• 離婚慰謝料を受け取ると税金がかかりますか?
  • どんな場合に税金がかかりますか?
  • 非課税となるにはどうしたらいいですか?

この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。

人からお金を受け取るときに気をつけなければいけないことが税金です。離婚で慰謝料を受け取るときも同じで、受け取り方によっては税金がかかる場合がありますので注意が必要です。

今回は、離婚慰謝料を受け取ると税金がかかるのか、どんな場合にかかるのか、非課税となるにはどうしたらいいのか、詳しく解説していきたいと思います。

離婚慰謝料に税金がかかる?

まず、離婚慰謝料を受け取ると税金がかかるのかですが、原則、かかりません

お金(離婚慰謝料)を受け取ったときにかかる税金として考えられるのが「所得税」ですが、所得税は何らかの経済活動によって生み出されたお金に対して課される税金です。

この点、離婚慰謝料は離婚による精神的苦痛という損害を穴埋めするためのお金であって、経済活動によって生み出されたお金とはいえませんから、離婚慰謝料を受け取っても所得税はかかりません(所得税法9条1項17号参照)。

また、ほかにかかる税金として考えられるのが「贈与税」です。ただ、贈与とは相手の「タダでやります」という相手の「善意」による行為ですが、離婚慰謝料の支払いは相手の「義務」による行為です。したがって、離婚慰謝料を受け取っても、原則として、贈与税はかかりません

離婚慰謝料で税金がかかるケース

もっとも、次のケースでは、離婚慰謝料を受け取ると贈与税がかかる可能性があります。

  • 金額が高額と判断された場合
  • お金の代わりに不動産を取得した場合
  • 離婚前に不動産を取得した場合
  • 贈与税を免れるために離婚したと判断された場合

金額が高額と判断された場合

まず、税務署に受け取った離婚慰謝料の金額が高額と判断された場合です。

受け取った離婚慰謝料の金額が高額かどうかは、婚姻期間、子どもの有無、離婚慰謝料を支払う側の資力・経済状態・社会的地位などの諸要素を考慮して判断されます。

たとえば、婚姻期間が1年も満たず資力もそれほどないのに、相場を大幅に超える500万円の離婚慰謝料を受け取った場合は、婚姻期間と比較して高額な離婚慰謝料を受け取ったとして、相場を超える金額につき贈与税がかかる可能性があります。

お金の代わりに不動産を取得した場合

次に、お金の代わりに(慰謝料的財産分与として)不動産を取得した場合です。

この場合、不動産の取得原因は離婚に伴う「財産分与」であって「贈与」でない以上、原則として贈与税はかかりません。一時所得として所得税がかかることもありません。

もっとも、上のケースと同じく、離婚慰謝料の相場と比較して不動産の時価があまりにも高額な場合は、超過した分につき贈与税がかかる可能性があります。

また、不動産を取得したときは不動産取得税や登録免許税がかかります。不動産を取得した後は毎年、固定資産税を払っていかなければなりません(※)。

※不動産を譲渡した側には譲渡所得税がかかることがあります

離婚前に不動産を取得した場合

次に、離婚前に慰謝料の代わりに不動産を取得した場合です。

財産分与は離婚によってはじめて効力を生じますから、離婚前に不動産を取得した場合は「財産分与」ではなく「贈与」によって不動産を取得したと判断され、贈与税がかかる可能性があります。

もっとも、次の条件を満たす場合は、贈与税の基礎控除110万円のほかに最高2000万円までの控除を受けることができる特例(贈与税の配偶者控除)が適用され、贈与税が非課税となる可能性があります。

・夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
・配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
・贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告書を提出すること

贈与税を逃れるために離婚したと判断された場合

次に、税務署に贈与税を免れるために離婚した判断された場合です。

離婚が贈与税を免れるために行われたと判断されるケースとしては、

離婚のときに財産分与によって、いったんは相手に財産を移転させ、しばらくしてから同じ相手と再婚する、あるいは離婚した後も同居を続ける

など、形式的には離婚しているものの、実質的には離婚してない場合、いわゆる仮装(偽装)離婚の場合です。仮装離婚では財産分与ではなく単なる「贈与」によって財産が移転したと判断され、贈与税がかかる可能性があります。

贈与税の計算方法

贈与税は次の計算式により計算します。

贈与税=「(課税価格(贈与財産-非課税財産)-基礎控除(110万円))×税率」-「控除額」

なお、「贈与財産」には、お金、不動産など贈与によって取得した財産(本来の贈与財産)と本来の贈与財産ではないものの、贈与を受けたのと同じ効果がある財産(みなし贈与財産)があります。贈与財産は1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産を合計します。

税率」は一般贈与財産用と特例贈与財産用があります。特例贈与財産用は、直系尊属(自分の祖父母、父母)から、その年の1月1日において18歳(※)以上の人(子、孫)への贈与の計算のときに使用します。「控除額」は税率ごとに定められています。

以上を前提に、「妻(42歳)が夫から離婚慰謝料として評価額2000万円の不動産を受け取った」場合(ただし、特例の適用はないものとする)の贈与税は

課税価格=2000万円
基礎控除=110万円
税率(一般贈与財産用)=50%
控除額=250万円

695万円=(2000万円-110万円)×50%-250万円

となります。

なお、先ほど紹介した「贈与税の配偶者控除」の適用を受けることができる場合は、

0円=2000万円(課税価格)-110万円(基礎控除)-2000万円(最高)(贈与税の配偶者控除)

となり、贈与税は非課税となります。

※令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」

贈与税を非課税とするための対処法

贈与税がかかる場合、金額が高額となる可能性がありますから、可能な限り贈与税がかかることは避けたいところです。そこで、最後に、贈与税を非課税とするための対処法をご紹介したいと思います。

離婚慰謝料はお金で受け取る

まず、離婚慰謝料はお金で受け取ることです。

先ほどみたように、離婚慰謝料をお金ではなく不動産で受け取ると贈与税がかかる可能性があります。これを避けるには、離婚慰謝料を不動産ではなくお金で受け取ることが大切です。お金で受け取るときは、離婚慰謝料の相場も確認しておきましょう。

離婚前に高額な財産を受け取らない

次に、離婚前に相場を超える慰謝料や評価額の高い不動産などを受け取らないことです。

離婚前の財産の移転原因は財産分与ではなく贈与であるため、贈与税がかかる可能性が高いです。なお、一つ一つの財産の価値はわずかでも、トータルの財産の価値が110万円を超える場合は贈与税がかかりますので注意が必要です。

離婚協議書などの書面を作っておく

次に、離婚慰謝料や財産分与について盛り込んだ離婚協議書、公正証書などの書面を作っておくことです。

書面を作っておくことで、税務署から贈与ではないか?と指摘されても離婚の財産分与として財産を受け取ったことを証明できます。公正証書や調停成立時に作成される調停調書は、万が一、相手がお金を払わなかった場合に強制執行の手続きを取るためにも必要です。

養育費・財産分与に税金はかかる?

離婚慰謝料のほか、養育費を一括で受け取った場合や不動産を財産分与した場合などでも税金がかかることがあります。詳しくは以下の記事でご確認ください。

まとめ

今回のまとめです。

  • 離婚慰謝料を受け取っても所得税はかからないが、贈与税はかかることがある
  • 贈与税は高額なため、非課税となる方法を知っておく
  • 養育費や財産分与でも税金がかかることがある