令和6年度の司法統計によれば、「性的不調和」を理由に離婚調停を申し立てている人は、夫が全体の10.5%、妻が全体の6.6%でした。
この性的不調和には「性的嗜好が異なる」という理由も含まれているため、必ずしもセックスレスだけの数を表しているわけではありません。しかし、セックスレスを理由に離婚を求めている人、考えている人が一定数おられることはわかります。
そこで、今回は、セックスレスを理由に離婚できるのはどんな場合なのか、セックスレスを理由に慰謝料を請求できるのか、請求できる場合はどのような手順を踏めばいいのか、といったことについて解説したいと思います。
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セックスレスの定義
まず、そもそもセックスレスとはどのような状態をいうのかみていきましょう。この点、1994年、医師や社会学者らで構成する日本性科学会は、セックスレスを次のとおり定義づけしています。
「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシャルコンタクトが1か月以上なく、その後もその状況が長期にわたることが予想される場合」
この定義からすれば、最低「1か月間」肉体関係がないことをセックスレスというようです。なお、セクシャルコンタクトとは、キスやペッティング、裸でのベットインも含まれるとのことです。
セックスレスで離婚できる?
セックスレスでお悩みの方は、セックスレスを理由に離婚できるのか疑問をお持ちの方もおられるでしょう。
まず、結論から申し上げると、相手が離婚に合意すれば、セックスレスが理由でもそれ以外が理由でも、あるいはセックスレスとそれ以外の理由が複数あっても離婚することはできます。いずれにしても、離婚を決めているときは、どうして離婚したいと思っているのか、離婚理由を明確にしておくことが大切です。
セックスレスで裁判離婚できる?
一方、相手が離婚に合意しないけれどもそれでも離婚したいという場合は、裁判所に訴え、裁判で離婚を成立させる必要があります。そして、裁判で離婚を成立させるには、離婚を望む側が、夫婦の間に次のいずれかの事由があることを証拠によって証明する必要があります。
・配偶者に不貞な行為があること
・配偶者から悪意で遺棄されたこと
・配偶者の生死が3年以上明らかでないこと
・その他婚姻を継続し難い重大な事由があること
上記の4つは裁判上の離婚事由と言われるもので、セックスレスは裁判上の離婚事由とは明確に規定されていません。しかし、セックスレスということはすでに夫婦関係が悪化していることも多く、その場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があること」を理由に離婚できる場合があります。
なお、セックスレス自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかは、セックスができる状況であるにもかかわらず、正当な理由もなく、長期間にわたりセックスを拒否され続けてきたかどうか、という観点から判断されます。
たとえば、お互いに若く、子どもを望んで結婚したにもかかわらず、相手が一度もセックスに応じてくれなかった、というような場合は、セックスレス自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると考えることができるでしょう。
一方、相手に病気や障害がある場合はセックスを拒否することにつき正当な理由があるといえますし、単身赴任などの場合は物理的にセックスができる状況にはありません。また、高齢の場合や夫婦の間では関係を維持する上でセックスが重要なウェイトを占めていないといえるような場合はセックスレス自体を「婚姻を継続し難い重大な事由」と考えることは難しいかもしれません。
セックスレスで慰謝料請求できる?
そもそも離婚慰謝料は、相手の不法な行為(不貞やDVなど)により離婚せざるを得なくなり、それによって精神的苦痛を被ったといえる場合に発生します。つまり、まずはセックレスに陥った一因である相手の行為が不法と評価できる場合でなければ慰謝料請求は難しいといえます。
この点、たとえば、お互いに子どもを望んで結婚したにもかかわらず、長年相手が
・あなたの求めに応じない
・子作りに向けた努力をしない、改善してくれない
などという状況で、その結果、離婚に至ってしまったという場合は相手の行為を不法と評価することができ、慰謝料請求できる可能性があります。
一方、
・セックスレスに陥ったことにつきあなたにも落ち度がある
・セックスを求めてこなかった
・夫婦生活の中でセックスが重要なウェイトを占めていなかった
といった事情がある場合は、仮に相手があなたの求めを拒否し続けてきたとしても、それを不法と評価することは難しいでしょう。
セックスレスの慰謝料の相場
セックスレスの慰謝料は「数十万円~100万円」が相場と、不貞やDVと比べて低い傾向です。もっとも、以下の事情があると慰謝料が増額することも考えられます。
・セックスレスの期間が長い
・結婚後、一度もセックスがなかった
・相手が頑なに求めに応じてくれなかった
・相手が不倫していた
・相手がセックスレスを解消するための努力をしてくれなかった
一方、次のような事情があると慰謝料が減額となる可能性があります。
・セックスレスの期間が短い
・セックスレスになったのは、請求する側にも原因があった
セックスレスで離婚・慰謝料請求するまでの流れ
セックスレスで離婚や慰謝料請求するまでの流れは次のとおりです。
離婚の準備をする
離婚を決めたら、まずは仕事やお金、住まいなど離婚後の生活に関する準備を進めます。また、離婚にあたって相手と何を話し合わなければならないのか考えます。その内容によってやるべき準備が異なります。
セックスレスの証拠を集める
離婚の準備の中でやらなければならないことが証拠や資料の収集です。
セックスレスで離婚するには、セックスレスであることを証明する証拠を集めておく必要があります。セックスレスであることを証明する証拠とは、たとえば、次のような内容がわかる「日記」、「メモ」、「メール」、「ボイスレコーダー」などが考えられます。
・お互いの起床・帰宅・就寝時間、生活サイクル、寝室、セックスがなかった期間がわかるもの
・セックスを求めた、セックスについて話し合った日、そのときの会話の内容・相手の反応がわかるもの
なお、財産分与について話し合う場合は、財産分与の資料も集めておく必要があります。
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話し合いを切り出す
離婚の準備が整ったら相手に話し合いを切り出します。
話し合いを切り出した後は、相手に離婚に合意するかどうか確認すると同時に、慰謝料などあらかじめ考えてきた離婚条件について話し合います。
相手が合意したら離婚協議書、場合によっては離婚公正証書を作っておくと安心でしょう。一方、相手が離婚に合意しない場合、あるいは離婚には合意するものの、離婚条件について折り合いがつかない場合は離婚調停を申し立てることを検討します。