- 離婚届不受理申出って何ですか?
- どんなケースで方がいいですか?
- 申出の方法が知りたい
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
離婚届不受理申出とは「離婚届」を「受理しない(不受理)」よう「申し出る」制度です。今回は、この離婚届不受理申出が具体的に何のための、どんな制度で、どんなケースで行えばよいのか、どんな手続きをとればいいのか、解説していきたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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離婚届不受理申出とは?
離婚届不受理申出とは、役所に対して、相手が提出した離婚届を受理しないよう申し出ることです。
離婚届不受理申出の制度は、戸籍に関する届出などに関して定めた戸籍法という法律の27条の2第3号に定められています。
離婚届不受理申出の目的
離婚届不受理申出の目的は、夫婦の一方に勝手に離婚届を出され、本来無効であるはずの離婚が成立してしまうことを防ぐことにあります。
協議離婚が成立するには、役所に離婚届が提出された時点で夫婦双方に離婚意思(離婚の合意)があることが必要です。したがって、夫婦の一方が勝手に役所に離婚届を提出し受理されたとしても、他方の離婚意思を欠くため、本来であれば離婚は無効なはずです。
ところが、離婚届の提出を受け付ける役所の担当者には離婚届の形式的審査権しかありません。つまり、役所の担当者は離婚届に形式的な不備がないかどうかだけを確認するだけで、夫婦双方に離婚意思があるかどうかは確認しません。
したがって、夫婦の双方、あるいは一方に離婚意思が欠けていても、離婚届に不備がない場合は離婚届を受理され離婚が成立してしまう可能性があるのです。
もし、本来無効であるはずの離婚を法的に無効とするには、家庭裁判所に協議離婚無効調停を申し立てる必要があります。しかし、調停の手続きをとることは手間と時間がかかってしまいます。
こうした事態にならないために、相手に勝手に離婚届を提出されそうな場合は離婚届不受理申出をしておくことをおすすめしています。
離婚届不受理申出をした方がいいケース
離婚届不受理申出をした方がいいケースとは、たとえば、次のようなケースです。
- 過去に離婚届にサインしたことがある場合
- サインした離婚届を相手に預けている場合
- 相手から離婚を急かされている場合
- 浮気にのめり込まれている場合
- 親権をめぐってもめている場合
- 離婚条件に関する話し合いを後回しにされている場合
こうしたケースでは、相手に勝手に離婚届を提出されてしまうおそれがありますので、離婚届不受理申出をしておいた方がよいといえます。
離婚届不受理申出の効果・期限
役所に離婚届不受理申出を行うと、相手が勝手に離婚届を提出しても、あなたが申出を取り下げない限りは、役所は離婚届を受理しません。役所が離婚届を受理しないということは、協議離婚は成立しませんし、戸籍も変更されません。
なお、かつては申出の効果に期限が設けられていましたが、平成20年5月の戸籍法改正によって期限は設けられなくなりました。つまり、申出を取り下げるか離婚が成立するまでの間は、離婚届不受理申出の効果が継続することになります。
離婚届不受理申出の準備
離婚届不受理申出を行う前に次の準備を進めましょう。
必要なものをそろえる【書式付き】
まず、申出をするにあたって必要なものをそろえます。必要なものは次のとおりです。
□ 離婚届不受理申出書
□ 申出をする人の本人確認証(運転免許証など)
□ 印鑑(任意)※申出書に印鑑を押した場合は必要
申出書の書式の入手方法は
- 役所の窓口で入手する
- ネット上からダウンロードして印刷する
かのいずれかが原則ですが、郵送で送ってくれる役所もありますので、希望する場合は対応してくれるか問い合わせてみましょう。
ネット上の書式をダウンロードしたい場合は、以下からダウンロードすることができます。ただし、A3用紙に印刷する必要があります。異なるサイズの用紙を使うことやA4サイズの用紙をつなぎあわせたものを使うことはできません。
申出書に必要事項を記入する【記入例付き】
次に、申出書に必要事項を記入します。
氏名、生年月日、住所、本籍などを記入します。印鑑は押すか押さないかは自由です。押してもいいですし、押さなくてもいいです。ただ、押した場合は印鑑をもっていく必要があります。記入の仕方に迷う場合は、役所の担当者に直接問い合わせてみるとよいと思います。
宛名(①)には申出をする申出先の市区町村名を書きます。あとで述べるとおり、急ぎの場合は本籍地がある役所に申し出た方がよいです。住所(②)は住民票上の住所を、本籍・筆頭者の氏名(③)は戸籍謄本に書かれてあるとおりに書きます。番地を「〇〇ー〇〇」などと省略しないよう注意してください。役所からの連絡について希望がある場合は希望を書いておきます(④)。
離婚届不受理申出の方法
離婚届不受理申出の準備が整ったら申出を行います。
申出先
離婚届不受理申出の申出先は
- 本籍地の役所
- 本籍地以外の役所(今お住いの役所)
のいずれかです。
本籍地以外の役所に申し出た場合は、本籍地以外の役所で申出書の謄本が作成され(①)、原本は本籍の役所に郵送されます(②)。①から②までに時間がかかりますので、急ぎの場合は本籍地の役所に申出することをおすすめします。
申出方法
離婚届不受理申出の方法は、役所の窓口まで申出書など必要なものをもっていって手続きするのが原則です。
郵送や代理(使者)による申出は原則受け付けてもらえません。ただし、病気などやむを得ない事情により役所の窓口で申出をすることができない場合は、申出書などにプラスして「離婚届について不受理申出する」と明記した「公正証書または公証人の認証を受けた私署証書」を加えることによって、例外的に郵送または代理による申出を受け付けてくれることもあります。
郵送または代理を希望する場合は申出先の役所と公証役場に問い合わせて確認しておきましょう。
離婚届不受理申出の取り下げ方法
離婚や離婚条件の話がまとまるなどして、離婚届不受理申出を取り下げてもよい状態になったら、役所に「取下書」を提出して申出を取り下げる必要があります。取下書は役所の窓口で入手できます。取下書以外に準備するもの、取下先、取下方法は申出時と同じです。
申出人本人が離婚届を提出する場合は、提出と同時に申出を取り下げたものとして扱われますので、あらためて取下げの手続きをとる必要はありません。
相手が勝手に離婚届を出したらどうなる?
ここでは、万が一、離婚届不受理申出をする前に勝手に離婚届を提出されたらどうなるかみていきましょう。
受理通知が届く
まず、離婚届が受理されたときは、役所から受理通知が届きます。
離婚届の受理通知は、離婚届の提出時に本人確認できなかった人(離婚届を勝手に出された側)に対してなされます。なお、受理通知の送付先は住民票上、あるいは戸籍の附票上に記載されている住所で、かつ、転送不要郵便物で送付される扱いとなっています。
離婚が成立する
次に、離婚届が受理されると形式的には離婚が成立してしまいます。
実質的には離婚は成立しません(無効です)が、離婚を無効とするには、はじめに家庭裁判所に対して調停(協議離婚無効確認調停)を申し立てる必要があります。そして、調停で離婚が無効であることについて合意し、役所で一定の手続きをとって正式に離婚を無効とできます。一方、合意できない場合は訴訟を提起して、裁判所に離婚が無効かどうかを判断してもらう必要があります
相手が犯罪に問われる可能性がある
次に、勝手に離婚届を提出した相手は次の罪に問われる可能性があります。
・有印私文書偽造・同行使罪:3月以上5年以下の懲役
・公正証書原本不実記載罪 :5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
犯罪に問われるということは逮捕される可能性もあるということでもあります。
安易に離婚届にサインしない
勝手に離婚を成立させられないためには離婚届不受理申出をしておくことはもちろん大事なことですが、その前に安易に離婚届にサインしないことも対策の一つです。
確かに、相手が勝手にサインし、離婚届を提出するということも考えられなくはないですが、先ほど述べたとおり、犯罪に問われるというリスクを考えると、そこまでのリスクを冒して離婚を成立させようとする人はなかなかいないと思われます。
そうすると、やはり勝手に離婚を成立させられてしまう可能性として高いのは、あなたが離婚届にサインした場合ではないでしょうか?
- 夫婦喧嘩した勢いでサインした
- 相手に自分の気持ちをわかって欲しいためサインした
- 相手から言われたのでサインした
これらはすべてNG行為です。離婚届にサインするのは、あなたが本当に離婚しようと決意した後です。相手から何を言われようと離婚の意思が固まっていない限りは、絶対に離婚届にサインしてはいけません。
離婚届不受理申出に関するQ&A
最後に、離婚届不受理申出に関する疑問にお答えします。
誰が申出できますか?
離婚届不受理申出ができる人は離婚届の届出人、すなわち、夫婦だけです。親、親族など、夫婦以外の第三者は申し出ることはできません。
申出した後、転籍した場合はどうなりますか?
離婚届不受理申出をした後、本籍地を変えた場合は、当該申出は新しい本籍地の役所に対してしたものと扱われます。
申出をしたことは相手にわかりますか?
役所から相手に対して離婚届不受理の申し出がされたことの通知はしません。相手が申出をされたことを知るのは、相手があなたに無断で離婚届を提出したときくらいでしょう。
申出の効力が及ばない場合はありますか?
相手から離婚調停を申し立てられ調停が成立(調停離婚が成立)した場合、訴訟を提起され、裁判(和解、認諾、判決)で離婚が成立した場合は申出の効力は及びません。調停離婚や裁判離婚は離婚届の提出・受理が離婚の成立要件ではないからです。
申出をした後、郵送・代理により離婚届を提出できますか?
できません。申出をした方本人が、役所に離婚届をもっていって提出する必要があります。役所が運転免許証などの身分証で、申出をした方本人が離婚届を提出したことを直接確認する必要があるためです。
まとめ
今回のまとめです。
- 離婚届不受理申出とは、役所に離婚届を受理しないよう申し出る法制度のこと
- 適法に申し出ると、相手に勝手に離婚届を提出しても受理されず、協議離婚は成立しない
- 申出をするには必要なものをそろえ、申出書を役所に提出する
- 役所の窓口で直接申し出るのが原則で、郵送、代理が認められるのは例外
- 申出の効力を失わせるには、取下げの手続きを行う必要がある
- 申出を行う前に離婚届を受理され、離婚の無効を主張したい場合は調停を申し立てる必要がある