養育費の決め方 | 話し合うべき項目や手順を解説します

  • 養育費については何をどう決めたらいいですか?
  • どういう手順で決めたらいいですか?

この記事はこのような疑問、お悩みにお応えします。

養育費は子どものために必要なお金ですし、離婚後の収入の一部として考えている方もおられると思います。養育費を受け取ることができなければ、子どもや離婚後の生活に困ることにもなりかねませんから、できれば離婚する前にしっかり決めていただきたいです。

そこで、この今回は、養育費に関しては何をどう決めておけばいいのか、どのような手順で決めていけばいいのかについて詳しく解説していきたいと思います。養育費については以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご確認ください。

養育費とは

養育費とは子どもの養育(子育て)にかかる費用です。

親は子どもを育てていく義務、すなわち扶養義務を負っており、この扶養義務に基づいて負担しなければならない費用が養育費です。子どもの親である以上は離婚した後でも、子どもが社会人として自立できるまで(子どもが未成熟子の間)は養育費を負担しつづけなければいけません。

養育費の決め方①~金額など

相手と養育費について話し合うときは、相手に話し合いを切り出す前に次のことについて考えておく必要があります。子どもが複数いる場合は、混乱を避けるため、子どもごとに考えておきましょう。離婚準備の段階で離婚協議書の原案を作っておくと考えがまとまり、話し合いをスムーズに進めることができます。

金額

まず、養育費の金額です。

まずは、家庭裁判所が公表している養育費の算定表をチェックして相場観を養っておきましょう。算定表では、夫婦の年収(※1)、子どもの人数、年齢に応じた、一か月あたりの標準的な金額を示しています。

次に、離婚した後のあなたの収入(児童手当、児童扶養手当などの公的給付金を含めた額)と支出を計算し、両者を照らし合わせた上で、相手にいくら請求したいのか、請求金額を考えておきましょう。

※1 養育費の金額は相手の年収にも左右されますから、相手が会社員の場合は給与明細書、源泉徴収票、自営業の場合は確定申告書、所得証明書、課税証明書などの書類で、相手の年収をきちんと把握することが必要です。相手がこれらの書類を開示しない場合は調停を申立て、裁判所を通じて開示を求めていくことを検討しましょう。

固定か段階的増額か

次に、養育費の金額を一定のままいくか、段階的に増額していくかです。

当然のことながら、子どもが大きくなるにつれ養育費はかかりますから、特に子どもが小さいときに離婚するときは、離婚のときに決めた養育費を一定のままでいくのか、子どもの年齢・成長ごとに段階的にして増やしていくかを検討しておく必要があります。

他には、相手のボーナスのときに養育費の金額を加算する方法も考えられますが、この場合は相手がボーナスを受け取れなくなったときのリスクがありますので注意が必要です。

期間

次に、いつからいつまで養育費を請求するかという、請求の期間(始期と終期)です。養育費は子どもが社会人として自立できるまで請求できます。

始期は、

・令和●年●月から
・離婚が成立した日の属する月から
・離婚が成立した日の属する月の翌月から


とするのが一般的です。

一方、終期を、高校卒業のとき、あるいは20歳までとする場合は

・18歳に達した日の属する月まで
・18歳に達した後の最初の3月まで
・20歳に達した日の属する月まで


とすることが多く、大学などの高等教育機関の卒業のときとする場合は、

・22歳に達した日の属する月まで
・22歳に達した後の最初の3月まで
・大学等(※)を卒業するなどして大学等との在学関係が終了した日の属する月まで


などとすることが多いです。

※離婚協議書などの書面を作成するときは、大学等の範囲を明確にしておきましょう。通常、大学、短期大学、大学校、大学院、高等専門学校、民間の職業訓練学校、技能又は資格取得にかかる専門学校を含めます。

分割か一括か

次に、養育費を分割で受け取るか、一括で受け取るかです。養育費を受け取る側と支払う側で分割のメリット、デメリットが異なります。

【養育費を受け取る側】
分割のメリット
・相手の合意を得られやすい
・子どもの成長や収入の変化などに応じて増額請求できる
・一括よりも受け取る総額は多くなる可能性がある
・浪費の心配がない
分割のデメリット
・未払いのリスクがある
・減額請求される可能性がある
・離婚した後も相手の関係が続く

一括のメリット
・一度にまとまったお金を受け取れる
・未払いの心配をしなくて済む
・離婚を機に相手との関係を断つことができる
一括のデメリット
・相手が合意してくれない可能性が高い
・分割よりも受け取る総額は少なくなる可能性がある
・贈与税がかかることがある
・増額できない可能性がある

【養育費を支払う側】
分割のメリット
・再婚や収入の変化等に応じて減額を請求できる
・離婚のときにまとまったお金が必要ない
分割のデメリット
・長期間にわたって支払い続ける必要がある
・離婚した後も相手との関係が続く
・相手から増額請求される可能性がある

一括のメリット
・支払いが一回で済む
・分割よりも払う総額が少なく済む可能性がある
・離婚を機に相手との関係を断つことができる
一括のデメリット
・離婚のときにまとまったお金が必要になる

多くの方が「分割」を選択されていますが、相手が一括に合意し、一括のデメリットを受け入れることができるのであれば一括を選択してもよいでしょう。分割か一括かでトータルで受け取れる金額に開きが出る場合がありますので慎重に検討する必要があります。

支払期限

次に、支払期限です。

養育費をきちんと払ってもらうためには、養育費を分割で受け取る場合も一括で受け取る場合も支払期限を決めておく必要があります。分割で受け取る場合は毎月「〇〇日まで」、一括で受け取る場合は「〇〇日まで」と期限を設定します。

支払方法

最後に、支払方法です。

支払方法は口座振り込みとすることが一般的ですが、手渡しとすることも可能です。口座振り込みとする場合の振込先口座は、養育費を支払う相手の心理に配慮して、子ども名義の口座とすると継続して払ってもらいやすくなります。振込手数料は、相手負担とします。

養育費の決め方②~手順面

養育費について考えがまとまった後は、次の手順で内容を固めていきます。

①相手と話し合う

まず、相手に話し合いを切り出し、養育費の金額などについて相手と話し合いましょう

はじめに、相手にあなたの希望を伝え、相手が合意しない場合はほかの条件ともうまく折り合いをつけながら調整していきます。相手が直接の話し合いに応じてくれない、話がまとまらないという場合は「③離婚調停」を申し立てることも検討しましょう。

なお、離婚のときに相手と話し合うことは養育費だけではありません。養育費について話し合うのであれば、少なくとも親権や面会交流についても話し合う必要があります。相手に話し合いを切り出す前にあなたの意見を固めておく必要があります。

②公正証書を作成する

次に、養育費やほかの離婚条件について合意ができたら公正証書の作成に向けた続きをとります。公正証書を作成するには、お互いが公正証書を作成することに合意しておく必要があります。

合意から公正証書の作成までの流れは「離婚公正証書とは?作成するまでに必要な全知識をまとめて解説します」の記事の「離婚公正証書を作成するまでの流れ」でご確認ください。

離婚準備の段階で離婚協議書の原案を作っている方は、話し合いの内容を反映させたものに修正し、公証人との面談のときに公証人に渡すと公正証書の作成までがスムーズです。

③調停を申立てる

前述のとおり、相手が話し合いに応じてくれない、話がまとまらない、あるいは相手が公正証書を作ることに合意してくれない、という場合は離婚調停を申し立てることも検討しましょう。

離婚前は、離婚全般について話し合うことができる調停(夫婦関係調整調停(離婚))のほか養育費のみの調停(養育費請求調停)を申し立てることもできます。また、離婚後も調停(養育費(請求・増額・減額等)調停)を申し立てることができます。

調停では調停委員という第三者が間に入って話をとりまとめてくれます。調停が成立した場合は調停調書という書面が作成されます。調停調書にも相手の財産を差し押さえる効力があります。

参照:夫婦関係調整調停(離婚) | 養育費請求調停 | 養育費(請求・増額・減額等)調停

まとめ

今回のまとめです。

  • 相手に話し合いを切り出す前に養育費の金額などを考えておきましょう
  • 考えがまとまったら相手に話し合いを切り出しましょう
  • 合意できたら公正証書を作成しましょう
  • 話し合いができない、まとまらない場合は調停を申し立てることを検討しましょう

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投稿者プロフィール

小吹 淳
小吹 淳
離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。