子育てには体力がいるし、お金もかかります。自分の時間も犠牲にしなければならず、趣味や好きなことに使える時間も限られていますよね。

そのため、離婚後に親権をもったものの親権をもったことに後悔し、親権を放棄したいと思われる方もいるかもしれません。

では、はたして親権を放棄することができるのでしょうか?できるとしてどのようなケースで、どんな手続きを踏めばよいのでしょうか?

親権放棄とは

親権放棄とは親権を放棄すること、すなわち、親権を手放すことです。

親権は大きく身上監護権と財産管理権から成り立ちますが、親権を放棄するということはこの2つの権利を放棄することを意味します。要するに、子どもの世話、子どもとのかかわりを放棄するということです。

親権放棄はできる?

原則、親権放棄はできません

親権とは「権利」の権がつくように、親の権利と誤解されがちですが実はそうではありません。親権はあくまで子どものために行使されるべき権利とされており、親が勝手に親権を放棄することはできないのです。親権放棄(育児放棄)した結果、最悪の場合、刑事責任を問われる可能性もありますので注意が必要です。

親権放棄できる場合

もっとも、ごく例外的な場合に限り、親権を放棄(辞任)することが認められています。具体的には、以下のケースのような、親権を放棄することが「やむを得ない事由」にあたると認められる場合です。

(いずれも単独親権の場合で)
・重病にかかってしまい、子育てが困難なとき
・長期の海外勤務が決まったとき
・長期間、服役することになったとき

親権放棄の方法

親権放棄(辞任)するためには、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対して親権辞任の申立てをしなければなりません

申立てが受け付けられると審判という手続きが始まります。審判では、裁判官らが申立者や子ども(15歳以上の場合は必ず)らから話を聴きます。

裁判官は聴き取った話の内容や提出された書類などから、親権放棄することが「やむを得ない事由」にあたるかどうかを判断します。

そして、裁判官が親権を放棄することがやむを得ない事由にあたると判断したときは、親権放棄(辞任)の許可を出します。

親権放棄の許可を得たら、親権者の住所地または子どもの本籍地の役所に親権を辞任した旨の届出をします。この際、裁判所から受け取る親権辞任の許可審判書が必要です。

このように、親権を放棄するには、家庭裁判所に親権辞任の申し立てを行い、かつ、裁判からやむを得ない事由があると認められて許可を得なければならないのです。

親権放棄したら?

単独親権者の親権放棄が許可された場合、親権を行使する人がいなくなります(元配偶者に親権が移るわけではありません)。こうした場合、子どものために未成年後見という制度が始まることになっています。未成年後見とは、親権者の代わりの人が子どもの世話をする制度です。

未成年後見が始まると、親権放棄が許可された親は自分の代わりに子どもの世話をしてくれる人、すなわち、未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければいけません。

未成年後見人には祖父母などの親族がなることが一般的です。もっとも、他に適任者が見当たらない場合は専門の法人や弁護士などの第三者が指定されることもあります。

親権放棄した後も回復できる

一度、親権放棄した後でも、「やむを得ない事由」が消滅したときは、家庭裁判所の許可を得て親権を回復することができます。

病気が回復したとき、海外出張が終わって帰国したとき、刑務所から出所したときは「やむを得ない事由」が消滅したといえるでしょう。もっとも、家庭裁判所に申し立てを行って許可を得なければならないこと、役所に届出をしなければならない点は親権放棄のときと同じです。