- 別居するとき、住民票は移動(異動)させた方がいいですか?
- 住民票をそのままにしておくことによる不利益はありますか?
- 住民票を移動させた方がいいケースとはどんなケースですか?
- 住民票を移動させるにはどうしたらいいですか?
- 相手に移動した後の住所を知られないようにするにはどうしたらいいですか?
この記事ではこのような疑問、悩みにお応えします。
別居で今の家を出ることに決めたとき、住民票はどうするか考えていますでしょうか?住民票を移動させることにはメリットのほか、デメリットもありますので、両者を踏まえた上で住民票を移動させるかどうか決めた方がいいと思います。
今回は、別居するにあたって住民票を移動させるメリット・デメリットについて解説した上で、住民票をそのままにしていた場合のリスクや住民票を移動させるべきケース、移動させるべきでないケースなどについても詳しく解説していきたいと思います。
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離婚・夫婦問題のみを取り扱う行政書士です。夫婦トラブルの相談(カウンセリング)、離婚・不倫関係の各種書面の作成などに対応しています。自身も2児の父親として子育て真っ最中です。「依頼してよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意、最後まで責任をもって対応いたします。
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別居で住民票を移動させるメリット
まず、はじめに、別居で住民票を移動させるメリットについてみていきましょう。
離婚の意思が固いことを証明できる
まず、離婚の意思が固いことを証明できることです。
住民票を移動させるということは、今住んでいる土地を離れ、新しい環境で生活していくという意思の表れでもあります。もし、調停等で離婚の意思が固いことの証明を求められたときは、住民票を証拠の一つとして提出することができます。
児童手当を受け取れる
次に、児童手当を受け取れるようになることです。
児童手当は住民票上の世帯主に支給されます。今現在、あなたが住民票上の世帯主でない場合は、相手が児童手当の受給者になっていますが、住民票を移動させ、あなたが住民票上の世帯主となった場合は、あなたを児童手当の受給者に変更することが可能(※)です。
※役所に「児童手当等の受給資格に係る申立書」と「離婚手続中であることを明らかにできる書類」の提出が必要です。
転園、転校の手続きが可能となる
次に、保育園・幼稚園の転園、学校(公立小中学校)の転校の手続きが可能になることです。
校区外の園、学校に転校するには住民票を移動させなければならないのが基本です。ただし、園や学校、今抱えている事情(DVを受けているなど)によっては移動が必要ない場合もあります。事前に確認しておきましょう。
保育料が安くなる場合がある
次に、保育料が安くなる場合があることです。無償化の対象外の方にとってはメリットです。
保育料は各世帯所得を一つの算定要素としますが、同居していたときは夫婦の所得を合算して計算します。一方、別居した後の状況(※)によっては、同居親の所得のみを基準とされることがあるため、住民票を移動させると保育料が安くなる可能性があります。
※別居から一定期間が経過している、離婚調停中など。詳しい条件は、お住いの役所に問い合わせた方が安心です。
公営住宅の入居申し込みができる場合がある
次に、公営住宅の入居申し込みができる場合があることです。
通常、公営住宅への入居は母子、父子家庭等が申し込むことができます。しかし、離婚前であっても、別居から一定期間経過しているなど一定の条件を満たす場合は入居を申し込める場合があります。詳細はお住いの役所に問い合わせた方が確実です。
郵便物を確実に受け取ることができる
次に、郵便物を確実に受け取ることができることです。
公的機関や金融機関などから送られてくる郵便物の中には、住民票上の住所に転送不要扱いで送られてくる郵便物(離婚届の受理通知書など)があります。こうした郵便物は重要な書類が入っていることが多いため、郵便物を確実に受け取りたい方は住民票を移動させた方がよいでしょう。
別居で住民票を移動させるデメリット
次に、別居で住民票を移動させるデメリットについてみていきましょう。
転園、転校が必要となる?
まず、転園、転校が必要となる場合があることです。
保育園・幼稚園、学校が管轄する地域に住所があることを条件とされている場合は、住民票を移動させることでその園や学校に通えなくなる可能性があります。ただ、先ほど述べたとおり、園や学校、ご事情によっては、住民票を移動させずに今の園や学校に通わせることができる場合もあります。詳細は園や学校に問い合わせてみましょう。
住宅ローンの契約違反となる場合がある
次に、住宅ローンの契約違反となる場合があることです。
貸主である金融機関は、家の名義人がその家に住み続けることを前提に住宅ローンを貸しています。契約によっては、家の名義人が住宅ローンを残したまま今の家を出た場合、住宅ローンを一括返済しなければならない旨の定めがもうけられている場合もあります。また、住宅ローン控除を受けることができず、所得税が高くなる可能性もあります。
国民健康保険料を負担しなければならない
次に、国民健康保険料を負担しなければならなくなることです(※)。
国民健康保険の場合、健康保険と異なり世帯単位で保険料を課され、扶養という概念がありません。そのため、住民票を移動させ、相手と世帯を別々にした場合は、自分で毎月の国民健康保険料を負担しなければならなくなります。
※相手が自営業・個人事業主で国民健康保険に加入している場合
別居で住民票をそのままにしたらどうなる?
今度は視点を変えて、別居するときに住民票をそのままにしていた場合にどうなるのかみていきましょう。
過料を科される可能性がある
まず、過料を科される可能性があります。
戸籍法には、住所を移動(正確には「異動」といいます)したときは、異動があった日から14日以内に役所に届出をしなければならず、仮に正当な理由なく届出をしなかった場合は5万円以下の過料を科す旨の定めがもうけられています。
過料は刑罰ではないため仮に科された場合でも前科はつかず、日常生活に大きな影響を及ぼすことはありません。また、実際に過料を科される例が多いわけではありませんが、可能性があることは頭に入れておきましょう。
郵便物を受け取れない場合がある
次に、郵便物を受け取れない場合があります。
先ほども述べたように、郵便物の中には住民票上の住所に転送不要扱いで送られてくる郵便物があります。転送不要扱いの郵便物は居住確認の意味合いもあり、転送届をしていても別居先には転送されません。
転送不要扱いの郵便物は役所や金融機関などからの重要な郵便物であることが多く、受け取らないとのちのち不利益を被る可能性があります。役所からの郵便物を受け取るには住民票を移動させなければならず、金融機関からの郵便物を受け取るには移動後の住民票の写しが必要となります。
住民票を移動した方がいい?しない方がいい?
ここまできておわかりかもしれませんが、住民票を移動させるべきなのは離婚を前提に別居する場合です。今の家に戻るつもりがない場合は住民票を移動させるべきです。
一方、短期間だけ別居する予定の場合、修復前提で別居する場合は、一度住民票を移すと、元の住所に戻るときに住民票を移動させる手間がかかるため、住民票は移動させないほうがいいでしょう。
また、別居先を知られたくない場合も住民票を移動させるべきではありません。相手はあなたの配偶者という立場から、住民票などであなたの住所を調べることができます。
DVが原因で別居する場合は、あとで解説する閲覧等の制限措置をとった上で住民票を移動させましょう。
住民票を移動させる手続き
住民票を移動させる手続きは、異なる市区町村に住所を移すのか、同一市区町村内に住所を移すのかで異なります。
前者の場合は、今の住所の役所に「転出届」を提出し、新しい住所の役所に「転入届」を提出します。後者の場合は、今の住所の役所に「転出届」を提出します。期限は住所を移動させた日から14日以内ですが、期限がすぎても受け付けてくれます。
なお、異なる市区町村に住所を移す場合は印鑑証明や国民健康保険(加入者のみ)などの手続も必要となります。どんな手続きが必要となるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
相手に住所を知られたくない場合の対処法
別居する場合、場合によっては「相手に別居先の住所を知られたくない」という場合もあるでしょう。そこで、最後に、相手に住所を知られたくない場合の対処法について解説します。
住民票を移動させない
もっとも簡単な方法は住民票を移さないことです。別居先の住まいを把握されていない限り、バレるリスクはさがります。あとは、先ほど述べたように、場合によっては転園・転校ができない、重要な郵便物を受け取れないというデメリットを受け入れることができるかどうかにかかっています。
離婚後に住民票を移動させるには?
離婚後に住民票を移動させる場合は、離婚後の戸籍の本籍地と住所を別にした上で、離婚届を提出し成立させた後に住所を移動させる手続きをとることです。もし、離婚が成立する前に住所を移動させてしまうと、相手の戸籍に移動後の住所が記録されてしまい、相手が自分の戸籍を見ることで、あなたの離婚後の住所を把握できてしまうからです。
警察などに相談する
次に、DVが原因で別居する場合は、警察などの相談機関に相談することです。相談すればシェルターなどの一時避難場所を紹介してもらい、空きがあれば入所することも可能です。シェルターの住所は秘匿のために公開されていません。警察以外にも相談する機関はありますので、ためらわずに相談しましょう。
住民票等の閲覧等制限措置をとる
次に、相手があなたの住民票などの公的書類(※)を見ることができなくなる措置をとることです。ただ、制限措置を講じるためには、警察などのDVの相談機関にあらかじめ相談しておく必要があります。また、役所に対して必要書類を提出し、措置を講じるよう申し出る手続きが必要です。
※住民票(除票も含む)のほか、住民基本台帳の一部の写し、戸籍の附票(除票も含む)
まとめ
今回のまとめです。
- 別居で今の家を出ていくときは、住民票を移動させるかさせないかの検討が必要
- 住民票を移動させることにはメリットのほかデメリットもある
- 住民票をそのままにしておくリスクもある
- 離婚前提に別居する場合は住民票を移動させた方がよい
- 修復前提の場合、別居先を知られたくない場合は移動させない方がよい
- DVが原因で別居する場合は、はやめに警察などの相談機関に相談すべき