書、請求債権目録と同じように、過去の未払い分の養育費に加えて将来の養育費に関する給与を差し押さえる場合にはこの記載のある書式を使ってください。
②請求債権目録の④で書いた金額を書きます。
③請求債権目録の⑧で書いた内容を書きます。
④債務者の勤務先を書きます。
⑤②、③で書いた金額を回収できるまで債務者の給与を差し押さえます、という内容が書かれています。
⑥将来の養育費については、将来の養育費の請求期限が到来した後、相手の給与日以後の給与について差し押さえます、という内容が書かれています。
⑦③で書いた金額が複数ある場合は「⑴、⑵・・」などと書きます。
資格証明書
資格証明書とは「(商業)登記事項証明書(または代表者事項証明書)」のことで、会社名や会社の所在地、代表者の氏名などがわかる書類です。給与債権を差し押さえる場合は、第三債務者の会社名や所在地、代表者の氏名を公的に証明する資格証明書が必要です。
どこの法務局からでも、全国各地にある会社の資格証明書を取得できます。また、法務局に行かずにオンラインでも取り寄せることができます。
②裁判所に①で準備したものを提出する
書類等の準備ができたら、相手の住所地を管轄する地方裁判所に対して書類等を提出します。提出は郵送でも可能ですが、窓口にもっていって提出した場合、軽微な不備であればその場で修正して提出することができますので、できる限り窓口にもっていって提出するようにしましょう(印鑑持参)。
③裁判所が債権差押命令の正本、送達通知書を送る
裁判所が①の書類等を審査した結果、不備がない場合は差押命令を発出します。具体的には、裁判所が債権者、債務者、第三債務者に「債権差押命令の正本」を送ります(※)。
また、債務者と第三債務者が債権差押命令を受け取った後、裁判所は債権者に「送達通知書(債務者と第三債務者がいつ正本を受け取ったかがわかる書類)」を送ります。
債権差押命令申立書の「□ 第三者債務者に対し、陳述催告の申立てをする。」にチェックを入れた方は、第三債務者から回答書が送られてきますので受け取り、内容を確認してください。
※第三債務者が正本を受け取った時点で、以後、債務者に対して給与を支払うことが禁止されます。
④給与を取り立てる
債務者に債権差押命令の正本が送達された日から1週間を経過した後、債権者が債務者の給与を取り立てる(回収できる)権利(取立権)が発生し、給与を取り立てることができるようになります。正本の送達日は先の送達通知書で確認できます。
どのような方法で給与を取り立てるかは会社の担当者と連絡を取り合って決める必要がありますが、通常、担当者に口座情報を教え、口座振り込みとしてもらうことが多いでしょう。
⑤裁判所に取立届等を提出する
第三債務者から給与を取り立てたときは裁判所に対し「取立届」を、取立てを終えたときは裁判所に対し「取立完了届」を出す必要があります。
養育費の強制執行に関するよくある疑問
最後に、養育費の強制執行を行う際によくある疑問について回答します。
強制執行の申立ては自分でできますか?
自分で申し立てることもできます(実際に自分で申立てて、未払い分を全額回収した方もおられます)。ただ、養育費を回数する手段は強制執行だけに限らないため、申し立てる前にそもそも強制執行すべきか慎重に判断する必要があります。ここの判断を誤ると、相手との関係が悪化してしまい、養育費を回収することをますます難しくしてしまうおそれがあります。また、これまで解説してきたとおり、強制執行を申し立てるには様々な知識を身につける必要がありますし、手間暇がかかります。養育費の未払いでお困りの場合は、今後の対応を含めて弁護士に相談した方がよいでしょう。
給与を差し押さえた後、養育費はどうやって回収するのですか?
先ほど解説したとおり、実際の回収はあなた自身で行う必要があります。取立権が発生した後、会社に電話する、あるいは書面を送ってコンタクトをとり、取立て方法について話し合う必要があります。
相手が債権差押命令の正本を受け取らない場合はどうしたらいいですか?
相手が債権差押命令の正本を受け取らない限り取立権が発生せず、取立てを行うことができません。そのため、相手が正本を受け取らない場合は、次の方法で正本を送達することが考えられます。
就業場所送達
就業場所送達は、相手の勤務先へ送達する方法です。周囲の目がある手前、受け取る可能性がありますが、受け取りを強制することまではできません。ただし、相手が不在で相手に書類を送達できない場合において、相手に代わって書類を受け取ることについて相当のわきまえがある人が書類の受け取りを拒否せず受け取ったときは、相手に送達されたものとして扱われます。
付郵便送達
付郵便送達は、就業場所送達で送達できないときに、相手が住んでいることがわかっている住所または居所(住所とは異なる現在の生活の本拠)、あるいは相手が自営で勤めていることがわかっている営業所または事務所に向けて、書類を書留郵便で送る送達方法です。裁判所が書類を発送した時点で、送達があったとみなされます。付郵便送達を使うには、相手が住んでいること、勤めていることが明らかであることを裁判所がわかるような形でまとめ、書面で上申する必要があるでしょう。
公示送達
公示送達は、裁判所が裁判所の掲示板に「書類をいつでも交付することができる」旨を掲載して送達する方法です。裁判所が掲示板に掲載してから2週間が経過した後に送達の効力が生じます。公示送達は就業場所送達、付郵便送達でも送達できない場合の最終的な送達方法です。公示送達を使うには、相手の住所または居所、あるいは就業場所等がわからないことを裁判所がわかるような形でまとめ、書面で上申する必要があるでしょう。
取立ての最中に相手が仕事を辞めたらどうなりますか?
差押えの効力は相手が勤めている会社の給与債権にのみ及びますので、以後、給与を取り立てることはできなくなります。もっとも、全額を回収できない間に相手が会社を辞め、相手が退職金を受け取ったときは、所得税及び住民税を差し引いて残った退職金の額の2分の1までの金額については取り立てることができます。それでも回収しきれない場合は、あらためて相手の勤務先を特定することからはじめる必要があります。