- 離婚慰謝料は一括払い、分割払いのどちらがいいですか?
- 一括で払わせるにはどうしたらいいですか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
相手に離婚慰謝料をお金で払わせる方法は一括か分割かのどちらかですが、どちらで払わせた方がいいのか悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は、離婚慰謝料を一括、分割、どちらで払わせた方がいいのか、一括で払わせるにはどうしたらいいのか、分割で払わせることになった場合は何をやればいいのか、詳しく解説していきたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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離婚慰謝料は一括払いが基本
離婚慰謝料に限らず、どんな慰謝料でも一括払いが原則です。
一括で払ってもらえば、離婚した後に未払いの心配をしなくて済みます。子どもがいて、養育費を分割で受け取ること、面会交流を行うことに合意しない限り、離婚を機に相手との関係を断つことができます。
離婚慰謝料を分割で払わせることのデメリット
仮に、離婚慰謝料を分割で払わせることに合意した場合は、上で述べた一括払いのメリットとは反対のデメリットを受けてしまいます。
未払いのリスクがつきまとう
まず、離婚後に離婚慰謝料が払われなくなってしまう可能性があることです。
離婚のときは、相手から「分割できちんと払ってく。」と言われていても、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という言葉があるように、徐々にその気持ちが薄れ、約束通りに慰謝料を払わない可能性があります。
離婚した後は、相手が新しいパートナーを見つけたり、再婚したりするとますますその気持ちが強くなる可能性がありますし、払う気持ちはあっても会社の倒産や失業などやむを得ない事情で収入が減ったりすると、経済的に払えなくなる可能性も考えられます。
新しい気持ちで再スタートを切ることができない
次に、新しい気持ちで再スタートを切ることができないことです。
離婚慰謝料を分割で払わせることに合意した場合は、毎月、毎月、請求期限が訪れます。相手が約束通りに慰謝料を払ってくれれば問題ありませんが、もし期限までに払わなかった場合はその都度連絡をとって請求していかなければいけません。請求期限が近づくにつれ、「きちんと払ってくれるだろうか?」という心配をしなければならず、離婚慰謝料ことを忘れることができないでしょう。
本来であれば、離婚とのときに相手との関係やトラブルを清算し、新たな気持ちで生活を再スタートさせたいところですが、離婚慰謝料の問題が残る以上は気持ちの切り替えが難しいかもしれません。
離婚慰謝料を一括で払わせるには?
このように、離婚慰謝料を分割で払わせることによるデメリットが大きいため、できる限り、離婚慰謝料は一括で払わせたいところです。では、離婚慰謝料を一括で払わせるには、どのような工夫をすればよいのでしょうか?
金額を減らす
まず、希望している金額を減らすことが考えられます。
分割にして後で未払いとなり、未払い分を回収できなくなるよりも、相手の減額の期待に応える形にして一括で払わせた方が、分割と比較してトータルで受け取ることができる金額は多くなる可能性があります。
もっとも、最初から金額を減らしてしまうと、最終的な金額が希望の金額と比べて大幅に減額されてしまう可能性がありますので、まずは希望の金額を相手に提示して反応を見てから対応を考えるようにしましょう。
第三者に援助してもらう
次に、親などの第三者に立て替えてもらうか、第三者からお金を借りて一括で払うよう求めることが考えられます。
相手が一括払いに難色を示しても簡単に譲歩してはいけません。今の相手の資力では一括で払うことが難しいといっても、相手が第三者に援助してもらって一括で払ってもらうことは法的には何ら問題ありません。
もっとも、第三者に立て替えてもらうか、第三者からお金を借りるかどうかの判断は相手に委ねられます。第三者には離婚慰謝料を支払う義務はありませんから、あなたが第三者に援助を強制できないことはもちろん、相手に第三者から援助を得るよう強制することもできません。
離婚慰謝料を分割で払わせる場合にやっておくべきこと
相手に離婚慰謝料の減額、第三者の援助を提案してもなお相手が一括払いに合意しないときは、分割払いに合意せざるをえません。ただ、先ほど述べたように、分割払いには未払いのリスクがありますので、のちのち困らないためにも、以下で紹介する対策をしっかり講じておく必要があります。
一回の支払い金額を多くする(支払い回数を少なくする)
まず、一回で支払う金額を多くし、支払い回数を少なくすることです。
一回で支払う金額が少なく、支払い回数が多くなると、その分未払いのリスクを受ける確率が高くなります。未払いのリスクを極力抑えるには、一回で支払う金額を多くし、支払い回数を少なくした方が安心です。
頭金を多く設定する
次に、頭金を多く設定することです。
一回の支払い金額を多く設定できないときは、2回目以降の金額は少なめに設定する代わりに、頭金を多く設定するというのも一つの方法です。もちろん、離婚慰謝料の金額によっては頭金を多く設定し、かつ、2回目以降の金額も多く設定するという方法もありだと思います。
通知義務を課す
次に、住所、連絡先、職場などが変更になった場合の通知義務を相手に課すことです。
万が一、離婚慰謝料が未払いになったときは何らかの形で相手とコンタクトをとる必要がありますが、相手の住所などの情報を把握しておかなければ相手とコンタクトをとることができず、最悪、逃げ得を許してしまう可能性がありますので注意が必要です。
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連帯保証人をつける
次に、相手の親などに連帯保証人になってもらうことです。
連帯保証人をつけておけば、もし相手が離婚慰謝料を払わなくなったとしても、連帯保証人に対して払うよう請求でき、未払い分を回収することができます。もっとも、法的に有効な連帯保証人をつけるには様々な条件をクリアする必要があります。
公正証書を作る
次に、公正証書を作ることです。
公正証書に強制執行認諾文言(※)を盛り込んでおけば、万が一未払いになった場合に、裁判を経なくても相手の財産を差し押さえる(強制執行の)手続きをとることができます。また、このような公正証書の強制力背景に、相手にきちんと慰謝料を払ってもらうことが期待できます。ただし、公正証書を作るときは、次の点に注意が必要です。
※「もし離婚慰謝料の支払いを怠ったときは、自分の財産を差し押さえる手続きをとられてもかまわない」という相手の承諾文言のこと。盛り込むには相手の同意が必要です。
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条項の中に期限の利益喪失約款を盛り込む
まず、離婚慰謝料の分割条項の中に期限の利益喪失約款を盛り込むことが考えられます。
期限の利益とは、本来一回(一括)で慰謝料を払うべきところ、分割によって慰謝料の支払期限を先延ばしにしてもらっている相手の利益のことです。期限の利益の喪失とは相手がこの利益を失うことをいい、その旨を定めた条項が期限の利益喪失約款です。
もし、公正証書の中に期限の利益喪失約款を設けていないと、相手が慰謝料の支払いを怠ったとしても、将来に支払期限が到来する分の慰謝料については請求できず、その都度強制執行の手続きをとらなければならなくなってしまいます。
公正証書の分割条項の中に期限の利益喪失約款を盛り込みたいときは、公証人にその旨を伝えておきましょう。
強制執行認諾文言の効力が及んでいるかどうか
次に、強制執行認諾文言の効力が分割払いの条項や期限の利益喪失約款を盛り込んだ条項にも及んでいるかどうかを確認する必要があります。
公正証書の中に分割払いの条項や期限の利益喪失約款を盛り込んだ条項を設けるときは、公証人がその両方にきちんと認諾文言の効力が及ぶ形で認諾文言の条項を考えてくれるとは思いますが、ご自身でもきちんと効力が及んでいるかどうかを確認する必要があります。
【強制執行認諾文言の条項例】
第○条
甲は、本公正証書第○条第○項及び同条第○項に定める金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
離婚慰謝料を一括で払えない場合のその他の対処法
相手が離婚慰謝料を一括で払えない場合は分割のほか、不動産や車などの現物で払ってもらえないか提案してみてもよいかもしれません。現物の評価額によっては十分に慰謝料の代わりとなりえます。
もっとも、不動産や車のローンが残っている場合は、名義を移すことができない場合もあります。名義変更する前に、残っているローンをどう処理するか話し合う必要があります。
また、不動産については不動産取得税がかかる、固定資産税などの税金、車について自動車税などの税金がかかります。これらの税金をきちんと払っていけるかどうかも確認しておく必要があります。
まとめ
今回のまとめです。
- 離婚慰謝料は一括払いが原則
- 分割払いは未払いのリスクがある
- 相手に一括で払ってもらうには金額を減額する、第三者に援助してもらう方法がある
- 分割払いを認める場合は未払いの対策をしておく
- 分割のほか現物で払ってもらう方法もある