離婚公正証書のひな形 | 内容を項目別に詳しく解説

今回は、離婚公正証書に対する具体的なイメージをもっていただきたいと思い、離婚公正証書のひな形をご紹介します。はじめにひな形で全体像をご確認いただき、その後に各条項について解説したいと思います。
目次
離婚公正証書のひな形
各条項について
以下では、各条項の詳細について詳しく解説していきます。
第1条(離婚の合意等)
第1条(離婚の合意等)
夫甲野太郎(以下「甲」という。)と妻甲野花子(以下「乙」という。)は、本日(令和4年6月17日)、両者間の未成年の長男甲野一郎(平成28年5月25日生、以下「丙」という。)及び長女甲野幸子(令和元年1月14日生、以下「丁」という。)の親権者を乙と定め、乙において監護養育することとして協議離婚する(以下「本件離婚」という。)こと及びその届出は乙において速やかに行うことに合意した。
親権、離婚、離婚届の提出者の合意に関する条項です。親権については離婚合意の条項とは別の条項を設けることもあります。協議離婚では離婚届を提出し、受理されることで離婚の効果が発生しますから、誰が離婚届を提出するのかについても合意しておくと安心です。通常、親権を取得する方を提出者とします。
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第2条(養育費)
第2条(養育費)
甲は、乙に対し、丙及び丁の養育費として、離婚届出の前後を問わず、令和4年7月から丙及び丁がそれぞれ満22歳に達する日の属する月まで、各人について1か月金5万円ずつを、毎月25日(この日が金融機関の休業日の場合は、金融機関の前日営業日。)までに、乙の指定する金融機関の預金口座に振り込んで支払う。振込手数料は、甲の負担とする。
養育費については請求の始期と終期を明確にすることが必要です。ひな形では始期を「離婚届出の前後を問わず」とした上で「令和4年7月から」、終期を「満22歳に達する日の属する月まで」としています。養育費の金額や支払期限、支払方法も必ず記載します。
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第3条(財産分与)
第3条(財産分与)
1 甲及び乙は、乙が現在居住する別紙物件目録記載の不動産(以下、「本件不動産」という。)に関する住宅ローンについて、乙が福岡銀行に対して支払義務を負うことを確認する。
2 甲は、乙が前項記載の住宅ローンを完済したときは、乙に対し、その完済の日以降速やかに、本件離婚に伴う財産分与として、本件不動産の甲の持分全部を譲渡する。
不動産の名義は共有、住宅ローンはお互いに連帯債務者、という場合にこのような合意をすることがあります。ただ、夫婦間でこのように合意しても、甲の支払義務が免除されるわけではありません。万が一、乙の支払いが滞った場合は甲も支払いを請求されます。
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第4条(慰謝料)
第4条(慰謝料)
甲及び乙は、本件離婚に関して、互いに慰謝料支払債権を有していないことを相互に確認する。
お互いに慰謝料を請求しない旨の条項です。離婚後、相手が慰謝料を請求してこないか不安がある場合はこの条項を設けてもかまいませんが、不安がない場合はあえて設けなくても問題はありません。請求する場合は、「甲は、乙に対し、本件離婚による慰謝料として、金〇〇万円の支払義務のあることを認め、これを令和〇年〇月〇日までに、乙の指定する金融機関の口座に振り込んで支払う。振込手数料は、甲の負担とする。」などと書きます。
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第5条(面会交流)
第5条(面会交流)
乙は、甲に対し、丙及び丁との面会交流を認める。その面会の回数は1か月1回程度を基準とし、具体的な回数、日時、場所及び方法については、丙の利益を最も優先して考慮し、甲及び乙が誠実に協議してこれを定める。
面会交流の具体的なやり方について、離婚後でも親同士で話し合いができるようであれば、このようなざっくりとした合意内容にとどめておきます。もちろん、詳細に取り決めておくことも可能です。
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第6条(通知義務)
第6条(通知義務)
甲は、勤務先、住所又は連絡先(電話番号等)を変更したときは、直ちに乙に通知する。乙は、住所、連絡先(電話番号等)又は上記の金融機関の預金口座を変更したときは、直ちに甲に通知する。
離婚してしまえば赤の他人ではなく、お互いに連絡を取り合っていかなければならない場面は多々出てくるでしょう(特に、養育費や面会交流の取り決めをした場合)。そこで、離婚後に音信不通とならないために、このような合意をしておくことも可能です。
第7条(禁止事項)
第7条(禁止事項)
甲及び乙は、本件離婚成立後に次に挙げる行為をしてはならない。
⑴ 理由の如何を問わず、本件離婚に関し相手方を誹謗中傷すること
⑵ 婚姻中に知り得た相手方の個人情報を、相手方の承諾を得ることなく第三者に開示すること
⑶ 本証書及び本契約で定めた事項以外で相手方と連絡し、または接触すること
⑷ その他、社会通念上相手方の迷惑となるような行為一切
離婚後、お互いが平穏に生活できるよう、不安であれば、このような取り決めをしておくことも可能です。
第8条(清算条項)
第8条(清算条項)
甲及び乙は、本公正証書に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認し、今後、名義の如何を問わず互いに金銭その他一切の請求をしない。
この公正証書で合意しているもの以外に、お互いに請求をしないことを確認し合う条項です。養育費や財産分与(甲の持分移転)は請求することが可能ですが、慰謝料は請求できなくなりますので注意が必要です。
第9条(強制執行の認諾)
第9条(強制執行の認諾)
甲は、第2条の金銭債務の履行を遅滞したときは、直に強制執行に服する旨陳述した。
甲が養育費の支払いを怠った場合に、強制執行(給与等への差押え手続き)をとられてもかまわないという甲の同意内容の条項です。この条項を設けることで、仮に、養育費が未払いとなった場合、乙が差押えのための裁判をしなくても、甲の財産を差し押さえる手続きをとることが可能です。
離婚公正証書は協議書等をベースに作られる
離婚公正証書の内容は夫婦の合意内容がベースとなっていますから、公証役場に公正証書の作成を依頼する前に、夫婦で公正証書に盛り込む内容についてよく話し合い、合意しておく必要があります。
また、必須ではありませんが、あらかじめ合意内容をまとめた書面を作っておくこともおすすめします。書面を作っておくことで、公証人に公正証書に盛り込む内容を漏れなく伝えることができ、夫婦の希望に沿った公正証書を作ってもらいやすくなります。
あらかじめ作っておく書面は離婚協議書などのきちんとした書面でなくてもかまいません(メモ書き程度でもよいです)が、離婚協議書などのきちんとした書面を作っておけば、その内容がそのまま公正証書に反映されることもあります。
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- 離婚や夫婦問題を中心に取り扱う行政書士です。 離婚や夫婦問題でご相談ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡いただきますようお願いいたします。
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