配偶者や不倫相手に慰謝料請求するには、配偶者と不倫相手とが肉体関係にあったことを証明できるかが鍵となります。しかし、実際に、調査してみると、肉体関係はなかった、あるいは、肉体関係はあったかもしれないけど肉体関係があったことを証明できる証拠を集めることができなかった、という場合もあると思います。

ただ、肉体関係がなかった、あるいは肉体関係があったことを証明できない場合でも慰謝料請求することはできることがあります。今回は、肉体関係がない場合でも慰謝料請求できる場合とはどういう場合か、慰謝料請求できるとして相場はいくらか、などといったことについて詳しく解説します。

肉体関係なしでも慰謝料請求できる場合

肉体関係がない場合でも慰謝料請求できる場合とは、配偶者と不倫相手とが肉体関係があってもおかしくはないといえるほど親密な関係があることをうかがわせる事情がある場合です。配偶者と不倫相手とが親密な関係になればなるほど、今の配偶者との関係が壊されていくからです。親密な関係があることをうかがわせる事情としては以下のものがあります。実際には、以下のような事情がいくつか重なった結果、親密な関係があると判断していくことになるでしょう。

・交際期間が長い
・誕生日など特別な日にプレンゼントを交換した
・旅行に行った
・お互いの自宅を行き来している
・結婚の意思を伝えている
・婚約指輪を渡している
・キス、ハグ、手をつないでいる

一方、たとえば、まだ知り合ったばかりで、LINEを取り交わしている程度の関係であれば、親密な関係があると判断することは難しく、慰謝料請求することも難しいでしょう。

肉体関係なしでも慰謝料請求を認めた裁判例

過去には、肉体関係がなくても慰謝料請求を認めた裁判例があります。

東京地裁平成28年9月16日

【認定された事情】

・交際期間1年半
・キス、ハグ、身体的接触があった
・不倫相手は配偶者を既婚者と知っていた

【慰謝料】

・50万円(請求額300万円)

宇都宮地方裁判所真岡支部令和元年9月18日

【認定された事情】

・不倫相手の自宅で数日間過ごした
・キス、挿入を除いた性行為をした

【慰謝料】

・100万円(請求額300万円)

交際期間が長いことや、不倫相手の自宅で過ごした、などといった事情が認定されていることがわかります。

肉体関係がない場合の慰謝料の相場

肉体関係がない場合の慰謝料は10万円~100万円が相場です。

肉体関係がない分、肉体関係がある場合の相場(50万円~300万円)と比べて低くなる傾向です。

もっとも、上記の金額はあくまで裁判で慰謝料請求が認められた場合の相場に過ぎません。話し合いでは、相場にとらわれることなく、常識の範囲内で当事者が自由に金額を設定することができます。あなたが相手に提示した金額が相場を超える金額であっても、相手がその金額に合意さえすれば、その金額を請求することができます。

肉体関係なしで慰謝料請求する場合に必要な証拠

肉体関係があるかどうかにかかわらず、慰謝料請求するには証拠を集めておくことが大切です。

証拠を集めておけば、相手の言い逃れを防ぐことができます。相手が素直に不倫を認めれば、話し合いで解決することができます。話し合いで解決できれば、解決までにかかる時間や費用の節約、精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。

肉体関係がない場合の証拠は、配偶者と不倫相手との親密度合いが深いことを証明できる証拠でなければいけません。たとえば、

・親密度合いが深いことがわかるLINE、メール、DM
・旅行に行ったことがわかる動画、写真
・デート中の動画、写真
・不倫相手との予定がわかる日記、手帳

などがあります。なお、

一方、

・車の中に落ちていた髪の毛
・「配偶者と不倫相手とがデートをしていたところを見た」という証言

などの証拠は、慰謝料請求する上での証拠にはなりませんので注意が必要です。

証拠の中にはご自分で集めることができる証拠もありますが、集め方によっては違法なこともあります。また、証拠を集めていることを感づかれたり、バレたりすると収拾がつかなくなってしまいます。集めた証拠によっては使える証拠、使えない証拠が出てくると思います。証拠の集め方に関して困った場合は、弁護士や探偵等の専門家に相談した方がよいでしょう。