慰謝料を請求するにあたって忘れがちなことが、婚姻関係が破綻しているかどうか、についてです。仮に、不貞などの違法行為をされた当時、婚姻関係が破綻していたときは慰謝料を請求することができません。では、婚姻関係が破綻していたかどうかはどのように判断するのでしょうか?今回は、その判断基準等について解説します。

この記事を書いた人

小吹 淳:行政書士
小吹 淳:行政書士
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婚姻関係の破綻とは?

まず、婚姻関係の破綻とは、夫婦が婚姻状態を続けていく意思がなく、かつ、関係を修復することが難しい状態のことをいいます。

婚姻関係破綻の判断要素

婚姻関係が破綻しているかどうかは主観的要素と客観的要素から判断されます。

主観的要素

主観的要素とは夫婦の内面、すなわち、夫婦がどれだけ離婚したがっているかということです。離婚に積極的であればあるほど婚姻関係が破綻されていると判断されやすくなります。

客観的要素

客観的要素とは外形的な側面のことです。たとえば、あとで述べる「別居期間の長さ」がこれにあたります。別居期間が長ければ長いほど、婚姻関係が破綻していると判断されやすくなります。

婚姻関係の破綻が認められやすいケース

婚姻関係の破綻が認められやすいケースとしては主に以下のとおりです。

・離婚に向けて動き出している
・長期間別居している
・夫婦としての実態がない
・DV、モラハラ
・働かない、浪費癖・多額の借金を抱えている
・犯罪行為を行った

離婚に向けて動き出している

まず、離婚に向けて動き出している場合です。

具体的には、

・離婚の条件について具体的な話し合いをしている
・離婚協議書、離婚公正証書を作っている
・離婚届にサインしている
・離婚調停中

といった事情があると、離婚に向けて動き出していると評価されやすいでしょう。夫婦の一方が離婚を口に出したという程度では足りず、離婚に向けて具体的な行動をとっていることが必要です。もっとも、話し合いや書面作成から間が空いている場合は気持ちが変わっている可能性もあります。その場合は、離婚に向けて動き出しているとは評価されない可能性もあります。

長期間別居している

次に、別居期間が長期にわたる場合です。

別居期間は婚姻関係が破綻しているかどうかの判断基準の中では明確で、最も重要視される傾向にあります。別居期間は「3年~5年」が目安とされていますが、期間がだけが判断基準になるわけではありません。別居期間のほか、同居期間、家族構成、別居の経緯・理由、別居後の交流の有無及び頻度などを総合的にみて、婚姻関係が破綻しているかどうかが判断されます。

夫婦としての実態がない

次に、夫婦としての実態がない場合です。

具体的には、

・家庭内別居の状態が続いている
・コミュニケーションがない(ほとんどない)
・セックスレス

もっとも、家庭内別居は外形的には同居と同じ状態で、証明のハードルが高いのが現実です。また、もともとコミュニケーションやセックスの機会が少ない夫婦の場合だと、コミュニケーションが少ない、セックスレスという事情だけでは婚姻関係が破綻していると判断することは難しいでしょう。

DV、モラハラ

次に、夫婦間にDV・モラハラがある場合です。

継続的にDV・モラハラが続いている場合、婚姻関係を修復することは難しく、婚姻関係が破綻したと判断されやすいでしょう。

不就労、飲酒癖・浪費癖がある

次に、不就労、飲酒癖・浪費癖がある場合です。

夫婦は精神面でも経済面でもお互いに助け合っていく義務があります。にもかかわらず、働こうと思えば働けるのに働かない、浪費癖があって生活費を渡さない、家計に協力しないのであれば、婚姻関係が破綻していると判断されやすいでしょう。

婚姻関係の破綻は誰が証明する?

婚姻関係の破綻は、婚姻関係が破綻していることを相手が主張・立証しなければいけません

婚姻関係が破綻していることが証明されれば、相手は慰謝料の支払義務を免れることができるという利益を受けることができます。そのため、その利益を受けたいのならば、慰謝料を請求された側が婚姻関係が破綻していることを証明してください、ということになっているのです。

婚姻関係の破綻の主張をされないためには?

婚姻関係が破綻していることは相手に証明責任がありますが、一度主張されると話し合いに時間がかかるなど、解決までに時間がかかってしまうおそれがあります。そこで、相手に婚姻関係の破綻の主張をさせないための対策を知っておくことも大切です。

同居を継続する(別居しない)

まず、できる限り、同居を続けることです。

相手から別居を申し入れられても安易に応じてはいけません。家庭内別居の場合や一方的に別居された場合でも、婚姻関係が続いている(離婚していない)以上は、簡単に婚姻関係が破綻したと判断されることはありません。

別居しても交流を絶たない

次に、仮に別居したとしても交流を絶たないことです。

別居しても

・メール・電話でやり取りする
・お互いの家を行き来する
・一緒に買い物、外食する
・一緒に遠出(旅行)する  

などして交流を図っておくとよいでしょう。

心理的にハードルが高い人は、最低限、LINEなどで相手をブロックしたり、着信拒否にするのではなく、いつでもコンタクトを取れるようにしておくべきでしょう。やり取りしたときは、メールや通話履歴をスクショして証拠として残しておきましょう。また、一緒に買い物した、外食した、どこかにでかけたなどというときは、写真や動画などでその場面を撮しておくのも一つの方法です。

安易に離婚の話し合いに応じない

次に、離婚意思がない場合は安易に離婚の話し合いに応じないことです。

相手から離婚を切り出されたり、離婚届にサインを求められると、どうしても感情的になってそれに応じてしまいたくなります。しかし、いったん応じると、あとでそれを逆に利用されて、婚姻関係の破綻の主張をされてしまう可能性があります。