- 相手が自己破産したら養育費は請求できませんか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
離婚のときに相手が養育費を払う取り決めをしたとしても、離婚後に何らかの事情で相手が自己破産してしまうことがあります。そして、自己破産と聞くと「借金をチャラにするもの」というイメージをもたれる方も多く、養育費を請求できなくなってしまうのでは?と不安に思われる方もおられるのではないでしょうか?
そこで、今回は、そもそも自己破産とは何か、相手が自己破産すると養育費を請求することができなくなってしまうのか、詳しく解説していきたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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相手が自己破産したら養育費は請求できない?
それでは、さっそく相手が自己破産したら養育費は請求できないのか解説していきたいと思います。
自己破産とは?
まず、そもそも自己破産とは何かですが、自己破産とは、借金などのお金を返すことができなくなった相手(債務者=お金の支払い義務がある人)が、裁判所に対して「破産手続」を申し立てることをいいます。
破産手続では、相手がもっている財産のうち、生活に必要な最低限の財産(自由財産)を除いた財産を債権者(お金の支払いを請求できる権利がある人)に公平に割り当てて返済していきます。
自己破産と聞くと「借金をチャラにするもの」というイメージをもたれる方が多いと思いますが、実は、借金をチャラにするには、破産手続とは別の「免責手続」を申し立て(※)、裁判所から借金の返済義務を免責する許可を得る必要があります。
※通常、破産手続を申し立てると免責手続も申し立てたとものとして扱われます。
養育費は非免責債権
では、相手が裁判所から免責許可を得た場合、養育費の支払義務までも免責(免除)されるかといえば、免責されません。これは養育費が非免責債権と呼ばれる債権だからです。
債権とは誰か(あなた)が誰か(相手)に対して請求できる権利のことです。債権が免責債権にあたる場合、相手が免責許可を得ると相手の返済義務は消滅してしまいますが、非免責債権にあたる場合、相手が免責許可を得たとしても相手の返済義務は消滅しません。
養育費が非免責債権にあたることは破産法という法律に規定されています(破産法253条1項4号ハ参照)。
なお、非免責債権には、養育費のほかにも
- 税金
- 怪我や交通事故などの損害賠償金
- 不貞やDVなどの慰謝料
- 罰金
などがあります。
破産手続中の養育費債権の取り扱い
このように、相手が自己破産したとしても養育費の支払義務が免除されることはありません。ただ、相手の破産手続中は、養育費が未払い分の養育費か将来(請求期限未到来)分の養育費かで養育費の取り扱いが異なりますので注意が必要です。
未払い分の養育費について
まず、破産手続の開始決定がなされた時点で、未払い分の養育費がある場合は相手がもっている財産(自由財産を除く)の中から支払いに充てられます。
もっとも、相手が養育費以外にも借金などの返済義務を負っている場合、相手の財産は借金の返済にも充てられますから、未払い分の養育費をすべて回収できるわけではありません。あなたを含めた債権者はすべて公平に取り扱わなければならないことになっており、仮に相手が1人の債権者にだけ優先的に返済してしまうと、相手が免責の許可を得ることができなくなるおそれがあります。
また、破産手続の開始決定がなされた時点で相手がもっていた財産を差し押さえる(強制執行する)ことはできません。破産手続の開始決定前に差し押さえの手続きをとっていた場合は、その手続きが取り消されます。
一方、破産手続が終わった後は、破産手続で回収できなかった養育費についても請求することができますし、相手が請求に応じない場合は強制執行の手続きをとることもできます。もっとも、破産手続後ということもあって、相手にめぼしい財産がなく、満足のいく金額を回収できない可能性が高いと思われます。
将来分の養育費について
次に、破産手続の開始決定時にまだ養育費の請求期限が到来していない養育費については、相手の破産手続にかかわらず全額請求することができます。上で述べたような制限を受けるのは、あくまで「破産手続の開始決定時」に「請求期限が到来」している「未払い分の養育費」だからです。
相手が自己破産を申し立てたから、免責許可を受けたからといって、養育費の支払義務が免除されたり、養育費が減額されることはありません。
もっとも、相手が自己破産を申し立てるということは、相手が経済的に困っているという証でもあります。単なるギャンブルや趣味などの自己都合は養育費を減額する理由にはなり得ませんが、失業や会社の倒産によって収入が減った場合などは養育費を減額されてしまう可能性があります。
まとめ
今回のまとめです。
- 相手が自己破産したからといって、相手の養育費の支払義務は消えない
- 相手が自己破産したとしても養育費は請求できるものの、払ってもらえるかどうかは相手の資力しだい
- 相手が自己破産するほど経済的に困っているときは、養育費を減額するよう求められる可能性もある